Project/Area Number |
23K03564
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17050:Biogeosciences-related
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
入月 俊明 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (60262937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 敦子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (20467848)
辻本 彰 島根大学, 学術研究院教育学系, 講師 (60570554)
岩谷 北斗 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (60845452)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 貝形虫 / 紀伊水道 / モダンアナログ法 / 田辺湾 / 完新世 / 紀伊半島 / 有孔虫 / 相対的海水準変動 / 第四紀 |
Outline of Research at the Start |
紀伊半島沿岸域は,現在,極めて高い生物多様性を示し,また,いくつかの底生生物にとって紀伊半島先端は生物地理学的境界や固有種の生息域になっている.さらに,この地域はプレート境界型地震と津波による大災害が危惧されている.このように紀伊半島周辺域は,生物学・地球科学的に鍵となる場所である.そこで,本研究の目的は,この海域における黒潮の動態に直接関連し,地質学的構造運動も記録している第四紀更新世後期と完新世の相対的海水準変動や古環境を従来よりも高い精度で復元することであり,そのために微化石(”原生生物”の有孔虫や甲殻類の貝形虫)の現生アナログ法などをベースとした新たな古水深推定法を開発し適用する.
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Outline of Annual Research Achievements |
紀伊半島周辺での相対的海水準変動を復元するための基礎データとして,今年度は紀伊水道におけるこれまでの調査結果に基づき,現生貝形虫の群集分析を行った.試料は2021年12月6日から10日に産業技術総合研究所地質調査総合センターにより実施されたGKC21航海にて採取された表層堆積物26試料と2地点(全17層準)の表層コアの計43試料を使用した.結果として,65属121種の貝形虫が抽出され,紀伊水道の貝形虫生物相の水平分布の実態が初めて明らかになった.この貝形虫群集のクラスター分析を行った結果,貝形虫相の水平分布は黒潮由来の外洋水によって制御されていることが判明した.表層コアについてモダンアナログ法による古環境解析を適用した結果,紀伊水道奥部はその堆積期間を通してほとんど変化のない安定した堆積環境であることが判明した. 上記の調査地点には,沿岸の浅い地点が含まれていないため,2023年11月21日に和歌山県田辺湾の水深約8 mから31 mの範囲の12地点からスミスマッキンタイヤー式採泥器で表層堆積物の採取を行った.同時に水深ごとの水温,塩分,電気伝導度を測定した.これらについては現在試料処理と貝形虫・有孔虫個体の抽出作業を行なっている. 完新世の堆積物コアに関する研究では,GKC21航海にて紀淡海峡に近い水深31.2 m地点において採取されたコアの貝形虫分析を行った.結果として,コア試料から40属94種の貝形虫が識別された.因子分析を行った結果,第4因子までの累積寄与率は85.7%で,各因子が示す古環境を特定した結果,古水深に2回のピークが見られることや100年前以降人為的汚染の影響が顕著になったことなどが明らかになった.一方,大阪湾と上記の紀伊水道の現生貝形虫群集データを元にモダンアナログ法を適用した結果,約4000年前に急激な古水深の増加があったことが推定された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
紀伊半島周辺における表層堆積物については,当初予定していた紀伊水道側に位置する由良湾での採取を行うことはできなかったが,和歌山県田辺湾では京都大学瀬戸臨海実験所の協力を得て,予定通り採取を行うことができ,現在,表層堆積物と中に含まれる貝形虫と有孔虫の分析を計画通り行なっている. 紀伊水道の表層堆積物に関しては,既に貝形虫分析は終了段階に入っており,2023年9月の日本地質学会で成果を一部発表した.紀淡海峡近くで採取されたコアについては,貝形虫の分析がほぼ終了し,2023年10月の汽水域研究会で貝形虫の分析結果を発表した.このコアについては,現在,堆積物の粒度分析,CNS元素分析,年代値の再検討をおこなっている.また,当初予定になかった和歌山平野の陸域で掘削された完新世コアに関しても有孔虫と貝形虫の分析を行うことができ,結果をまとめているところである. このように,2023年度に予定していた研究について,総合的には概ね順調に進んでいると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
今後については,まず,和歌山県田辺湾で採取した表層堆積物について,貝形虫・有孔虫分析,粒度分析,CNS元素分析を速やかに行い,解析結果をまとめる. 紀淡海峡付近で採取されたコアについては,引き続き,堆積物分析を行い,年代を確定し,紀伊水道の現生貝形虫群集の結果とともに論文化を進める. また,2024年度には新たに熊野灘に面した紀伊半島沿岸の内湾(玉ノ浦,尾鷲,志摩周辺などが候補地)における表層堆積物の採取を行うこと,紀伊半島の陸上に露出する更新世の地層の調査と微化石試料採取を行うこと,伊勢湾及び周辺の平野(瀬戸内地域など)で採取されたコアの完新世と更新世の層準について,高時間分解能で貝形虫・有孔虫分析を行うことを目標に研究を行う. さらに,これらと並行して,既存の日本周辺の内湾における貝形虫と有孔虫の現生群集データを取集し,データベースを更新し,新たな古水深推定法の検討を進める. これまでの成果をまとめ,日本古生物学会,日本地質学会,汽水域研究会などの関連学会で発表を行う.また,国内外の学術雑誌への投稿を行う.これらの分析結果に基づき,第四紀の紀伊半島周辺における相対的海水準変動と古環境変化を復元し,当初の研究目的を果たす.
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