ガラス上のナノ水滴の構造観察による微視的ぬれの解明
Project/Area Number |
23K04581
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 29020:Thin film/surface and interfacial physical properties-related
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
荒木 優希 金沢大学, 数物科学系, 助教 (50734480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湊 丈俊 分子科学研究所, 機器センター, 主任研究員 (10415309)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | ぬれ / 走査プローブ顕微鏡 / 水 / 界面 / ぬれ性 / 周波数原子間力顕微鏡 |
Outline of Research at the Start |
ぬれはコンクリートの劣化、電子部品の性能低下などあらゆる産業に関わる問題であり、固体表面がどのようにぬれるか理解する事は重要である。特に、ミクロなぬれの過程を明らかにするために、周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)を用いて湿潤環境で石英ガラス表面を観察したところ、ガラス表面に直径数100 nm、厚さ数nmのナノ水滴が形成することがわかった。その挙動から、バルク水とはまったく異なる物性・構造が予想され、本研究では、固液界面の水の高分解構造観察に強いFM-AFMと、粘弾性計測に強いピークフォースタッピングAFMを駆使し、ナノ水滴の液体構造と物性測定によってミクロなぬれのメカニズムを追究する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、ピークフォースタッピングモード原子間力顕微鏡(PFT-AFM)を用いた(1)石英結晶基板表面のぬれ過程のその場観察、および(2)石英ガラス表面の凝着力変化の湿度依存性の精査を中心に行なった。(1)の観察では、表面平均荒さが数nmの平滑な石英結晶(001)面基板を用いて、湿度を上昇させながら観察を行なった。石英ガラス上と同じく、湿度上昇にともなって表面の平均凝着力は上昇傾向を示し、均質な水の吸着が起こっていることが示されたが、ナノ水滴は観察されなかった。ガラス表面に比べ、面内平均凝着力の上昇が緩やかであったことに注目し、今後、ガラス表面とのぬれ方の違いを表面の微細構造変化の観察によって明らかにしていく。(2)に関しては、湿度制御可能な密閉セルの改良を行い、湿度を変化させる際のドリフトや不純物の吸着の低減を実現し、湿度10-90%まで段階的に変化させながらぬれ過程を観測することが可能となった。その結果、石英ガラス表面の平均凝着力が湿度とともに有意に増大することが明らかとなり、ナノ水滴が形成されない低湿度環境でもガラス表面は均質にぬれていることが示された。さらに、湿度を下げる過程の測定から、均質に吸着した水は容易に脱離しないことが明らかとなった。これまでの結果から、ガラス表面に均質に吸着した水はガラス表面の物質と反応し、シリケートのゲル状構造が形成している可能性が浮上した。ゲル状構造は、その上にナノ水滴が形成するメカニズムに関わっていると考えられ、微視的なぬれのメカニズム解明には、均質にぬれたガラス表面の構造観察とナノ水滴との界面構造観察が肝要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、石英ガラス表面がナノ水滴形成前に均質にぬれているのか、水膜形成の実証を目指して実験を行なった。当初、ナノ水膜とナノ水滴との共存を推測していたが、ピークフォースタッピングモードによる粘性計測や周波数原子間力顕微鏡(FM-AFM)によるガラス表面の形状観察の結果から、低湿度で均質な水の吸着が始まり、湿度上昇に伴って石英ガラス表面は粘度の高いゲルのような層に覆われる可能性が示された。この中間層の形成がナノ水滴の形成の要因と考えられ、この結果は、微視的にはガラス表面が湿度に依存して二段階でぬれていくことを示唆している。2024年度以降は、gel-like層の評価を中心に行ないながら、ナノ水滴形成が他の物質でも普遍的な現象であるのか、多様な基板を用いたぬれ観察によって検証していく。石英ガラス上に均一に吸着した水がgel-like層を形成しているならば、粘度の高い水膜が形成される潮解性物質で同様の現象が見られる可能性が高いため、塩化鉱物や親水性のシリカ鉱物であるマイカを比較試料として、石英ガラスとの微視的なぬれ過程の違いを検証する。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)Gel-like層の検証 gel-like層の形成について、FM-AFMによるガラス表面の高分解その場観察によって検証する。先述した通り、gel-like層は不可逆に形成すると考えられるため、高湿環境を経験していないガラス表面の湿度に応じた微細な形状変化をその場観察する。一般的にGel-like層は網目構造が特徴であることから、平均荒さ数nmの平滑なガラス表面に独自の凹凸構造が観察されると期待できる。また、PFT-AFMを用いて、化学処理によって水を完全に除去したガラス表面の凝着力計測を実施し、湿度に応じた凝着力変化からガラス表面の物性変化を精査する。 (2)基板によるぬれ方の比較 ナノ水滴は湿度に応じて可逆的に形成し、かつ可動性があることから固体表面での物質輸送を促し、触媒機能など表面物性と関わる可能性が高い。そのため、ナノ水滴が様々な固体表面に生じる普遍的なものであるか、基板を変えて検証する。先述した親水性基板を中心に、湿度による表面形状変化をFM-AFMやPFT-AFMを用いてその場観察する。
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)