Project/Area Number |
23K03507
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17030:Human geosciences-related
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
石崎 泰男 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (20272891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 尚人 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (30202964)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 湖沼堆積物 / テフラ / 水蒸気噴火 / 地獄谷 / 弥陀ヶ原火山 / 噴火史 / 放射性炭素年代 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、極小規模噴火の噴出物が堆積しやすい噴火発生場近傍の湖沼堆積物に着目し、湖沼堆積物から各種物質科学的手法で検出された噴火堆積物の年代を決定し、活火山の真の噴火履歴を明らかにする。具体的には、最近1万年間に水蒸気噴火を繰り返してきた弥陀ヶ原火山の湖沼堆積物から噴火堆積物を検出し、一部の年縞をもつ湖沼堆積物では1年単位の時間分解能で噴火履歴を明らかにする。本研究を通し、弥陀ヶ原火山での次期噴火に向けた防災対策をより現実的なものとするための基礎データを取得し、併せて真の噴火履歴解明のための調査法・分析法を確立する。
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Outline of Annual Research Achievements |
弥陀ヶ原火山(富山県)は、最近1万年間に繰り返し水蒸気噴火を発生させてきた活火山である。本研究では、陸上には地層として保存されにくい極小規模噴火の噴出物(主にテフラ層)を火口近傍の湖沼堆積物から各種物質科学的手法により検出し、同火山の真の噴火履歴の解明を目指している。 令和5年度は、陸上に露出した、地獄谷内で最大規模の湖沼堆積物において試料採取・物質科学的解析を実施した。この湖沼堆積物は全層厚約5mの粘土質堆積物であり、2世紀末から7世紀末に地獄谷内に存在した古地獄谷湖で堆積したとされる(日下部ほか,1983;水谷ほか,2001)。令和5年度には、コの字型アクリル採器(長さ50 cm)を用い欠損なく約2m(層厚)の湖沼堆積物の試料採取に成功した。採取した試料(以下コア試料)について実体顕微鏡を用いた観察を行ったところ、50 cm当たり数層の噴火堆積物を推測される粗粒砂サイズの堆積物層を認定できた。50cm当たりに年稿が100~200枚存在するため、数10年に1度の頻度で噴火現象が起きていた可能性が示唆された。また高知大学コア研究センターの各種分析機器を用いて、コア試料の物質科学的解析を進め、砂粒砂層が他の湖沼堆積層に比べTiO2やAl2O3に富むことが明らかになった。 他火山の水蒸気テフラについての全岩化学組成分析も行い、マグマ噴火のテフラに比べTiO2やAl2O3に極度に富み、Na2OやK2Oに極度に乏しいという化学組成の特徴がもつことが明らかになった。弥陀ヶ原火山の水蒸気噴火テフラの化学組成分析は令和5年度には実施できなかったものの、湖沼堆積物から水蒸気噴火のテフラを検出する際にはTiO2やAl2O3が特に重要な成分になることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、地獄谷の北域に分布する湖沼堆積物について研究を行った。この堆積物は、かつて地獄谷内に存在した火口湖(古地獄谷湖)で堆積した縞状硫黄層(下位、2世紀末から3世紀に堆積)と縞状粘土層(上位、3世紀から7世紀末)からなり、ともに粘土粒子から主に構成され年稿が発達していることが特徴である(日下部ほか,1983;水谷ほか,2001)。 令和5年度は、アクリル採器を用い、縞状硫黄層と縞状粘土層の境界をまたぐ形で計約2 mの試料(以下コア試料)を欠損なく採取した。実体顕微鏡による観察では、粗粒砂サイズの砕屑物からなる層がコア試料中に数層挟在していることがわかった。これらの粗粒砂層には水蒸気噴火のテフラに特徴的に産するモザイク石英からなる岩片(ラピリ)も含まれていることから、これらの粗粒砂層が水蒸気噴火のテフラである蓋然性が高くなった。また、湖沼堆積物にはサグ構造を伴う岩塊もときおり見られ、水蒸気噴火による投出岩塊(火山弾)であることが推測された。 コア試料を高知大学海洋コア研究センターにおいて各種スキャン分析を行った。XRF分析結果から、粗粒砂層においてAl2O3、TiO2、SiO2の顕著な増加とSやK2Oの顕著な減少が見られた。弥陀ヶ原火山の水蒸気噴火のテフラ試料が十分量手元になかったため、志賀火山の水蒸気噴火のテフラの全岩化学組成をXRFで定量したところ、マグマ噴火の噴出物に比べ、Al2O3、TiO2、SiO2に極端に富み、Na2O、K2Oに乏しいことが明らかになった。このような組成の特徴から、コア試料中の粗粒砂層はかつて地獄谷内及びその近傍域で発生した水蒸気噴火の堆積物である可能性が示唆された。 このように本課題の研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度には以下のように研究を進めていく。 (1)地獄谷内に露出している湖沼堆積物についてのコア試料採取を進める。地獄谷内には、古地獄谷湖の湖沼堆積物以外にも湖沼堆積物が露出しており、それらについての試料採取を進める。また、地獄谷の近傍にはミドリガ池やミクリガ池、血の池地獄などの火口湖が現存しており、その湖底から湖沼堆積物の採取を試みる。 (2)コア試料についての物質科学的解析を進める。昨年度は高知大学海洋コア研究センター設置のTATSCANを用い、湖沼堆積物の全岩組成を分析した。この機器では1cm間隔で約 10×7mm の領域の面分析が行われるが、分析範囲には年稿数層から数十層が存在するため、年稿1枚1枚の組成定量ができない。そのため本年度は分解能が高いITRAX(測定間隔0.2 mm)を用いての分析を実施予定である(コアセンターと調整は完了している)。 (3)弥陀ヶ原火山で最近1万年間に噴出した大規模水蒸気噴火の試料を中心に、全岩組成分析を進めていく。国内外で水蒸気噴火のテフラの全岩化学組成の分析例は皆無であるため、分析手法から開拓していく必要がある。初年度の予察分析(志賀火山のテフラを使用)では、テフラ粒子のうち63ミクロン以下の粘土サイズ火砕物を抽出し、それをペレット化したものを分析に供したところ、おおむね上手く分析ができたとの感触が得られた。本年度はこの分析手法に改良を加え、分析手法を確立したい。
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