Project/Area Number |
23K04755
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 33020:Synthetic organic chemistry-related
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
北川 理 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (30214787)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 軸不斉 / アトロプ異性 / ラクタム / チオラクタム / エノラート / アリル化 / 立体選択性 / 位置選択性 / チオアミド / 不斉反応 |
Outline of Research at the Start |
本研究は,従来知られていなかった炭素-窒素不斉軸を有するアトロプ異性(N-C軸不斉)チオアミド誘導体の効率的(触媒的不斉)合成法の確立を目的とする.さらに,得られたN-C軸不斉チオアミド生成物の不斉軸の安定性を明らかにすると共に,チオアミド誘導体特有の反応性に基づく新規かつ高選択的な不斉反応の開発も行なう.また,本研究を実現することにより,N-C軸不斉化合物の多様性が広がり,申請者が長年にわたって開拓・展開してきたN-C軸不斉化合物の注目度がさらに高まることも期待される.
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Outline of Annual Research Achievements |
これまでほとんど報告されていなかった光学活性炭素ー窒素軸不斉チオアミド誘導体の合成と不斉反応への応用,ならびに構造特性の解明を目的に検討を行なう.2023年度は炭素ー窒素軸不斉構造を有するN-(2,5-di-tert-butyl)-3,4-dihydroquinoline-2-thione(軸不斉チオラクタム)の不斉合成と,軸不斉チオラクタムより調製したエノラートとアリル系ハロゲン化物との反応について検討を行なった. すなわち,以前高エナンチオ選択的触媒的合成に成功しているN-(2,5-di-tert-butyl)-3,4-dihydroquinolin-2-one(軸不斉ラクタム,98% ee)をLawesson試薬で処理すると,光学純度を損なうことなく,軸不斉チオラクタム(98% ee)が良好な収率(95%)で得られることを見いだした.引き続き,軸不斉チオラクムより調製したエノラートとアリル系ハロゲン化物(臭化プレニル,臭化シンナミル)との反応を行なったところ,S-アリル化とチオクライゼン転位反応が進行し,見かけ上SN2'型のアリル化生成物が得られた.反応の位置およびジアステレオ選択性は完全であり,SN2型生成物や他のジアステレオマーの副生は全く認められなかった.一方,軸不斉ラクタムエノラートとアリル系ハロゲン化物との反応では,通常のSN2反応が進行し,完全な位置およびジアステレオ選択性でプレニル化ならびにシンナミル化生成物を与えた.このように,軸不斉ラクタムとチオラクタムでは全く異なる位置選択性を示すことを明らかにした.さらに,SN2'型アリル化チオラクタム生成物をm-CPBAで処理すると,ラクタム体に変換可能なことも見いだし,これにより,アリル化位置異性体の高選択的分岐合成が実現できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は炭素ー窒素軸不斉チオラクタムの高エナンチオ選択的合成と,チオラクタムの特異な反応性をを利用した不斉反応の開発を目的に検討を行なった結果,ほぼ当初の目的通りの結果を得ることができた. すなわち,触媒的不斉分子内Buchwald-Hartwigアミノ化とLawesson試薬との反応を利用することにより,軸不斉チオラクタムを98% eeで合成した.さらに,軸不斉チオラクムより調製したエノラートのアリル系ハロゲン化物(臭化プレニル,臭化シンナミル)に対する反応性が,ラクタムエノラートと全く異なることを見いだし,これらの反応性の違いを利用することにより,アリル化位置異性体(SN2'型およびSN2型生成物)の高立体選択的分岐合成を実現した.また,本反応は光学活性炭素ー窒素軸不斉チオアミド 系化合物を用いた最初の不斉反応と位置付けられる. これらの結果は,最近米国化学会のJ. Org. Chem.誌にアクセプトされたが,この際,3名の査読者の内2名の査読者よりtop10%論文という高い評価を得ている.以上より,本研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
炭素ー窒素軸不斉化合物は新たなタイプのアトロプ異性分子として注目を集めており,現在それらの触媒的不斉合成や不斉反応への応用等が活発に研究されている.一方,これまで報告されている炭素ー窒素軸不斉化合物の多くがアミド型化合物であり,炭素ー窒素軸不斉チオアミド については,速度論的光学分割を用いる合成法が一例知られているのみである.また,軸不斉チオアミド を用いる不斉反応に関しても,申請者が報告した上記チオラクタムエノラートを用いる反応が唯一の例である. そこで,他の軸不斉チオアミド系化合物として,キナゾリン-4-チオンやチオアニリドを高エナンチオ選択的に合成し,不斉エノラート化学や不斉転写型反応へ適用することにより,その特異な反応性を明らかにする.また,軸不斉チオアミド系化合物の構造論的研究もほとんど行われていないことから,軸不斉チオラクタム,キナゾリンチオン,チオアニリドを用いて,アミド系化合物とは異なる構造特性を明らかにする.
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