Project/Area Number |
23K03561
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17050:Biogeosciences-related
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小林 憲正 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 名誉教授 (20183808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
癸生川 陽子 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70725374)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | アミノ酸 / 核酸塩基 / ガンマ線 / 隕石母天体 / 星間有機物 / 生命の起源 / アストロバイオロジー / 太陽系小天体 / 変成 |
Outline of Research at the Start |
隕石によりアミノ酸などの有機物が初期地球に運ばれ,地球生命のもとになった可能性が考えられる。しかし,現在の隕石中の有機物は,地球生命誕生時から約40億年たっており,実際に初期地球に運ばれたものと異なる。本研究では,まず星間や小天体内部を模擬した実験で「模擬隕石有機物」を合成する。これらや現在の隕石有機物が小天体や隕石中で放射線によりどのように変成したかを模擬実験(ガンマ線照射など)により調べ,隕石により初期地球に運ばれた有機物を復元する。また,初期地球上での有機物生成実験も行い,両者の比較を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
1.隕石有機物の生成の場の候補とされる小天体内部を模した実験により,星間起源の有機物(アミノ酸・アミノ酸前駆体・核酸塩基)の安定性・変成を調べる実験を行った。用いた出発物質は,種々のアミノ酸(グリシン,アラニン,α-アミノ酪酸,α-アミノイソ酪酸,バリン,イソバリン),模擬星間物質から陽子線照射により合成したアミノ酸前駆体(以後,CAWとよぶ),核酸塩基(アデニン,グアニン,ウラシル,チミン)である。 アミノ酸,CAW,核酸塩基を小天体内部環境を模したアンモニア水,もしくはホルムアルデヒド・アンモニアの混合溶液中で,コバルト60からのガンマ線を照射した。照射前後のアミノ酸(CAWは加水分解後)・核酸塩基の回収率を比較したところ次のことがわかった。 i) アミノ酸の回収率はCAWが最も高く,次いでGly, α-アミノイソ酪酸,イソバリン,バリン,α-アミノ酪酸の順であった。複雑な前駆体(CAW)の方が遊離アミノ酸よりも安定であった。また,遊離アミノ酸の中ではα-水素をもたない非タンパク質アミノ酸の方がα-水素を,もつアミノ酸よりも安定であり,前者が隕石中に多く検出されている理由のひとつと考えられる。 ii) 核酸塩基の中ではプリン塩基(アデニン,グアニン)の方がピリミジン塩基(ウラシル,シトシン)よりも安定であった。隕石中の検出量は,前生物的な生成可能性と隕石母天体中の安定性の両方に由来することが示唆された。 2.二酸化炭素, 一酸化炭素, 窒素, 水からなる模擬初期地球大気に太陽エネルギー粒子を模した陽子線を照射すると,アミノ酸前駆体が生成した。初期地球上での太陽エネルギーフラックス試算値から計算したアミノ酸生成量は「現在の」隕石中に存在するアミノ酸濃度から推定される地球外からのアミノ酸供給量よりも多いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた実験のうち,隕石母天体内部での有機物変成実験は当初の予定以上に進展し,現在の隕石中のアミノ酸や核酸塩基濃度との相関が見つかった。一方,星間環境を模擬した実験は,使用している東京都市大学のタンデム加速器の電流値が予定より低いため,次年度以降により高電流値の加速器の使用を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
1.隕石母天体中での有機物の変成は,液体(水溶液)が存在していた時期と,液体が消失した時期に分けて考える必要がある。前者は2024年度に進展したので,後者の検討も始める。また,隕石母天体中での変成による有機物濃度減少とは別に,隕石母天体中での有機物生成も調べる。また,隕石母天体中でのアミノ酸のラセミ化速度を調べ,現在の隕石中でのアミノ酸エナンチオ過剰率から40億年前の値を推定する。 2.隕石母天体中での主要な放射性元素(アルミニウム26, カリウム40, ウラン238など) からの線量を推定することにより,上記の変成実験の結果と,現在の隕石中のアミノ酸等の濃度から,40億年前の濃度を復元する。以上の結果をもとに,40億年前の初期地球上での有機物生成と隕石による有機物供給量との比較を行う。 3.現在の隕石有機物の変成実験を行い,その結果を逆方向に外挿することにより,40億年前の隕石有機物の復元をめざす。
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