Project/Area Number |
23K03509
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17030:Human geosciences-related
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
武藤 鉄司 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (70212248)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 下流域沖積系 / デルタ性海退 / 非デルタ性海進 / 海水準変動サイクル / オート層序学 / 非平衡応答 / チャネル / 水槽実験 / 沖積河川 / 海水準変動 / デルタ / 大陸棚 |
Outline of Research at the Start |
海水準の変動は下流域沖積系の埋積と削剥を支配する主要因であり、系内の物質移送を担う沖積チャネルの動態にも重大な影響を及ぼすと考えられる。この理解に関わる収束仮説『海水準変動サイクルのもとで成長する下流域沖積系には収束形態が存在する。この形態に到達すると、以降の海水準変動サイクルのどのタイミングにおいても沖積チャネルは安定した流路を持続し、大きな削剥・下刻を伴うことはもはやない』を水槽を用いたモデル実験で検証する。収束仮説が確かめられれば、フィジカルな根拠に裏付けされた、海水準変動サイクル下の下流域沖積系のチャネル動態を説明する最初の学説となり、第四紀下流域沖積系に新たな地層観をもたらす。
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Outline of Annual Research Achievements |
海水準の変動は下流域沖積系の埋積と削剥を支配する主要因の一つであり、下流域沖積系内の物質移送を担う沖積チャネルの動態にも大きな影響を及ぼす。本研究の目的は、近年の理論的・実験的研究から演繹される収束仮説『海水準変動サイクルのもとで成長する下流域沖積系には収束形態が存在する。この形態に到達すると、以降の海水準変動サイクルのどのタイミングにおいても、沖積チャネルは側方移動やアバルジョンを稀にしか生じない、安定した流路を持続する。大きな削剥・下刻を伴うことはもはやない』を検証することにある。2023年度は、長崎大学の実験水槽マルジ5号・6号を用いた二次元条件と三次元条件のもとで、対称形の上昇・下降を繰り返す海水準変動を模した数回の予備実験および10回超の本実験を行った。これにより、収束仮説の正しさがおおよそ確認できた。具体的な知見は次のようにまとめられる。 (1)サイクルの経過に伴い、下流域沖積系は恒常的埋積状態へと漸近し、有限サイクル数内にそれが実現する。恒常的埋積状態の実現に要するサイクル数Ncycle_ASは三次元オート層序学的長さスケールで無次元化した振幅Arsl*に比例する。2023.9及び2024.5研究集会で報告。 (2)サイクルの経過に伴って十分に拡大した沖積系においては、サイクル内の海水準上昇期には非デルタ性海進のみ起こるようになり、沖積系はひたすら縮小していく。この縮小には限界が存在し、その状態に到達した沖積系の面積はオート層序学的面積スケールにほぼ等しい。これ以降も非デルタ性海進は続くが、形態力学上の平衡状態が保たれる。2024.5論文出版。 (3)同様に、系が十分に成長してからのサイクル内の海水準下降期においては、沖積分流チャネルは平衡に近い埋積状態となり、やはり側方移動もアバルジョンもごく稀にしか起こさず、流路をほとんど変えないようになる。論文投稿準備中。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の鍵となるいくつかの重要な問題について,いずれもほぼ解き明かすことができた。端的には、収束仮説の正しさを確証できたと言って差し支えない。さらに、収束過程の早期において沖積チャネルの挙動が変遷するとした予想も実験により確かめられた。海水準の多サイクル変動を経て十分に成長した沖積系においては、チャネルは側方移動もアバルジョンも起こさなくなり、ただひたすら海側へ線的に伸びていき、安定する傾向にある。この安定性及び安定化傾向はチャネル内の埋積がほとんど進まなくなることの反映でもある。これらのことと直接関係する成果を学術誌にて2編公表した。さらに別の2編を準備しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果の論文化をさらに進めるとともに、国内・国外の研究集会にて成果を随時公表していく。これまでの実験では対称形かつ定常的な海水準変動サイクルを想定していたが、天然沖積系への適用を念頭に置けば、複雑な非対称形・非定常的・不規則形の条件のもとでの二次元・三次元実験を行うべきであると考える。そのような条件下での収束仮説の適用性を検証する。並行して、収束形態の視点から第四紀沖積系層序を考察する。具体的には次の2点が特に重要である。 (1)第四紀グローバル海水準変動を特定のスケーリングで実験水槽内に再現し、その条件下で沖積系の成長とチャネル動態の変遷を調べる。 (2)更新世末-完新世に形成されたいわゆる「沖積層」には明確に基底谷を伴うものとそうでないものとがあり、また基底谷直下の地層の堆積年代は多くの場合はっきりしていない。 これらの問題も含めて、実際の層序記録を比較対照することで収束形態の検出を試みる。基底谷が普遍的に存在することの地質学的意味を明らかにしたい。
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