Project/Area Number |
23K03508
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17030:Human geosciences-related
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
三瓶 良和 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (00226086)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
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Keywords | 有機物 / 深成岩 / 火山岩 / 炭化水素 / 有機物の非生物的生成 / フィッシャートロプシュ反応 |
Outline of Research at the Start |
近年,有機物はH2OとCaCO3と一部の金属さえあれば地球上で無機的に生成されることが示され,このことは非生物的な有機物の生成が,現在認識されているよりもはるかに容易に起こることを示唆している。したがって,蛇紋岩によってH2が形成される中央海嶺や沈み込み帯の深部だけではなく一般的なマグマ発生場にまで,非生物的有機物の生成システム圏は飛躍的に拡張される可能性がある。このことは,地球の炭素分布とその循環システムに大きな影響を及ぼす。本研究では,これまでほとんど検討されてこなかった無機的な有機物生成のマグマシステムについて,深成岩と火山岩を対象として海水の影響の有無に着目しながら明かにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
近年、有機物はH2OとCO2と一部の金属元素さえあれば地球上で無機的に生成されることが指摘されるようになり、このことは地球の炭素分布とその循環システムに大きな影響を及ぼす。本研究では、これまでほとんど検討されてこなかった無機的な有機物生成のマグマシステムについて、深成岩と火山岩を対象として有機物の非生物的生成システムと岩石種依存性を明らかにすることを目的として研究を行った。3年計画の初年度である2023年度は、島根県東部および広島県北部において野外地質調査を行い、花崗岩・花崗閃緑岩・流紋岩・安山岩・ドレライトを合計70試料採取し、岩石薄片観察、炭素・水素・窒素・イオウ元素分析、熱分解で発生する炭化水素類の分析を行った。その結果、全ての岩石種で岩石薄片中の黒雲母や磁鉄鉱の近辺に数十~400μm程度の黒色で不透明な有機物が存在することが顕微ラマン分光分析によって確認された。600熱分解GC-MS分析を行うと、微量ながらトルエン、キシレン、ナフタレン、n-アルカンなどの炭化水素と酸素化合物のギ酸、ベンゾフランが検出され、ほとんどの火成岩の中に有機物が含まれていることが確認された。堆積岩を起源としないIタイプ山陰花崗岩では堆積岩を起源とするSタイプ山陽花崗岩よりも酸素を含む芳香族化合物の含有率が高いことが分かった。 次年度にはさらに岩石種と調査範囲を拡大し、分析についても追加して、石英・長石・黒雲母等の鉱物を分離して熱分解GC-MS分析・DTA-TG熱分析を行う。また産総研の地球化学標準岩石試料および島根県益田市馬谷城山の真砂ペグマタイト鉱山の石英・長石も分析して比較する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の2023年度は、重要な地域の野外地質調査と岩石試料採取およびそれらの分析を予定どおりに進行させた。調査は島根県東部および広島県北部で行った。Sタイプ花崗岩は広島県三次市で10試料、Iタイプ花崗岩・花崗閃緑岩は広島県三次市と島根県雲南市で15試料、流紋岩類は松江市鹿島町・枕木町・美保関町で22試料、安山岩は出雲市別所で4試料、ドレライトは出雲市小伊津と松江市朝酌南・本庄で19試料、合計70試料を採取した。これらの試料を用いて、岩石薄片観察、CHNS元素組成分析、熱分解GC-MS分析およびロックエバル分析を行った。 全岩石で共通して、岩石薄片観察で数十~400μm程度の不規則形の黒色不透明部の点在が確認され、顕微ラマン分光分析によってその多くは有機物であることが確認された。これらの有機物は黒雲母や磁鉄鉱の近辺に存在する。元素組成は、花崗岩では全有機炭素(TOC)濃度と炭酸塩C濃度の間に負の弱い相関が認められたが、ドレライトでは逆に両者間に正の弱い相関が認められた。流紋岩では相関はなかった。Iタイプ花崗岩ではSタイプ花崗岩とくらべて炭酸塩C濃度は高く、TOC濃度は低かった。600℃熱分解GC-MSで検出された炭化水素等は、Iタイプ花崗岩ではSタイプ花崗岩よりもn-アルカンが長鎖であり酸素を含む芳香族化合物の含有率が高かった。流紋岩ではトルエンとナフタレンが明瞭に検出され長鎖n-アルカンは存在せずnC8~12の短鎖アルカンが多く含まれていた。流紋岩の炭化水素類は今回の岩石種の中で濃度が最も低く、噴出時の減圧によって多くが散逸した可能性がある。安山岩では主にnC13~15アルカンが検出された。ドレライトでは、ギ酸、キシレン、ベンゾフラン、ナフタレンとn-アルカンが検出され、n-アルカン総量が多いと芳香族化合物も多い傾向を示し、濃度は花崗岩・安山岩・流紋岩よりも高かった。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる2024年度は、岩石種と調査範囲を拡大する。具体的には、典型的なSタイプ花崗岩を広島県広島市・廿日市市等で、Iタイプ花崗岩を島根県松江市-大東町等で、安山岩を島根県松江市玉造-宍道等で、玄武岩を島根県松江市-出雲市-島根町等で、それぞれ採取する。また、分析についてもDTA-TG熱分析を追加し、一部の試料についてはδ13C分析を外部委託する。鉱物粒子の抽出が可能な試料では石英・長石・黒雲母等の鉱物を分離して熱分解GC-MS分析を行う。さらに有機物濃度の高い一部の試料については、有機溶媒抽出性有機物の分析を三段階脂質成分抽出(鉱物粒子の外-中間-内)によって詳細に検討する。加えて、既に入手済である産総研の地球化学標準岩石試料JG1(花崗岩),JG3(花崗閃緑岩),JGb1(斑れい岩),JR1(流紋岩),JA1(安山岩),JB1(玄武岩)、および島根県益田市馬谷城山の真砂ペグマタイト鉱山の石英・長石も分析して比較する。
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