Project/Area Number |
23K04377
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 26020:Inorganic materials and properties-related
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
土井 貴弘 東邦大学, 理学部, 准教授 (20359483)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | メリライト / フレスノイト / 低次元化合物 / 結晶構造解析 / アニオン不定比性 / 構造相転移 / 磁気的性質 / 遷移金属化合物 / 複合アニオン化合物 / 物性 |
Outline of Research at the Start |
特異な磁気的・誘電的性質を示すことで知られるメリライト、フレスノイト型構造の化合物を対象として、化学的な手法を用いて物質を構成する陽イオン・陰イオンを効果的に変えた新規化合物の合成を試みる。注目した2つの構造はお互いに良く似ているが、物性を決定づける対称性や配位環境に大きな違いがあるため、わずかな化学組成や外的要因の違いによって構造と物性が大きく変化する性質など、新たな機能性材料に繋がる可能性がある。最終的に、この物質群における結晶構造-化学組成-物性の関係性を明らかにすることを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、メリライト型構造を中心とした低次元化合物を対象に新物質探索や化学組成制御を行い、化合物中の遷移金属イオンの示す挙動の理解や新たな材料となる可能性を持つ物性の発見を試みている。初年度の成果として以下の実績を上げた: 【メリライトの酸素吸放出挙動】メリライト型酸化物を対象に、酸化・還元によるアニオン量の制御を試み、A2MnM2O7+δ(A = Sr, Ba, Sr1-xBax(固溶体)、M = Si, Ge)の合成と詳細な熱重量分析を行った。化学組成により、酸素吸放出量(δ= 0.2~0.5)、吸放出温度(400~1000℃)、水素還元の可否など特性が大きく異なることを見い出した。 【フレスノイト型化合物の合成と磁気的性質】アニオンとして酸素とハロゲンを含むフレスノイト型化合物 Ba2MSi2O7X(M = 遷移金属; X = ハロゲン)の合成を試みた。塩素化合物は、磁気測定の結果、二次元正方格子モデルに従う低次元磁性を示すことを見いだした。まだ、第一原理計算により、従来の酸化物メリライトと比べ、著しく超交換相互作用が強くなっていることを明らかにした。一方、他のハロゲンの導入は困難であり、特にフッ素、臭素置換については様々な合成方法を試みたが目的物質は得られなかった。 【酸素不定比性を持つ鉄化合物の構造変化と物性】類似の酸素不定比性を持つBa3LnFe2O7.5+δ(Ln = ランタノイド)に対して、酸化・還元による構造変化と物性を調べた。TG-DTAと粉末X線回折、57Feメスバウア分光により、この物質の2種類の結晶構造を明らかにし、それぞれの構造中に存在する2種類のFeサイトの酸化状態や配位構造が大きく変化することを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、メリライト関連化合物に対する効果的な合成法や可能な組成範囲に関する知見を得ること、および、その結晶構造-化学組成-物性の関係性の理解を深め、新たな機能性材料に繋がる発見やその特性を高めるための物質探索指針を得ることにある。 初年度は、重要な基礎データであるメリライト関連化合物の酸化還元特性の詳細を明らかにすることに成功している。この成功を元に次のステップとして、化学組成の変化、真空封入による閉じた系における合成、トポタクティック酸化・還元、オゾン酸化などへの展開を開始している。 また、メリライトと対になる構造であるフレスノイトについては、物性研究について進展が見られた。ただし、フレスノイト側から還元、アニオンの引き抜きは困難であることが明らかになりつつあり、解決策を模索中である。 さらに、類似の特性を示す鉄化合物 Ba3LnFe2O7.5+δの合成、結晶構造と酸素不定比性の解明が進み、次の段階として物性を明らかにするため、現在、磁気特性の測定実験に着手している。 以上にように、概ね順調に研究が進んでおり次の段階へと進んでいるが、一部には課題も見えておりその解決のための実験にも着手している状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
メリライト型化合物 A2MnM2O7+δに関しては、酸素過剰量δに対し当面の限界値である0.5を超え1.0に近づける試みを継続する。手法としては、化学組成の変化、真空封入による閉じた系における合成、トポタクティック酸化・還元、オゾン酸化を想定している。現在、部分的なハロゲン置換により、Mnの酸化状態を大きく変えずにアニオン総量を増やすための実験を進めている。結果を見ながら、各手法を試みていく計画である。また、新規合成に成功しているオキシ硫化物メリライトに関してはデータを取りまとめ、論文化を進める。 フレスノイト型化合物 A2M'M2O8 に関しては、還元が困難なことが明らかになりつつある。そこで、既知化合物より還元しやすい化学組成を持つ物の新規合成を探索し、もし得られれば様々な還元方法を適用して、メリライト組成へ近づけることを目指す。 類似の酸素不定比性を持つBa3LnFe2O7.5+δ(Ln = ランタノイド)に対しては、酸素不定比性や酸化体・還元体それぞれの構造に関して全容が明らかになりつつあり、今後は物性測定を中心に行う予定である。特に、還元体中のFeイオンは2つの結晶学的サイトを持ち、その片方は理想的な一次元鎖を形成しており、特徴的な磁化率挙動の原因に対して理論的な解明も進めていく予定である。
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