PMMA/シリカナノコンポジットにおけるTgの発現メカニズムの分子論的解明
Project/Area Number |
23K04393
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 26030:Composite materials and interfaces-related
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
久保山 敬一 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (50323788)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | PMMA / タクチシティ / ガラス転移温度 / 静電相互作用 / 分子動力学計算 / ポリメタクリル酸メチル / コンポジット |
Outline of Research at the Start |
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)は、薄膜やコンポジットの研究において、基板やフィラーとの相互作用の強い試料として多くの研究に使用されてきた。これまでに、薄膜やナノコンポジットにおいてTgが上昇することは報告されてきた。しかしながら、PMMAはそもそもそれ単体であっても、タクチシティによってそのTgは著しく異なることが知られているが、そのメカニズムの詳細は明らかではない。そこで本研究ではまずPMMA単体のTgのタクチシティ依存性のメカニズムについて、分子動力学計算を用いることで明らかにする。さらにその知見をもとに、コンポジットのTg上昇メカニズムを解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
PMMAはガラス転移温度がタクチシティに大きく依存することが知られている。PMMAやポリ-α-メチルスチレンのようにビニル高分子のα炭素に水素以外の置換基がついている場合には、ガラス転移温度がタクチシティに依存するのに対し、それ以外の多くの場合(たとえばポリスチレン)、タクチシティには依存しないことが報告されている。PMMAの場合、これに加えて分子鎖間に静電相互作用の影響があることが予想されたが、これに関する報告は少ない。そこで本研究では全原子分子動力学計算を用いることにより、ガラス転移温度のタクチシティ依存性に対する静電相互作用の影響について検討した。アイソタクチックPMMA(it-PMMA)とシンジオタクチックPMMA(st-PMMA)について、静電相互作用を考慮した場合としていない場合でガラス転移温度を比較したところ、両者ともに静電相互作用がガラス転移温度の上昇に寄与していることが明らかとなった。両者の静電相互作用エネルギーを比較したところ、st-PMMAの方がit-PMMAよりも低かったが、静電相互作用エネルギー全体に対する両者の差は比較的小さかった。PMMA分子鎖間の相互作用としてカルボニル基間の静電相互作用を予想した報告があるが、分子間・分子内それぞれについて静電相互作用している部位を検討したところ、it-PMMA、st-PMMA共に、カルボニル基間の相互作用はほとんど無いことが示唆された。また、静電相互作用に関与していると考えられるカルボニル酸素と他の原子間の距離の分布について検討した結果、エステルメチル基と静電相互作用していることが示唆され、タクチシティの違いにより、若干、その分布にも差がある結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子動力学シミュレーションを行うことにより、実験的に検証することが困難な内容、すなわちガラス転移温度に対する分子内・分子間の静電相互作用の影響や、分子内・分子間の近接原子の検討から、相互作用部位の検討を行った。これまでにタクチシティの異なるPMMAの分子動力学シミュレーションに関する報告はあるものの、静電相互作用の影響について検討したものはほとんど無く、今回その影響について明らかにすることができた。 これらの結果は力場に依存する可能性もあるため、それについては現在検討中であるが、予備的な計算結果からは、異なる力場を用いた場合であっても定性的にはこれまでに得られた結果と合致することが分かっている。 また、過去の報告では、st-PMMAの方がit-PMMAに比べてエステル基の柔軟性が高いため、分子鎖間のカルボニル基間に結合が生じるのに対し、後者ではそれが抑制されることがガラス転移温度が異なる理由であると考察されていたが、今回のシミュレーションの結果からは、カルボニル基間の結合はほとんど認められなかった。一方で、エステル基の運動性の温度依存性に関する過去の報告を支持する結果が得られたことから、静電相互作用以外にも側鎖の運動性に影響を与える因子があることが示唆された。 以上のことから、当初検討予定だった内容についてはほぼ結果が得られており、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、PMMA単体の分子動力学シミュレーションの結果に対する力場の影響についても検討を進めているところであるが、本年度はこれを完了させる。また、側鎖の運動性の温度依存性について、過去のFT-IRの報告の結果との比較を試みる。その際に静電相互作用の有無による差異から、側鎖の分子運動性に対する静電相互作用の影響について検討する。 上記の検討によりPMMA単体のガラス転移温度に影響を与える因子についての知見が得られ次第、次の段階としてSiO2とPMMAの系についても分子動力学シミュレーションを行い、そのガラス転移温度や相互作用している部位に関して検討を行う。
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)