心筋細胞の構成的集団形成によって顕在化する協同性の創発機構の解明
Project/Area Number |
23K03348
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13040:Biophysics, chemical physics and soft matter physics-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
坂本 一史 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (40907078)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 秩序構造の創発 / 細胞集団の協同性 / 細胞の空間配置 / 同期現象と伝搬現象 / 心筋細胞 / 同期現象と伝播現象 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、細胞の「集団化」による細胞ネットワークとしての新たな状態の創発の仕組みを明らかにすることである。本研究では、心筋細胞を用いて、細胞の空間配置を制御し構成的に細胞集団を形成させる。さらに、その集団に強制発火刺激を行うことで、細胞の「空間配置」の意義や、「摂動・緩和」の繰り返しで集団が獲得する「記憶刷り込み」などの創発に繋がる協同現象の機構を明らかにする。また、細胞集団内の興奮伝導に着目し、上記実験で得られた結果をもとに細胞を最小単位とした拍動同期モデルの構築を試みる。
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Outline of Annual Research Achievements |
自律拍動する心筋細胞の特徴のひとつは、その内部状態を、細胞の拍動というマクロな視点から容易に観測できることである。従来の研究では、一般に細胞のもつ拍動ゆらぎは考慮されておらず、1細胞の機能の特性を理解することで、それらの積み上げによって心臓の仕組みを明らかにできると考えられてきた。 本年度は、主に集団を構成する細胞の空間配置と集団の拍動状態に着目をし、集団形状の異なる2次元シート状の心筋ネットワークに催不整脈作用のある薬剤を添加した際の集団の応答を比較した。その結果、活動電位の再分極を担うカリウムイオンチャネル(hERGチャネル)を阻害した際の細胞外電位持続時間の延長度合いが、集団形状によって有意に異なることを明らかにした。この結果は、均質である細胞を用いて心筋細胞ネットワークを形成させた場合でも、集団の「かたち」によって構成細胞の性質が変化する可能性を示唆するものであり、この研究成果を研究論文(Micromachines)として発表した。 また、これまでに得られた実験結果から、集団同士の同期化においては、従来から考えられている心筋細胞の電気生理学的性質や単純な位相モデルでは説明ができない、どちらの集団も持たないより遅い拍動周期が創発される可能性が示唆された。同期化による拍動状態の創発が集団固有の現象であるのかを検証するために構成細胞の数をより厳密に制御して追加実験を行い、その成果を国内学会(第61回日本生物物理学会年会)で発表した。 最後に、これまでに発見した直線状の心筋ネットワークにおける興奮伝導時間ゆらぎの拡散を伴わない一方向伝導に関して、新たに追加実験を行うことによって、集団内の隣接した局所区間同士の伝導時間が負の相関を持つことを明らかにした。この研究成果を国際会議(68th annual meeting of the Biophysical society)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、細胞の空間配置に着目することによって、集団形状によって構成細胞のイオンチャネルレベルの性質が変化する可能性を示唆する実験結果を得た。この研究成果は、心筋細胞集団の「大きさ」と構成細胞の「空間配置」の重要性を示したものであり、一般的に行われている心筋シートを用いた薬効評価方法に対して、細胞ネットワークの持つ「かたち」という新たな視点を提供できる可能性がある。また、これまでに得られていた心筋細胞集団の同期化や、興奮伝導に関する実験結果に関しても、追加実験を行うことによって、より詳細な解析を行うことに成功した。 一方で、「同期化でのより遅い拍動周期の創発」や「伝導時間が負の相関を持った興奮伝導」など、現象の発見のみにとどまり、その発生メカニズムを十分に明らかにできていない課題が残った。本年度は追加実験によって、これまでに得られた実験結果・観測された現象の再現が可能であることが確かめられたため、今後は実験条件を変化させ、その発生メカニズムの解明を目指す。 また、強制発火刺激を用いた実験に関しては、本年度では、刺激条件の模索や実験環境の構築を行った。引き続き刺激条件と計測条件の最適化を行い、外部摂動を与えた際の集団の応答を観測することによって、集団が持つ性質の観測を、細胞の「数」と「空間配置」の観点から試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、構成的実験手法を用いて心筋細胞集団を形成し、集団化によって生まれる拍動同期現象と興奮伝導の発生の2つの観点から、拍動ゆらぎをもつ細胞が集団化した際に獲得する秩序構造の性質を明らかにすることを試みる。 特に、今回発見した「集団内の隣接区間の伝導時間が負の相関を持った興奮伝導」に関して、その発生メカニズムを明らかにすることを試みる。そのために、まずは幅の異なる直線状の心筋ネットワークを構築し、興奮伝導の特性に対するネットワークのライン幅依存性を明らかにする実験を引き続き行う。 また、新たに獲得した研究課題(特別研究員奨励費, 24KJ0046)と併せて、1細胞から構成的に集団を構築し、段階的に拍動状態の変化を観測する実験を進める。これによって、「拍動の同期化によるより遅い周期の獲得」の創発メカニズムを明らかにすることを目指す。 最後に、構築が完了しつつある強制刺激を行う実験系を用いて、心筋細胞集団の拍動状態に対する構成細胞の空間配置依存性を明らかにする実験を進める。また、刺激・計測技術に関して、これまでの実験では主に細胞外電位計測を用いたが、パッチクランプ法や画像イメージングなどを活用して複数の技術を組み合わせる。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)