Project/Area Number |
23K04568
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 29010:Applied physical properties-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡邊 浩 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 助教 (50625316)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 光誘起相転移 / THz分光 / 超高速 / 超高速現象 |
Outline of Research at the Start |
典型的な価数揺動物質の一つである硫化サマリウム(SmS)は圧力印加によりf電子が局在した黒色半導体相から価数揺動を示す金色金属相に格子定数の変化を伴った一次転移を示す。その起源の一つとして励起子生成に伴うBEC-BCS 転移が挙げられている。本研究では励起子同士が凝集したBCS的な状態の作成を以下の二つの手法を用いて行う。 1.バンドギャップに共鳴した高強度レーザー励起により、余剰熱による試料破壊なしに高密度な励起子を生成 2.シュタルク効果を用いて高強度THz電場印加によるSmSの励起子間の相度作用の増大によるSm3+の束縛励起子を遍歴化
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Outline of Annual Research Achievements |
典型的な価数搖動物質の一つである硫化サマリウム(SmS)は圧力印加により金属絶縁体相転移を起こすことが知られているが、その起源として励起子BEC-BSC転移が考えられている。 我々は光照射によって励起子を作成することで、SmSにおける金属絶縁体変化の起源を明らかにしようと試みている。我々はこれまでに光照射によって数ns以上続く準安定な光誘起相の作成には成功しているが、圧力印加による金属相と同じ状態には成功していない。 その理由として、①試料損傷する強度まで光照射しているにもかかわらず励起子密度が足りない。②励起子がSm原子周辺に局在している。の二つが考えられる。 本研究では①に関しては励起光を1.5eVからバンドギャップに共鳴した0.5eVに変えることで熱損傷を抑えて高密度励起子生成を試みる。②に関しては高強度電場を印加することでシュタルク効果により局在した電子の遍歴化を試みる。という二つの方法で光照射によるBEC-BSC転移を目指している。今年度は②の高強度THz電場を照射することで高電場を印加し、それによる電子状態の変化をTHz領域の反射スペクトル変化を用いて観測を試みた。 その結果、照射THz強度を変えても顕著な反射スぺクトルの変化は見られなかった。これは励起子の束縛エネルギーは100meV程度と考えられており、常温ではその変化を観測するのが難しいためであると考えられる。そこでHeクライオスタットを実験系へと導入し、He温度での測定可能な実験系の構築と行こなった。次年度はこの系を用いてHe温度でのSmSのTHz領域の反射スぺクトルの印加電場依存性の測定及び、①に対応するバンドギャップに共鳴した0.5eVの高強度中赤外励起の実験を東京大学物性研究所、板谷研究室にて行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
硫化サマリウム(SmS)おいて光照射によりBEC-BSC転移を引き起こすために、高強度THz電場を印加することにより、シュタルク効果よる局在した電子の遍歴化を試みた。 SmSの励起子の束縛エネルギーは100 meV程度で、励起子が1原子に局在したフレンケル励起子と複数の原子へと広がったワニエ励起子の中間のエネルギーである。その為、格子定数程度の広がりを持つと考えられ、格子定数が隣り合う励起子同士の相互作用が弱く、励起電子がSm3+に束縛されていることがBCS相へと至らない原因だと考えられる。光を用いて励起子同士の相互作用を強くする方法としてシュタルク効果が挙げられる。そこで高強度THz勝者による高強度電場印加により、ポテンシャル障壁をさげて、励起子同士の相互作用を強くすることでBEC-BSC転移を引き起こすことことが期待される。印加する高強度THz電場は大阪大学のTi:sapphireレーザー(1.55 eV,1 mJ,50 fs)を用い、パルス面傾斜法を用いて非線形結晶LiNbO3を用いて1psの間のパルス電場として発生させる。パルス電場照射前後の試料の電子状態の変化をポンプTHz光をプローブとしても使用し、その反射スペクトル変化の励起THz電場強度依存性を測定した。しかしながら、高電場印加による顕著な反射スぺクトルの変化は見られなかった。これは励起子の束縛エネルギーは100meV程度と考えられており、常温ではその変化を観測するのが難しいためであると考えられる。 そこでTHz光を透過するTusupica窓を用いたHeクライオスタットを実験系へと導入し、He温度での測定可能な実験系の構築と行こない、He温度での高強度THz励起THz反射スペクトル測定の系を作成した。今後はこの系を用いて10K程度の低温でのTHz反射スペクトルの印加電場依存性を測定する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては硫化サマリウム(SmS)おいて、光照射によるBEC-BSC転移を実現するために、まず昨年度に引き続き、試料をHe温度へと冷却し、高強度THz電場印加を行うことで、シュタルク効果よる局在した電子の遍歴化の実験をHe温度にて行う。 また、これまでの研究で近赤外光(1.5eV)照射により、準安定な光誘起状態の生成には成功しているが、この相は圧力誘起で見られる金属相とはこのなった相である。光照射による金属相作成する為にはより高密度な励起子生成が必要だと考えられるが、高強度励起を行うと試料が損傷してしまうという問題があった、そこで余剰熱による熱損傷を抑える為にバンドギャップに共鳴した0.5eV近傍の高強度中赤外光励起による光誘起相生成の実験を計画している。光源は東京大学物性研究所の板谷研の物を用いる予定で、繰り返し1kHz,60μJと近赤外光での損傷閾値の100倍以上の励起密度での励起が可能である。 これらの研究を経て、光を用いて高密度の励起子を生成することで励起子BEC-BCS 転移を起こしSmSにおける絶縁体金属転移の起源を明らかにすると同時に、強相関系における光・電場による局在-遍歴相転移現象の観測を目指す。
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