Project/Area Number |
23K03350
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13040:Biophysics, chemical physics and soft matter physics-related
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
中沢 寛光 関西学院大学, 理学部, 教育技術主事 (70411775)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | 皮膚角層 / 細胞間脂質 / 放射光X線 / 経皮吸収 / 電場刺激 / 医薬品 / 化粧品 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、経皮吸収促進効果が期待されている様々な物質を用いて薬剤浸透時の角層のX線構造解析を実施し、それらの吸収特性を解析することで、浸透性物質のデータベースを作成、さらにイオン導入やエレクトロポレーションなどの外部刺激の作用特性を解析して、より効果的な経皮吸収薬やその施術方法の開発に応用することを目指す。ここで得られる新しい情報は、荒れ肌改善などの皮膚バリア機能のメカニズム解明にも直結すると考えられ、経皮吸収薬の開発分野だけでなく、アトピーや魚鱗癬、乾燥肌などの肌状態の改善を目的とする基礎研究にも重要な知見を与えることが期待される。
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Outline of Annual Research Achievements |
皮膚の重要な役割の1つとして、生体の外部からアレルゲンなどの異物が体内に侵入することを防ぐ、いわゆる皮膚バリアがあり、それには皮膚の最外部に位置する角層が重要な役割を担うことが広く知られている。この角層は表皮細胞の分化の最終過程で形成され、その構成成分は主に、ケラチン繊維を内部に含有する角質細胞とその周りを取り囲む細胞間脂質である。角層内では、角質細胞や細胞間脂質が高秩序化された3次元構造を形成することで、高いバリア性能が発揮されていると考えられている。近年の放射光や電子線回折技術の目覚ましい発展により、アトピー性皮膚炎や冬場の乾燥肌などの水分量が低下した角層では、細胞間脂質の配列構造に乱れが生じている事などが報告されており、バリア機能の機能発現メカニズムや、バリア機能に影響を与える水と角層との相互作用が徐々に明らかになりつつある。 一方で、この角層の高秩序化構造は、経皮吸収性の医薬品にとっては当然ながら大きな障壁となる。経皮吸収性の医薬品は角層内の細胞間脂質領域がその透過ルートとなるため、より吸収性に優れた製剤を開発するためには、製剤と細胞間脂質の相互作用を分子レベルで明らかにすることが重要となる。しかしながら、角層の構造やその環境要因が経皮吸収薬に与える影響は現在のところまだよく分かっていない。 本研究代表者は、KEK-PFやSPring-8などの高輝度な放射光X線源を用いることにより、角層内への溶液吸収を高感度に測定する手法を開発してきた。独自に開発した試料保持装置(特許番号:5904835号)を用いて様々な環境要因を再現し、外部刺激が角層内の薬剤の浸透性に及ぼす影響を明らかにしてきた。特に本研究課題では、電場刺激が角層の構造や経皮吸収性の医薬品の角層内の透過挙動に与える影響を詳細に解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究関連課題は高輝度光科学研究機構(SPring-8)や高エネルギー加速器研究機構(KEK-PF)の公募型一般課題に多く採択され、十分なビームタイムを持って広く研究を展開することができている。また本研究に関しては、本学が参画するSPring-8のフロンティアソフトマタービームライン(FSBL)の高輝度放射光での測定も重要な意味を持ち、そちらのマシンタイムも有効に活用することができている。これらの研究組織における採択課題番号を以下に示す。(2023A1443、2023A1461、2023A1473、2023A7202、2023B1504、2023B1558、2023B7252以上SPring-8、2022G620、2023G078以上KEK-PF)。今年度は、これらのマシンタイムを利用して、ヒト皮膚角層と塗布製剤の相互作用研究、ヒト角層に外部刺激を与えた際の角層の構造変化および塗布物質の浸透挙動変化の解析研究、ヒト皮膚角層と類似の構造を有するヒト毛髪の基礎構造解析および水との相互作用研究などを実施した。これらの研究については共同研究を展開する大手化粧品企業や大手自動車部品企業、大手生活用品企業の協力を得つつ、相乗効果を持って精力的に関連研究を展開することができており、また幅広くその成果を社会に還元することもできている。 今年度は、本研究の遂行に必要不可欠となる試料保持装置(特許番号:5904835号)の仕様の改良にも着手し、その結果、装置内部の試料周りの高精度な湿度制御システムの導入や新しい方式での電場の印加実験も開始した。現在、これらの外部刺激の作用特性を詳細に解析し、さらに幅広く研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度についても上述の研究等を積極的に展開し、学術論文や学会発表などを通じて広くその成果を社会に発信していく予定である。以下に具体的に推進する研究テーマとその内容等について列挙する。 1.ヒト角層と化粧製剤の相互作用の解析研究については、様々な化粧製剤と皮膚角層との相互作用を放射光X線を用いて解析し、さらに皮膚上での化粧製剤の構造変化特性なども解析しつつ、両者の関係解析を実施する。製剤塗布後の皮膚角層の構造変化を明らかにすることで、これら製剤の塗布効果を検証し、より効果の期待できる製剤の開発研究に応用することを目指す。2.ヒト皮膚角層やそれと類似の構造を有するヒト毛髪を用いて、生体や製剤の基本物質である水との相互作用を詳細に解析し、生体内での水の存在様態や皮膚バリア機能に重要な役割を果たす細胞間脂質構造との相互作用の関係解析を実施する。現在、試料周りの湿度環境を制御するシステムを新設し、より高精度の実験展開が可能となっている。次年度はこれを用いてさらに詳細な解析を実施、両者の関係性を明らかにし、水の存在様態等の影響などを解析する予定である。3.経皮吸収に対する外部刺激の効果検証研究に関しては、改良した試料保持装置を用いてさらに追加実証を実施する予定である。経皮吸収に対する電場の影響解析研究に関しては、印加する電圧や周波数などに着目しながら、より効果のある外部刺激の探索を試みる。 以上のような研究を次年度は展開する予定である。さらに機械学習などのAI技術を積極的に本研究課題に導入することも検討している。
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