小断面木材の積層と弾性曲げで形成する格子状空間構造の座屈耐力評価
Project/Area Number |
23K04124
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 23010:Building structures and materials-related
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
山下 哲郎 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (80458992)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,860,000 (Direct Cost: ¥2,200,000、Indirect Cost: ¥660,000)
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Keywords | ラチスシェル / ベンディングアクティブ / 座屈 / 形状解析 / 木質構造 / 座屈実験 / 積層 / 木材 |
Outline of Research at the Start |
本研究はFrei Ottoにより開発された曲げ積層ラチスシェル構造の座屈特性と耐力評価を研究対象とする。この構造は小断面の木材を弾性域で曲げ、積層して曲面を形成するもので、魅力的な外観、間伐材等の小断面木材が利用可能、複雑な接合部がない、建設に大型重機が不要など多くの利点を有する。一方、設計時には初期曲げ応力が釣合う形状を求める解析が必要で、かつシェル状構造では最も危険な座屈崩壊を防止する必要がある。ここでは一般的な有限要素解析コードでも形状解析と座屈解析を続けて実施できる方法を開発し、かつ座屈実験を併用して解析手法を検証するとともに、座屈特性を明らかにして構造設計者の知見に供する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度においては、杉のベンディングアクティブの木造籠目格子シェル試験体を設計・製作して座屈実験を実施し解析結果と比較した。試験体は約2mスパンの小型の単層ラチスシェルと、約5mスパンの単層・複層の2体のラチスシェルであり、周辺に鉄骨のテンションリングを設置し、境界条件を明快にするためユニバーサルジョイントでシェルの木材と鉄骨を接合した。断面寸法11mmx60mmの薄く細長い杉の製材を弾性域で曲げて籠目格子を形成し、重なる部分(接合部)は貫通ボルトで固定しさらに木材相互の滑りを防止するため摩擦材を挿入した。。複層試験体は部材を2層重ねて構成し、部材中間のシアブロックにて2層の木材を貫通ビスで接合している。ライズスパン比は木材の初期曲げ応力度が長期許容応力度以内となるよう、小型試験体では0.10、大型試験体では0.13とした。全部材の曲げ剛性とねじり剛性を曲げ+ねじれ振動の固有振動数より同定した。 形状解析では籠目格子シェルの初期形状を球形に仮定して部材長と境界位置を定めた後、非線形解析で曲げ釣合形状を求めて接合部の位置を定めた。試験体の形状は解析形状と面外方向に全試験体でスパンの1/200程度の差を生じた。 座屈実験ではトーナメント式加力装置により鉛直静的載荷を実施した。変形は非接触3D座標計測システムと変位計、荷重はジャッキのロードセルで計測した。座屈解析は初期曲げに伴い生じる初期応力を考慮して実施した。小型試験体では実験で得た座屈荷重は解析結果と良好に一致したが、大型では単層試験体で実験結果は解析結果の62%、複層試験体で56%と大きく乖離した。複層試験体では座屈直前に多くのきしみ音が生じ、座屈後に座屈部付近で接合部とシアブロックに滑りが観察されたため、モデル化に考慮されていないせん断滑りが座屈荷重を大幅に押し下げた可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の最終的な目標は、ベンディングアクティブの籠目格子シェル構造を安全に設計する方法を確立、提案することであり、2023年度は当初の予定通りベンディングアクティブ木造籠目格子シェルの形状形成と座屈実験を実施できた。しかしながら実験と解析には予想以上に大きな乖離が生じ、まずはその原因を究明する必要があり、そのための課題は多く、また現時点では予算の目途はないものの再実験も実施したい。次の段階である、主に解析による座屈特性や部材応力の詳細な分析、形成された形状と座屈特性の関連など、構造設計に関連する研究はその後本格的に実施することとなる。従って「やや遅れている」と判断した
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度においては、まず2023年度に実施した実験と追解析のデータを分析し、特に大型試験体で単層・複層ともに実験で得た座屈荷重が解析結果と大きく乖離する原因を究明する。 単層試験体では、小型試験体の座屈荷重は解析と実験は良好に一致したものの、大型試験体では実験の座屈荷重は解析の約6割であった。乖離の原因として1)組み上がったラチスシェルの面外方向にスパンの1/200程度の解析との形状の誤差があり、初期不整として座屈を誘発した可能性がある。2)弾性梁要素で構成された解析モデルに試験体の力学的特性が反映されていない、などが考えられる。前者については、解析形状からの乖離の原因をまず施工誤差と仮定し、感度解析を用いて分析する。すなわち、部材全長、接合部と境界節点の位置、部材剛性に誤差を有するとして、解析で影響の大きな要因を抽出する。木材の弾性剛性のばらつきの影響については、鋼材など弾性剛性のばらつきの小さい材料を用いた別の小規模模型を製作して3Dスキャナなどで計測し、再度形状解析の精度を確認する。 複層試験体でも試験体の形状と解析結果に同程度の差が生じたが、こちらは形状解析のモデルおよびプロセスと実際の施工方法が若干異なる。実際の施工方法を反映した形状解析のモデル化と方法を検討する。また複層では座屈直前に座屈部付近で複数の接合部とシアブロックで滑りが観察されており、座屈解析における滑りのモデル化が必要である。またモデル化のため別途要素実験も実施する。 また、形状解析では初期形状を球形と仮定し、そこから釣合形状を探索しているが、釣合形状では微小ではあるが部材の面内曲げも生じ、施工性に問題を生じた。そこで曲面の測地線に注目し、釣合曲面上の部材がすべて測地線に沿い、部材が完全に一方向曲げのみでラチスシェルを構成できる形状となるよう、形状解析法を改良・発展させる。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)