Project/Area Number |
23K03551
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17040:Solid earth sciences-related
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
永嶌 真理子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (80580274)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 緑簾石 / 結晶性 / 合成 / スカンジウム / 非晶質 / 結晶子 / 鉱物合成 / ラマン分光 |
Outline of Research at the Start |
通常鉱物はその生成条件下で安定な結晶構造を持つが,放射性元素を含む場合はその壊変による格子欠陥のため結晶性が低下する.しかし研究代表者は,放射性元素を含まない緑簾石鉱物から結晶性の低下を見出し,それがナノオーダーの結晶学的方位が共通する緑簾石結晶子セグメントに断片化とその間隙を充填する非晶質物質に因ることを明らかにした (Nagashima et al. 2011, 2021).天然鉱物において,母相の構造を残しながらナノオーダーで微細組織が形成され結晶性が低下する事例は報告がなく,鉱物生成後の変化の原因とメカニズムに関する解明と理論構築が必要である.
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Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は,天然の含Cr+V緑簾石族鉱物で放射性元素に起因しない結晶性の低下を発見し(Nagashima et al. 2011),その緑簾石がナノオーダーで結晶学的方位が共通する結晶子セグメントに断片化しており,間隙を非晶質物質が充填することを明らかにした (Nagashima et al. 2021).母相の構造を残しつつナノオーダーで微細組織が形成されて結晶性が低下する現象はこれまで例がなく,本申請課題ではナノオーダーの結晶子の断片化の原因とメカニズムの理解を目指して,天然鉱物と合成物質の双方からアプローチを行っている. 結晶子セグメントはCrとVを含む場合でみられ,Feを含むものでは認められない.これらの元素は似たイオン半径を持つにもかかわらず,異なる結晶構造を示す.この違いは原子の結合状態に起因すると仮説を立て,その立証に適したスカンジウムScを用いた実験を計画した.したがって,2023年度は主にノルウェーHeftetjern産天然の含Sc緑簾石族鉱物の結晶化学的検討,含Scクリノゾイサイト(Czo)の合成,さらに低結晶性物質再現実験として含Cr+V-Czoの合成を試みた.天然試料はScだけではなく,Fe, La, Ceなどの希土類元素に富みScの挙動を検討することは困難であったが,化学分析からはScはLa, Ceではなく,FeやAlと置換関係を持つことが明示された.さらにScの挙動の解明のため,Sc-Czoの合成を試みて成功した.合成生成物の結晶化学的検討によって,Scの挙動と結晶構造への影響を明らかにした.イオン半径の大きなScがAlを置換することにより6配位席は膨張するが,Al-Fe置換から予想された変形と比べて原子間距離の変形が抑制されるという新知見が得られた.この研究成果に関して国際誌に論文を投稿済である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
含Scクリノゾイサイト(Czo)の合成成功により,緑簾石結晶構造におけるScの挙動と結晶構造に与える変化を検討し,イオン半径が相対的に大きいScがAlを置き換えることで6配位席は膨張するが,Al-Fe置換と比べ配位席の変形が抑制されることが分かった.合成Cr-Czo, V-Czoでも度合いは異なるものの似た現象が確認されており,Cr, V, Scなどの原子の結合状態は配位席の変形度に顕著に表れると解釈できる.構造変化への原子の結合状態の影響を明らかにしたことは,緑簾石族結晶鉱物の理解を新たな次元に導く貢献である.この原子の結合状態は,結晶子のナノフラグメント化にも関わっていると想定されるため,現在, 含Sc-Czoの検討を継続しつつ,含Cr+V-Czoの合成と低結晶性物質再現に取り組んでいる.クロムやバナジウムに富んだ緑簾石族鉱物の産出は天然でもまれで,合成Cr+V-Czoは報告例がなく,天然の産状に基づく実験条件の設定,適切な出発物質の探索を進めている.天然試料の化学組成に基づき,2種の組成を持つ酸化物混合物とゲル出発物質を作成した;Ca2Al2.5Cr0.25V0.25Si3O12.5, Ca2Al2.25Cr0.5V0.25Si3O12.5.本実験では,緑色片岩相条件下でのCrの不動性を考慮し,さらにVの酸化数制御する必要があるため容易ではない.試行錯誤の結果,現時点でCr0.07-0.18+V0.08-0.19 apfuを含むCzoの晶出が確認されたため,合成可能であることが明らかとなり大きく前進した.しかし,結晶化学的検討に適した結晶サイズには至っておらず,実験を継続中である.
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Strategy for Future Research Activity |
含Cr+V-Czo低結晶性物質の再現実験に特に注力するが,Al-V系,Al-Cr系緑簾石における組成不混和領域の存在の検証を始める。組成不混和領域はAl-Fe系緑簾石のみで知られてきたが,合成含V-Czoでもその存在が示唆された。不混和領域は相の状態変化を引き起こし,原子配列の乱れの原因となり得るため,ナノフラグメントの形成との関係が疑われる.しかし,実験的研究では装置の不具合など不測の事態が起こる可能性があるため,同時並行で天然試料の検討を進める.研究代表者が所有する低結晶性を示すフィンランド産含Cr+V緑簾石族鉱物,ノルウェー産含Sc緑簾石族鉱物から高温下で偏光顕微ラマンスペクトルを収集する.スペクトル解析により,温度変化による断片化したナノフラグメントの挙動(例えば再結晶化や分解反応などの相変化)を明らかにし,結晶子フラグメント形成の原因とメカニズムにアプローチする.天然鉱物から得られた知見を再現実験にフィードバックすることで,より効率的に研究を進めることができる.本現象はいかなる結晶質固体物質にも発現すると考えられるので,同現象が出現する可能性がある他の鉱物種や合成材料について情報収集,試料収集などを精力的に行う.本課題で得られた成果や解決すべき問題などは学会発表などで周知し,専門家と意見を交換し研究の推進につなげたい.得られた結果は適宜論文として公表する.
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