Project/Area Number |
23K03297
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長田 俊人 東京大学, 物性研究所, 教授 (00192526)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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Keywords | 非線形異常ホール効果 / ツェナートンネル / サイドジャンプ / 有機Dirac電子系 / α-(BEDT-TTF)2I3 / 量子ホール効果 / 層間結合 / 2バンド系 |
Outline of Research at the Start |
2バンド系の非線形Hall効果のバンド間機構を新たに確立するために、①2次元massive Dirac電子系における非線形Hall効果のバンド間機構(Zenerトンネルに伴うside jump)のモデルを構築し、②有機導体α-(BEDT-TTF)2I3の圧力下の弱い電荷秩序状態における非線形Hall効果の精密測定により、バンド間機構の寄与の存在を実証する。さらに③磁性トポロジカル絶縁体MnBi2Te4薄膜の表面状態が示す異常Hall効果がバンド間機構由来の3次非線形成分を持つことを検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、有機導体におけるトポロジカル伝導現象に関する新たな学理構築を目指すものである。当初の研究対象は表題の(1)2バンド系の非線形異常Hall効果のバンド間機構であったが、申請後有機Dirac電子系で相次いで報告された(2)対称性の破れた(ν=0,1)量子Hall効果と、(3)層間結合によるカイラル磁気効果に起因した3次元トポロジカル伝導の発現機構も対象に加えた。 (1)非線形異常Hall効果はゼロ磁場で時間反転対称な系において異常Hall効果が電流誘起される非平衡現象で、従来、Berry曲率双極子など単一バンド(金属)のトポロジーに由来する「バンド内」機構で説明されてきた。一方、申請者が実験的に非線形異常Hall効果を調べてきた有機導体α-(BEDT-TTF)2I3は、ギャップの開いた傾斜Dirac電子系で、本質的に2バンド系である。そこで微小ギャップを持つ2バンド系(絶縁体)における非線形異常Hall効果の「バンド間」機構の可能性を探求した。具体的にはKitamuraらによる電場下半導体におけるZenerトンネルのshift vector補正の1次元理論を2次元Dirac電子系に拡張し、Zenerトンネルの際に電子波束が電場と直交する方向にside jumpするためにトンネル電流にHall成分が現れる可能性を検討し肯定的な結果を得た。 (2)最近α-(BETS)2I3において報告されたν=1量子Hall効果について、これが交換相互作用による空間反転対称性の自発的な破れによるバレー分裂に起因することを指摘し、Hofstadterの方法を用いてサイト分解したLandau準位の波動関数を計算し、ν=1量子Hall状態における電荷とスピンの空間変調パターンを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非線形異常Hall効果のバンド間機構に関する課題(1)、すなわち微小ギャップと傾斜Diracコーンを持つ2次元massive Dirac電子系でZenerトンネルの際に電子波束が電場と直交する方向にside jumpしてトンネル電流にHall成分が現れる機構、については概念的には確立しているが、数値シミュレーションが完成していない。また有機導体α-(BEDT-TTF)2I3の弱い電荷秩序状態で観測される非線形異常Hall効果にバンド間機構の寄与が含まれることの検証実験(Zenerトンネルによる縦伝導とHall伝導の非線形成分の比較等)も十分に進んでいるとは言えない。 これは申請後にν=1量子Hall効果の観測という予期せぬ展開があり、その重要性から研究の一部を同課題(2)に振り向けたからである。その結果、ν=1量子Hall状態では相互作用により対称性が自発的に破れていることを指摘し、電荷とスピンの対称性の破れたパターンを解明した。示す研究を行ったためである。 課題(2)については満足すべき結果が得られたので、全体としては「おおむね順調」であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は(1)については、バンド間機構のシミュレーションを完成させると共に、有機導体α-(BEDT-TTF)2I3で観測される非線形異常Hall効果にバンド間機構の寄与が含まれているかどうかの検証実験を進める。具体的には、Zenerトンネルによる縦伝導とHall伝導の非線形成分の比較、温度依存性によるトンネル電流の敏感な電荷秩序ギャップ依存性の確認、トンネル電流のDiracコーン傾斜軸方向での最大化の確認などを行う。 (2)についてはα-(BEDT-TTF)2I3のν=0量子Hall状態の対称性破れの可能性をエッジ伝導実験により検証する。 (3)についてはα-(BEDT-TTF)2I3やα-(BETS)2I3が低温で示す3次元トポロジカル伝導の起源を解明するため、層間結合とスピン軌道結合を取り入れた模型について調べる。
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