Project/Area Number |
23K04151
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 23020:Architectural environment and building equipment-related
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
大橋 巧 摂南大学, 理工学部, 准教授 (80625921)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 温室効果ガス / カーボンニュートラル / 非住宅建築物 / CO2排出係数 / DECC |
Outline of Research at the Start |
建物の電力消費に係わるCO2排出量の算定は、年間を通して同一の排出係数が用いるのが通例である。しかし実際の係数は稼働する電源の構成により時々刻々と変化し、また建物用途により時刻別消費特性も異なることから、これまでの算出法では真の環境価値評価が困難となる可能性がある。本研究はこの問題解決のため、時刻別のCO2排出係数を独自に試算した上で、地域別、建物用途別に非住宅建築物の環境性能評価を試みる。また再エネの将来導入予測を踏まえ、本評価法による各種予測分析や再エネ普及に向けた課題の可視化を行う。これらは実効的な脱炭素化の道筋を得たい建物所有者のみならず、国の脱炭素戦略にも欠かせないプロセスとなる。
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Outline of Annual Research Achievements |
脱炭素社会の実現に向け、業務部門のCO2排出量削減が喫緊の課題となる中、建築物の電力消費に関わるCO2排出量は、電気事業者が毎年公表する基礎排出係数等、年間を通して同一の排出係数を用いて算出されるのが一般的となっている。しかし実際の排出係数は稼働する電源の構成により時々刻々と変化しており、今後、出力変動が大きい太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーの普及が進むと、その変動もさらに大きくなると予想される。また建築物のエネルギー消費量も時間とともに変化しており、建物用途や地域によってその消費特性も異なることから、従来の算出法ではCO2排出量の適正な評価が困難となる恐れがある。これを踏まえ2023年度は下記の研究を実施した。 1)連系線強化の動向を鑑み、連系線潮流分も加味した全国9エリアの時刻別CO2排出係数を推計した。なお推計年度は、資源エネルギー庁による2030年度におけるエネルギー需給の見通しにおいて2019年度を電源構成等の実績値として示していることを考慮し、2019年度とした。結果、再エネや原子力稼働率の変動が大きい北海道や九州で、CO2排出係数の月変動も比較的大きいこと、また、どの電力エリアでも再エネの発電比率が高まる日中において、時刻別CO2排出係数は大きく減少し、特に再エネの稼働率が高い九州で顕著であることなどを明らかにした。 2)全国の非住宅建築物のエネルギー消費量を網羅的に収録したDECC公開用データベース、および1)で算出した係数等を用い、非住宅建築物のうち主要用途の時刻別CO2排出量を、地域別に評価した。結果、電力分の年間CO2排出量を従来法と比較すると、最大で九州の事務所において-3.2%の誤差が発生すること、CO2排出量のピークは、日中ではなく電力需要が多くかつ再エネ発電の出力が低下する夕方の時間帯に集中することなどを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画どおり、全国9つの電力エリアにおいて、時刻別CO2排出係数を独自に推計し、平均的なエネルギー消費量の非住宅建築物を想定し、建物用途別・地域別に時刻別CO2排出量の評価を行った。当初、この評価が一般化し環境性能評価悪化を回避するインセンティブが建物所有者側に働くことになれば、VPP(バーチャルパワープラント)やDR(ディマンドレスポンス)拡大の後押しに繋がることを期待した。一方で、近年の夏期の電力需給ひっ迫は、電力需要が多くかつ再エネ発電(特に太陽光発電)の出力が低下する夕方の時間帯に発生する傾向があるが、「研究実績の概要2」」で示したとおり、本評価法での非住宅建築物のCO2排出量のピークはこの時間帯と一致する結果となり、VPPやDRの普及だけでなく電力需給ひっ迫の直接的な緩和にも寄与できる可能性が示唆された。 以上を鑑み、「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、当初計画どおり再生可能エネルギー拡大時の将来予測分析を行う。予測年度は2030年度とし、はじめに国の第六次エネルギー基本計画や環境省が示す再生可能エネルギーの導入ポテンシャル量などを参照し、2030年度時点の電力エリア別の時刻別電源構成を予測した上で、時刻別CO2排出係数を推計する。次に推計した係数を用い、建物用途別、地域別に非住宅建築物の時刻別CO2排出量の評価を行う。 また、国の第6次エネルギー基本計画で描かれる2050年のエネルギー需給構造は、「民生部門では、電化が進展するとともに、再生可能エネルギー熱や水素、合成メタンなどの活用により脱炭素化が進展する。」とされるが、非住宅建築物における電化がCO2排出量に与える影響を分析する研究事例は少ない。長期的には水素、合成メタンなどの活用が期待されるが、本研究では非住宅建築物の電化がCO2排出量に与える影響について、時刻別CO2排出係数を用いた分析を行う。
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