光学活性なアザ/オキサヘリセンの不斉合成とキラル物性および機能評価
Project/Area Number |
23K04753
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 33020:Synthetic organic chemistry-related
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
入江 亮 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (70243889)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | ヘテロヘリセン / ラセミ化 / 動的立体化学挙動 / 速度論解析 / ヨード環化 / [4+2]環化付加 / 不斉合成 / キラル塩基触媒 / アルキン / ヒドロアリール化 |
Outline of Research at the Start |
ベンゼンなどの芳香環を多数連結することで,螺旋の形をした分子がつくられる.このような分子「ヘリセン」には,互いに鏡像の関係にある右巻き/左巻きの立体異性体(鏡像異性体)が存在する.その一方の鏡像異性体から構成される物質は特殊な性質(キラル物性)を示すことから,機能性キラル分子材料としての応用が期待されている.本研究では,窒素原子や酸素原子などのヘテロ原子を含む複素芳香環を基本単位として有する「ヘテロヘリセン」類の高効率的かつ立体選択的な合成法を開発するとともに,極めて優れた機能性キラル分子材料の創製を目指す.
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Outline of Annual Research Achievements |
螺旋環の内縁部に官能基を有するヘリセンは,不斉配位子や有機触媒,キラルセンシング素子などへの応用が期待される興味深いキラル分子であることから,その効率的合成法と光学活性体の調製法の開発が求められている.これに対して,本研究では,様々な官能基への変換が容易なブロモ基やヨード基を螺旋環内縁部に有し,かつ,室温下で動的立体化学挙動を示すと予想されるジオキサ[6]ヘリセン分子を設計した.これらの動的キラルヘリセン分子は,DYASIN(動的不斉誘起)/内縁ハロ基の置換反応やDKR(動的速度論分割)を用いた置換反応の立体化学制御によって,各種の光学活性なキラル機能性分子への変換が期待される.種々検討した結果,先に我々が開発したアルキン-ベンゾフラン系分子のヨード化-[4+2]環化付加カスケード反応を鍵工程とすることで所望のブロモおよびヨードヘリセンの合成に成功した.さらに,それらのキラルHPLCを用いた光学分割により得られた光学活性体を用いてラセミ化の速度論解析を行うことで,ブロモおよびヨードヘテロヘリセンの20 °Cにおける光学純度の半減期がそれぞれ15分および16.3時間であることを明らかにした.ヨード体については,Eyringプロットによって20 °Cにおけるラセミ化の活性化ΔG‡,ΔH‡,ΔS‡をそれぞれ24.7 kcal/mol,20.4 kcal/mol,-14 cal/mol・Kと決定した.すなわち,ブロモおよびヨードヘテロヘリセンは,いずれも当初の分子設計の狙い通り室温下で動的立体化学挙動を示すとともに,ブロモ体に比べてヨード体が立体化学的に安定であることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的のヘリセン類の合成は,立体障害の大きな螺旋環内縁部への官能基の導入が求められるため,これまで困難とされていた.今回,我々独自の反応であるアルキン-ベンゾフラン系分子のヨード環化を用いることで,内縁ブロモ/ヨード置換型ジオキサヘリセンの合成に成功した.さらに,キラル固定相を用いるHPLCによる光学分割により,ブロモおよびヨードヘテロヘリセンをそれぞれ光学活性体として得ることにも成功した.それら光学活性体を用いたラセミ化の速度論解析により,ブロモおよびヨードヘテロヘリセンはいずれも室温下で動的立体化学挙動を示し,ブロモ体に比べてヨード体が立体化学的に安定であることを明らかにした.これは原子半径のより大きな内縁ヨード基の立体障害によってヨードヘテロヘリセンのラセミ化のエネルギー障壁が高くなったためと理解できる. 上述した通り,室温下で動的立体化学挙動を示す内縁ハロ置換型ヘテロヘリセンの合成に成功したこと,それらのDYASINおよびDKRによる立体化学制御に向けて有用な知見が得られたこと,ハロ基は置換反応や酸化反応によって様々な官能基へと変換できること,などを考慮すると,目的とする内縁官能基を有するキラル機能性分子の合成には未だ着手していないが,現在まで本研究は概ね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,以下の項目を重点的に検討する. (1) 内縁ブロモおよびヨード置換ヘテロヘリセン合成の各段階の反応条件を最適化し,それぞれグラム量の合成を達成する. (2) ブロモおよびヨードヘテロヘリセンの内縁ハロゲン基を置換反応によって各種の官能基に変換するとともに,得られる官能基化ヘテロヘリセンの立体化学挙動の解析を検討する. (3) 得られた立体化学的に安定な官能基化ヘリセンに対して,DYASIN/内縁ハロ基の置換反応やDKRを用いた置換反応の立体化学制御を検討し,それらの光学活性体を調製する. (4) 得られた光学活性な官能基化ヘテロヘリセンの不斉配位子や有機触媒としての応用を検討する.
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Report
(1 results)
Research Products
(3 results)