Project/Area Number |
23K04466
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 26060:Metals production and resources production-related
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
下条 晃司郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (50414587)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | ランタノイド / 溶媒抽出法 / 新規抽出剤 / 硫黄系抽出剤 / ジオクチルジグリコールアミド酸 / 分離回収 / ランタノイド分離パターン / 溶媒抽出 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は難分離性の元素群として知られるランタノイド(Ln)を高効率に分離回収するために、抽出試薬の酸素原子を部位特異的に硫黄原子へ変換し、化学結合性をチューニングすることで、Ln選択性を制御可能な抽出分離システムを開発することである。これまでに多くの抽出試薬が開発されているが、Lnの分離パターンについて明確な理論は未だ確立されていない。本研究ではLnに対して高い抽出分離能と実用機能を併せ持つ抽出剤DODGAAを基本骨格として部位特異的に酸素原子を硫黄原子に変換した複数の新規抽出剤を合成し、抽出剤とLn間のハード・ソフト結合性を操作することによってLnの分離パターンを制御する。
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Outline of Annual Research Achievements |
ランタノイド(Ln)は磁性材料、電子材料、光学材料の原料として広く産業利用されている重要な元素である。しかし、Lnは3価のカチオンで安定であり、イオンサイズが類似し、最外殻の電子配置が同じであるため、化学的に難分離性の元素群として知られている。従って、Ln鉱床から各Lnをそれぞれ分離回収することは困難である。一方で、カーボンニュートラルの実現に向け、電気自動車や風力発電が普及しているが、希土類磁石は年間数十万トン必要とされ、また廃棄されると予想されている。従って、Lnの安定供給のためには、金属リサイクルや分離精製技術を向上させ、持続的な資源サイクルを構築する必要がある。 溶媒抽出法はLnの湿式製錬やリサイクルなどに利用される分離精製技術である。Lnの分離効率は使用する抽出剤に大きく影響するが、抽出剤によるLn選択性(Ln分離パターン)と抽出剤の分子構造との関係性について統一的な理論は確立されておらず、Ln分離パターンを決定づけるメカニズムは未解明のままである。 本研究では、ジオクチルジグリコールアミド酸(DODGAA)の改良型抽出剤としてエーテル酸素を硫黄に置換したジオクチルチオジグリコールアミド酸(T-DODGAA)を開発した。その結果、DODGAAは重Lnに選択性を示すが、T-DODGAAは軽Lnおよび中Lnに選択性を示し、エーテル酸素をS化するだけでLn選択性が大きく変化することを見出した。これはO原子をS原子に変換することで抽出剤がハード結合性からソフト結合性に変化し、Lnとの共有結合性が強化されることで、重Ln選択性から軽Ln・中Ln選択性へとLn分離パターンが変化したものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Lnは原子番号が大きくなるにつれランタノイド収縮が起こるため、イオンサイズが小さくなる。すなわち、重Lnほど電荷密度が大きくなり、抽出剤との静電的相互作用が強くなる。一方、軽Lnはイオンサイズが大きいため、ややソフト性が高まり、また9配位構造を形成しやすい。本研究ではアミド基とカルボン酸をエーテル酸素で連結したハード性三座配位子DODGAAとエーテル酸素をソフト性の硫黄に置換したT-DODGAAを合成し、Lnに対する抽出能および抽出分離パターンの変化について検討した。 DODGAA:軽LnをpH > 3、中Lnおよび重LnをpH > 2で定量的に抽出可能で、重Lnほど選択的に抽出されやすい分離パターンであった。 T-DODGAA:全Lnに対してpH > 4で定量的な抽出が可能であり、DODGAAに比べ抽出能および分離能が共に低下した。一方で、軽Ln・中Lnに選択性を示し、O原子をS原子に変換することでLn分離パターンに変化が生じることを見出した。 このようなLn分離パターンの変化が起こった理由として①ハードドナーO原子をソフトドナーS原子に変換することで抽出剤が軽Ln・中Lnに対して共有結合性を示し、強い配位能を有するようになった。②T-DODGAAの方がDODGAAより配位空間が大きいため、イオンサイズの大きな軽Ln・中Lnに対する結合性が有利になったためと考えられる。 以上のように、本研究では抽出剤の原子変換により、Lnの分離パターンが変化することを見出しており、研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の令和6年度はT-DODGAAを用いたLnの抽出において、pHおよび抽出剤濃度依存性のスロープ解析を行い、錯体量論比や抽出平衡式を導き出して抽出メカニズムを明らかにする。また、有機相に抽出されたLnの回収を行うため逆抽出について検討する。また、逆抽出後の有機相を用いて、正抽出と逆抽出を繰り返し、有機相の抽出能が維持されているかを観察し、抽出剤の耐久性について検討する。 一方では、アミド基やカルボン酸の酸素を硫黄に置換した新規抽出剤の合成に挑戦し、抽出実験を行うことでLnの分離パターンがどのように変化するかを観察する。また、SPring-8のビームタイムが取得できれば放射光によるXAFS実験を行い、抽出金属錯体の構造化学的な考察を行いたい。得られた結果を順次まとめあげ、研究成果の論文発表を行う。
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