エルゴード理論的手法によるランダム力学系とその直積系の極限定理に関する研究
Project/Area Number |
23K03130
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 12010:Basic analysis-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
盛田 健彦 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (00192782)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2027: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | ランダム力学系 / 直積系 / エルゴード理論 / 混合性 / 極限定理 |
Outline of Research at the Start |
標本空間上の保測変換(ノイズ変換)から決まる定常過程によって各時刻における時間発展の規則が適当な変換族から選択されるようなランダム力学系を考える。本研究ではオリジナルなランダム力学系の2点過程にあたる系をその直積系として定式化し、両者の基本的なエルゴード理論的性質(例えば、エルゴード性、弱混合性、混合性等)の間の関係を明らかにすることによって、ランダム力学系の極限挙動の研究に資する手法を提案することである。とくに、オリジナルなランダム力学系の標本ごとの極限定理(急冷型極限定理)を,直積系の標本平均に関する極限定理(焼鈍型極限定理)から導出するための系統的な手法の例示に重点をおく.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究はランダム力学系の直積系というべき新なランダム力学系を導入し、その歪積変換とオリジナルなランダム力学系の歪積変換を併用する手法を経由して、直積系の焼鈍型極限定理からオリジナルな系の急冷型極限定理を導出する際のモデルとなる結果を例示することである。初年度の研究実績としては以下を挙げておく。 (1) ランダム力学系に関する可微分力学系のエルゴード理論の類似に関し代表者自身によるものも含めた過去のさまざまな先行研究について、2022年9月に開催された研究集会「ランダム力学系・非自励力学系研究の展望:理論と応用 於 京都大学」で行った招待講演にその後手を加えた概説記事'Stochastic analogues of ergodic theory of differentiable dynamical systems and related topics" が数理解析研究所講究録2270に掲載された。 (2) 定常で独立なノイズが伴うランダム回転と対応する歪積変換のエルゴード理論的性質との関係に関する既存の結果が、ノイズを混合的なLasota-Yorke変換から生成されるものに拡張した場合に自然に拡張されることに着目し、得られた類似の結果を2024年3月に開催された研究集会「ランダム力学系とエルゴード理論 於 大阪大学」での招待講演"Random rotation with mixing Lasota-Yorke noise" の中で報告した。 (3) 本研究課題本体からは外れるが、副産物として、技術的な面で代表者による過去の研究に若干の改良を与えたものを、2024年3月開催の研究集会「リーマン面・不連続群論」での招待講演"Generalizations of the squared Gauss transformation" で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では次の3つの研究目標を定めている。 (I) オリジナルな系に対応する歪積変換と直積系に対応する歪積変換のある意味での絶対連続不変測度の存在に関する対応関係を明らかにする。(II) オリジナルな系の急冷型エルゴード理論的性質と直積系の焼鈍型エルゴード理論的性質との関係を明らかにする。(III) 直積系の焼鈍型極限定理からのオリジナルな系の急冷型極限定理の導出問題への道筋を与える。 これらはいずれも密接に関係していることから、当初より研究期間を通して並行して推進する計画となっており、とくに初年度については研究(I)に重点をおくこととなっていた。研究業績の概要の項目で挙げた事例は出版物や学会発表の形となったものにとどまるが、実際には2023年度の研究の一部であり、研究目標(I)に関連する事項については、本研究課題の準備段階から蓄積してきたノイズ系を可逆化する手法をとりいれて、直積系とオリジナル系それぞれに対応する歪積変換の不変測度の対応に関する研究を進展させており、更なる改良の可能性も見込まれることからとりまとめはもう少し後になると思われる。いずれにしても、研究の進捗状況としては概ね計画通りであり、(I)に限っていうならば最終的には当初計画以上の結果を見込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画どおり2024年度は目標となる研究(I)、(II)、(III)のうち、研究(II) すなわち、「オリジナルな系の急冷型エルゴード理論的性質と直積系の焼鈍型エルゴード理論的性質,とくにオリジナルな系における急冷型のエルゴード性、弱混合性、混合性を定式化し、直積系の焼鈍型のエルゴード理論的性質、あるいは歪積変換のエルゴード理論的性質との関係を明らかにする」に研究の重心を移動する。しかしながら、オリジナルな系と直積系に対応する歪積変換の不変測度の対応関係に関する研究(I)について、当初予想した以上に詳細な関係がわかる可能性が出てきたこともあり、こちらのほうにもある程度時間を割くことを考えている。また、研究(II)で当初の対象として想定していた、エルゴード性、弱混合性、強混合性に加え、完全性やBernoulli性といったエントロピーと関連した性質についても考察する範囲を広げることも視野に入れることで、他のエルゴード理論的性質についてもより深い知見が得られるのではないかと思われる。 以上の遂行にあたっては、様々なタイプのノイズを伴った具体的なランダム力学系のエルゴード理論的性質とそれが成立する理論的な背景について精査する必要がある。また、力学系や確率論に関係する図書、論文等の文献調査に加え、ランダム力学系、エルゴード理論、確率論、関数論、トポロジー等の研究集会に参加し当該分野の専門家と交流して情報収集をすることも重要である。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)