らせん型π電子系構造を利用したキラル分子機能の開拓と設計指針の提案
Project/Area Number |
23K04722
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 33010:Structural organic chemistry and physical organic chemistry-related
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Research Institution | Showa Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
臼井 一晃 昭和薬科大学, 薬学部, 准教授 (80553304)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | ヘリセン / 円偏光発光 / らせん分子 / 励起状態 / 光塩基性 / 集積構造 / らせん / キラリティー |
Outline of Research at the Start |
本研究では、ヘリセン分子のらせんキラル場に由来する光・電子的特性を活かして、機能性分子を創製し、その有用性を検証する。計画している研究項目は、①外部刺激応答型ヘリセンの合成とその機能解明、②らせん構造を有する強発光性カチオン性分子の合成とその利活用の2項目であり、これら誘導体の物性を明らかにし、機能性研究を段階的に進める。
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Outline of Annual Research Achievements |
近年、有機π電子化合物にキラリティを付与した、キロプティカル(光とキラリティの相関によって発現する光物性)分野が注目を集めている。中でもヘリセン分子は、その特異な光学特性や電子的な性質により、機能性分子としての展開が期待されている。しかし、ヘリセン特有のキラル(らせん)場を利用した分子設計戦略はまだ十分に確立していない。本研究では、ヘリセンの光・電子的特性や集積構造を活用し、新たな物性の探求およびその有用性の検証を目指している。研究内容は以下の2つの項目から成り立っている:①外部刺激応答型ヘリセンの合成とその機能解明、②らせん構造を有する強発光性カチオン性分子の合成とその利活用である。 2023年度は、項目①の外部刺激応答型ヘリセンの合成とその機能解明、および項目②のらせん構造を有する強発光性カチオン性分子の合成と物性研究を行った。項目①に関連して、我々は、ホスフィンの酸化反応を引き金とするOFF/ON型の円偏光発光特性(CPL)を示すヘリセン類の合成に成功している(Chem. Eur. J. 2022, 28, e202202922)。この成果を踏まえて、酸化反応や溶媒環境の違いにより、発光波長やCPLの大きさが変化することを期待して、らせん構造内縁部に硫黄原子を有するチアヘリセンの合成(項目①-1)と、らせん構造内部にメチル基を有するジヒドロアザヘリセンの合成(項目①-2)を行った。一方、項目②では、ピリリウム縮環型ヘリセンPYHのキラルな集積構造に関する研究を中心に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下に示す通り、項目①の研究において計画通り目的化合物を合成することが出来たため。特に項目①-2の研究では、合成上の困難さが予想されたものの、目的化合物1Me-DHAを合成することに成功したため。
項目①-1(チアヘリセンの合成とその機能性研究):ナフタレンから誘導したβ-クロロアクロレインと7-ブロモベンゾ[b]チオフェンを出発原料として、計画通りチアヘリセンT[6]Hの合成に成功した。 項目①-2(ジヒドロアザヘリセンの合成とその機能性研究):光塩基性を示すキノリンを分子内に持つジヒドロアザ[5]ヘリセンDHAの合成に続いて、らせん構造内部にメチル基を有する1Me-DHAの合成に成功した。ヘリセン骨格を形成する上で鍵反応となる鈴木-宮浦クラスカップリング反応では、初期の反応条件では痕跡量しか得られなかったが、反応条件を種々検討した結果、収率37%で1Me-DHAを合成することに成功した。各種溶媒を用いて1Me-DHAの吸収・蛍光スペクトルを測定したところ、溶媒による吸収極大波長の違いは見られなかったが、プロトン性溶媒を使用した際には、その酸性度が高いものでは蛍光極大波長が長波長側にも出現した。これは、1Me-DHAを構成しているキノリンの窒素原子がプロトン化されたためと考えられる。 項目②の研究:ピリリウム縮環型ヘリセンPYHの動的ならせん反転挙動を活用し、固体状態におけるらせん制御を目指して、種々のキラルなカウンターアニオンとの複合体を調製し、そのX線結晶構造解析を行った。しかし、これまでのところそのらせん制御には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
項目①: 進捗業況に概説したように、2023年度ではチアヘリセンT[6]Hの合成と、ジヒドロアザヘリセン1Me-DHAの合成とその光物性研究を中心に行った。T[6]Hについては、合成のスケールアップを進めつつ、酸化体であるスルホン体への反応条件の最適化と、光学分割に適したキラルHPLCの条件の確立を行う。また、ジヒドロアザヘリセンの合成・物性研究においては、無置換体であるDHAと、らせ1Me-DHAのCPL測定と、その特性を明らかにするために、蛍光量子収率や蛍光寿命測定、およびTDDFT計算による理論的評価も実施する。さらに、らせん構造内部に他の置換基を有するDHAの合成にも着手する。 項目②: ピリリウム縮環型ヘリセンPYHの固体状態でのらせん制御を目的とした研究を継続する。具体的には、最適なキラルアニオン種の選定と調製に焦点を当てる。また、これらのアニオンがPYHのらせん方向に与える影響を評価するため、X線結晶構造解析や分光学的手法を用いた詳細な評価を実施する。
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Report
(1 results)
Research Products
(18 results)