Project/Area Number |
23K04218
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 23040:Architectural history and design-related
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
内田 青蔵 神奈川大学, 建築学部, 教授 (30277686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
姜 明采 神奈川大学, 建築学部, 助教 (30966693)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 一匡邑 / 一匡社 / 大学村 / 西村伊作 / 蒲原重雄 / 理想郷 / 北軽井沢 / 草軽電鉄 / 北軽井沢別荘地 |
Outline of Research at the Start |
明治後半以降、人口の都市集中による住環境の悪化の中で、鉄道を利用した郊外住宅地開発が開始された。イギリスで起こった田園都市運動の影響もあって、郊外住宅地の開発は理想的な住まいと生活の追及へと派生していった。 一方、お雇い人外国人として来日したドイツ人医師のベルツは、健康維持のために避暑生活や避寒生活の必要性を説いた。こうした主張もあって、やがて、都心部から離れた日光や軽井沢などの別荘地開発が行われた。本研究は、避暑地や理想的住宅地として開発された北軽井沢の一匡邑の分析を通して、わが国近代化の中で求められた生活と住まいの様相を明らかにするものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、具体的な調査対象地区として草軽電鉄の開発した「吾妻別荘地」と「一匡邑」を挙げている。このうち、「吾妻別荘地」は、その後、紆余曲折を経て「大学村」として実現した。 さて、今年度は比較的小規模の住宅地であり、また、その存在がほとんど知られていない「一匡邑」を調査対象として研究を進めた。その結果、「一匡邑」は、1913年に国家の振興を目指して誕生した「一匡社」のメンバーにより開設された別荘地であったこと、「一匡社」機関誌『社会及国家』によれば、個人主義的な所有欲を排除した理想郷としての共同村がめざされ、開邑当初は水道も電気も未整備の中で相互扶助の主義のもとで共同生活が行われていたことが明らかとなった。 また、別荘建設にあたっては、建築家の西村伊作が設計を担当したこと、また、その西村の担当には「一匡社」のメンバーと懇意にしていた谷崎潤一郎の関与が考えられることが明らかとなった。そのため、西村の設計意図を明らかにするため、創建時のものといわれる3棟の別荘建築の実測調査を行い、間取りを採取した。この3棟は、水回り部分の増改築のため正確な復原は難しいものの、ほぼ創建時の姿を確認することができた。その間取りは、台所と便所、1階に居間、2階に寝室の個室という極めてシンプルなもので、まさに西村が理想的住宅として主張していた居間中心型のバンガロー形式の住宅といえ、かつ、住宅の諸室の寸法も西村の主張に沿ったものであったことが確認された。 なお、「大学村」に関しては、山荘(別荘建築)の設計は建築家の蒲原重雄が担当したことが知られているが、目視調査によれば茅葺き屋根の山荘も多数存在している。このことから、「大学村」全体の目視による悉皆調査を行い、開設当初と考えられる山荘の残存状況を確認した。これらの山荘に関しては次年度実測調査を実施し、その特徴を明らかにしたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本、研究開始時に予定していた調査を行い、その研究成果も得ている。ただ、今後、山荘などの建物の実測調査などを行う際に、スムーズに調査を実施できるかどうかは不明であり、そのためには、文献調査などに重きを置いて研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
「一匡邑」の調査は順調に進んでいる。今後は、「一匡邑」の母体である「一匡社」の活動ならびに、その求めていた理想郷のイメージをより明快に分析する必要がある。加えて、「一匡社」のめざしていた理想郷と当時の提示されていた理想郷との比較を行い、その特徴を整理したい。 また、今後は、「一匡邑」の直後に隣接地に計画された「大学村」の調査を進めたい。 「大学村」の敷地は、草津電鉄株式会社の大正末期頃の作成と推定される「吾妻別荘地平面図」の一部であり、当初の計画の変更後の昭和3年に法政大学松室致学長の所有地を分譲した「法政大学村」を母体に発展したものである。ただ、その計画変更の経緯は不明であり、こうした開発の経緯を明らかにしたいと考えている。あわせて、法政大学学長の松室が司法大臣であったことから部下の建築技師・蒲原重雄に山荘の設計を依頼し、開設当時の多くの山荘を手掛けている。このため、「大学村」の調査として、蒲原設計の山荘の実測調査を予定し、蒲原の手掛けた独特の山荘のデザインを通して、大学村のめざしていた別荘地の特徴を整理してみたいと考えている。
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