Project/Area Number |
23K04359
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 26010:Metallic material properties-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
弓削 是貴 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70512862)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2026: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 統計力学 / 情報幾何学 / 確率熱力学 / トロピカル幾何学 / 非線型離散系 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、熱平衡状態の合金の性質と原子間相互作用の関係が持つ複雑な非線型性を解明するため、最初の3年で多様な幾何学や情報理論を統計力学と融合し、非線型性を多角的に理解・記述できる新たな学理「幾何統計力学」を構築する。確率熱力学のアプローチを組み込み、ゆらぎを含めた非線型性の詳細な発展の定式化および非線型性と熱力学関数の関係を明らかにする。2年から最終年では、幾何統計力学の知見を用いた応用として熱平衡状態の性質の高速計算手法や相互作用逆予測手法の開発の基礎確立、および現実系の非線型性の振る舞いを記述する良いモデルを構築し、非線型性の効果的な制御因子の解明や発現機構の構造依存性の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、離散幾何学・情報幾何学や確率熱力学などを統計力学と組合せ、従来は定式化が困難であった非線型性の構造自由度間のもつれからの寄与について、その熱力学的な扱いを可能にするための基礎理論構築に着手した。もつれを表す系では配位空間上の状態密度(CDOS)が一意に定まらないため、統計多様体上でそれと同じe-平坦な部分空間に属し、CDOSおよびそれに対応する熱力学関数が定義可能な別の系を用意し、その系の(擬似的な)もつれの熱力学的な定式化、および擬似的な系ともつれ系の差がカノニカル写像と自由度分離操作の非可換性に対応するように擬似系を選択することで、もつれの熱力学的な記述に成功した。その結果、自由度間のもつれは(ある特定の条件の下で得られる)系の自由エネルギーによりboundされることを明らかにした。この自由度間のもつれは非局所的な非線型性の情報であり、局所的な非線型性に対応するベクトル場とは非自明な相関を持つことが分かっている。様々な系に対するもつれの性質を見通しよく理解するために、配位空間を(動的モード分解から得たベクトル場の特徴的な情報に基づいて)粗視化したモデルを用いて、結晶中の配位数変化に伴うもつれの変化を、もつれを有する系と仮想的にもつれの無い系の配置多面体間のHausdorff距離に基づいた解析を行った。その結果、配位空間状態密度が自由度分離可能な条件を境に、平均的なもつれとHausdorff距離の相関の符号が入れ替わること、および配位数の差が大きい系ほどもつれの平均は高くなる傾向にあることを明らかにした。これらの結果は、平均的なもつれは配置多面体の幾何学形状と密接な関連が有り、その相関は自由度分離可能条件を跨いで異なる依存性を示すことが強く示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗状況は概ね順調である。具体的には従来は解決が困難と予想された非局所的な非線型性の熱力学的な記述については、代替系をうまく用意して熱力学的に記述可能な擬似的もつれを導入し、代替系と元の系との差を2つの写像の非可換性としてKullback-Leibler divergenceの形で定量化できたことにより、初めて定式化に成功した。したがってもつれの熱力学的な記述には非可換性の振舞いの理解が追加で必要になるが、これは写像同士の性質から、対象の系ともつれの無い仮想系の配置多面体の幾何学形状でその平均的な振る舞いが捉えられることが予想され、実際に幾つかの単純な数理モデルでは予想に従う振る舞いを示している。同様にもつれについても幾何学形状の差を定量化したHausdorff距離に基づいて平均的な振る舞いが特徴付けられることも明らかになり、これまでは局所的な非線型性と非自明な相関を持っていた非局所的な非線形性を、従来よりもかなり見通しよく体系的に理解できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで用いてきた数理モデルは配位空間を局所的な非線型性に対応するベクトル場の特徴的な振る舞いを基に粗視化したものであったので、この粗視化の過程が元の非線型性に与える影響を系統的に調べる。また、熱平衡状態およびその近傍でのゆらぎを含む構造の情報から原子間多体相互作用の逆予測や、熱平衡状態の構造の高速計算のためには、ゆらぎの情報を含めた、「複数の原子配置」に対する非線型性の熱力学的な理解をさらに進める必要がある。このために、まず系のCDOS自身の持つ有効ランクと自由度間のもつれや非可換性との関係を、結晶中の幾何学的情報(配位数や高次のリンクの情報など)に基づいて定式化する。また、熱平衡状態の性質の高速計算の適用範囲を従来の高温から、より低温領域に拡張するために必要な、不規則状態と規則状態のもつ非線型性の関係を明らかにするために、非線型性の熱力学変換に伴う系のGibbs状態のCDOS形状依存性を、非線型性の遷移行列の固有値解析などを中心に系統的に行う。
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