Project/Area Number |
23K04530
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 28030:Nanomaterials-related
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
LIM HONGEN 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (20794861)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 原子層物質 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / 界面成長 / 化学気相成長 / CVD |
Outline of Research at the Start |
原子層物質(原子1個-数個分の厚みを持つ極薄膜)は、基板上に成長させるのが一般的だが、この方法では表面に不純物が吸着するという課題があった。本研究では金薄膜とSiO2基板間への原子層物質の直接成長に着眼し、その閉じ込め空間に成長を支配される要因の解明、高品質な原子層物質の集積化に向けた結晶方位制御合成、そして電子デバイス応用に向けた基盤技術を構築することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、独創的な界面成長手法を開発し、金膜とSiO2/Si基板の間に挟んでいるタングステン(W)薄膜の硫化を行うことによって、電極として使用する金膜の下における二硫化タングステン(WS2)薄膜の直接成長に成功した。電極を作製する際に起こりうる、合成したWS2薄膜へのコンタミまたはダメージを避けるため、本研究ではフォトリソグラフィー法により基板上にあらかじめパターンを用意し、厚さ数ナノメートルから二十ナノメートル程度のW薄膜を作製したあとに金膜を乗せ、大気圧下の気化硫黄雰囲気中でW薄膜を650℃でアニーリングすることで、金膜の下におけるWS2薄膜の成長を試みた。また、WS2薄膜の形成と成膜状況を検証するため、反応後に金属エッチング剤を用いて表面の金膜を除去し、その残された膜に対し、ラマン分光測定と原子間力顕微鏡(AFM)観察を行った。反応前のW薄膜の厚みに寄らず、異なる試料のいずれもラマン分光測定の結果からWS2固有の水平方向および垂直方向の原子振動モードを検出することができた。これにより、金膜の下のW薄膜がWS2になったことを確認した。なお、得られたラマン信号の形と強度から、このような挟んだ形で合成したWS2薄膜が基板の表面で成長したもの並みの品質を持つことが分かった。一方、AFMの表面観察結果により、厚いW薄膜と比べ、薄いW薄膜からできたWS2薄膜のほうが平坦であることが判明した。さらに、硫化前後の膜厚測定により、合成したWS2薄膜の厚さが元のW膜の厚さに依存することが明らかになった。このことから、基板上に作製するW膜の厚さを上手く調整することで、任意の場所におけるWS2の層数制御合成を実現できると強く期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、独自に開発した遷移金属ダイカルコゲナイドの界面成長により、二次元物質における電子デバイス応用に向けた基盤技術の構築を目指している。本年度は、主に試料の合成プロセスに関わる課題に集中し、出発原料・合成手法・試料評価など多方面から検討を行い、金膜と基板の間における遷移金属ダイカルコゲナイドの合成を推進してきた。特に、二硫化タングステン薄膜の成長を当初の予想とは異なるかたちでより簡易かつ効率的に行うことが可能となり、挟んだ空間での層数制御合成にも新しい展開があるため、研究内容がおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように金膜の下で二硫化タングステン(WS2)薄膜の直接成長が実現できたが、合成したWS2薄膜の膜質と均一性が依然として不十分であるため、製作過程の改善をしなければならない。WS2薄膜の成膜状況はその出発原料となったタングステン(W)薄膜の付着状態に大きく支配されているため、今後は基板表面の前処理、基板種類の選別、付着パラメータのチューニング、あるいは付着方法の改良などを通じて、基板上に良質なW薄膜を作製できる成膜条件を探索していく。また、W薄膜上に作製している金膜の付着状態がWS2薄膜の成膜に与える影響と、硫化反応中における金膜がW薄膜の構造変化に及ぼす影響を理解するために、金膜の厚みと金属の種類を変え、形成した薄膜の品質を調査する。さらに、将来実用化にむけて異なる金属膜と担体基板の組み合わせにより、高品質なWS2薄膜の合成の可能性を探る。以上述べた内容に加え、各反応パラメータ(硫化原料、合成温度、反応時間など)の最適化を行い、金属と基板の界面に合成したWS2薄膜の膜質と均一性の向上を目指す。その後、透過型電子顕微鏡(TEM)を利用してこのような挟まれた空間に作製したWS2薄膜の詳細な構造と欠陥状態、そして薄膜と接する界面の様子を調査する。最後に、合成したWS2薄膜を用いて電界効果トランジスタ(FET)を作製することにより、試料の電気伝導特性を調査しながら、一般的な表面成長手法により作製したものの動作性能と比較していく。
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