Project/Area Number |
23K03922
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 21050:Electric and electronic materials-related
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大野 玲 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任准教授 (70397058)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2026: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2025: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | 有機半導体 / 秩序パラメータ / 空間相関 / ソフトマター / ディスオーダーモデル / モンテカルロシミュレーション / 量子化学計算 / 分子動力学 / 電荷輸送モデル / 計算機シミュレーション / π電子 |
Outline of Research at the Start |
薄膜プリンタブルエレクトロニクスで用いられる有機半導体材料においては、同じ材料であっても成膜プロセスや凝集秩序構造に応じてその電荷輸送特性が著しく異なる。そこで秩序形成がどのように電荷輸送を支配するか相関を明らかにする電荷輸送論を、実験事実と分子動力学・量子化学計算に基づき個別に解明すると同時に、構造秩序によって空間相関を有するディスオーダが支配する電荷輸送モデルを構築する。本モデルに基づく材料特性を評価・解析し、材料・プロセスの豊富な選択の中から、電荷輸送を予測して、デバイス機能に合わせた分子設計とプロセス選択の幅を広げ、最適化を促進するプリンタブルエレクトロニクス材料指針を提案する。
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Outline of Annual Research Achievements |
有機半導体はフレキシブルであることが特徴の一つであるが、その柔軟性を反映した構造秩序性が電荷輸送にどのように影響するか明らかではない。我々は初年度において、有機半導体の分子内の構造・振動準位や振電相互作用が影響する動的ディスオーダーと、系全体の構造秩序性そのものが影響する静的ディスオーダーがどのように相関し、電荷輸送に影響を与えているのか明らかにするため、両者を取り入れたモデルの構築を行った。 すなわち電子移動については分子内振動準位間の遷移を考慮した核トンネリングモデルに従い量子電荷移動速度式を用いた動的ディスオーダーを考慮し、一方で基底準位についてはエネルギー準位の分布がガウス型分布であるとして、空間相関のある静的ディスオーダーを考慮したモデルを当該初年度前半で構築した。しかし、このモデルを過去の有機半導体の過渡光電流測定による移動度の電場・温度依存性の測定結果と比較すると、多くが低温領域と高温領域とでプールフレンケル型から弱い負の電場依存性に変化するが、今回のモデルを用いて温度領域全体の挙動を説明することはできなかった。 一方で我々は、並進秩序パラメータと、配向秩序パラメータについて、構造秩序の変化によりエネルギーのディスオーダーが変化するモデルを構築した。そこで、当該年度後半より、構造秩序の静的ディスオーダーへの影響はエネルギーへのディスオーダーだけではなく、空間相関そのものに影響する新たな理論を構築し、秩序パラメータを空間相関の変化に導入するモデルを開発することに成功した。現在本モデルを実験データと比較検証し、低温から高温に至るまで移動度の電場依存性を統一して説明できること、さらに分子動力学と量子化学計算との連携による電子輸送シミュレーションと比較し検証を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の研究は予定としては静的ディスオーダーと動的ディスオーダーを両方取り入れた新規ディスオーダーモデルの構築であった。液晶については構造秩序性が静的ディスオーダーに影響するモデルが出来ていたので、高分子において配向秩序パラメーター、並進秩序パラメーターとキャリア―双極子相互作用の静電ポテンシャルによるエネルギーのディスオーダーとの関係を明らかにすることができた。 一方ディスオーダーモデルについては、当初は初年度前半で、新規ディスオーダーモデルの基本モデルを作成し、併せてモデル有機分子について、実験データ、及び分子動力学と量子化学計算に基づく電荷輸送シミュレーションとの比較検証を行い、秩序パラメータが確かに静的ディスオーダーを制御し、電荷輸送と特性を特徴づけているのか明らかにして、基礎モデルの構築を完成させる予定であった。 しかし当初のモデルではこれまでの過去の実験データに対して、限られた温度領域での移動度の特性を個別に説明することはできても同じパラメータを用いて全領域について統一して説明することができなかったため、本年度後半は検証を行うことを中断し、秩序パラメータが直接空間相関に影響するモデルの構築を行うことになった。したがって各論検証として予定していた分子動力学と量子化学計算を取り入れたVOTCA-CTPを用いた電荷輸送シミュレーションとの比較検証の進捗が遅れている。 とはいえ、空間相関について構造秩序との関係を明らかにできるモデルが構築はこれまでにない、初めてのモデルであり、新しい発見であった。したがって予定の進捗状況としては70%にとどまり予定変更となったが、新規発見を伴ったため、今後新たな進展が期待できる結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において、構造秩序について並進秩序パラメータと空間相関の関係を明らかにする新たな展開があり、これを導入した新規モデル構築を行ったため、まず、本新規モデルに基づき、実験データとの検証、分子動力学・量子化学計算を直接用いたモデルとの比較検証を行う。本年度はモデル分子について、既存の実験データを、我々が開発した新規解析モデルで改めて解析し、一方で、分子動力学、量子化学計算を取り入れてポーラロン結合エネルギー、トランスファー積分を計算する。分子動力学を用いて分子配置のスナップショット上を電荷が遷移する電荷輸送をシミュレートするモデルパッケージVOTCA-CTPを用いて検証を進める。 既存の実験データなどを改めて我々のモデルで解析するのは、実験データにはトラップなどの外因的要素による影響も考えられるため、我々が開発したトラップ密度解析モデルを取り入れて検証しなおす必要があるためである。一方でモデル分子について分子動力学計算を行い、VOTCA-CTPによる電荷輸送シミュレーションを実施する。あわせて分子動力学シミュレーションで生成したスナップショットから並進、配向などの秩序パラメータを導出し、新規ディスオーダーモデルを実施して電荷輸送特性を比較することによって、確かに新規モデルに従って構造秩序変化が移動度の温度、電場依存性を制御するのかを明らかにする。
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