対称性のあらゆる変化を考慮できる磁性理論の構築と展開
Project/Area Number |
23K04761
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 34010:Inorganic/coordination chemistry-related
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
崎山 博史 山形大学, 理学部, 教授 (20253396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金井塚 勝彦 山形大学, 理学部, 教授 (50457438)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 磁性理論 / 磁気異方性 / 角度依存性 / シミュレーション / 三次元表現 |
Outline of Research at the Start |
本研究では,スピン軌道相互作用がかかわる磁性理論体系を立方対称以外に拡張することを主目的として、金属錯体の合成・測定を通して、対称性とスピン軌道相互作用の関係を調査する。さらに本研究のアウトプットとして,スピン軌道相互作用が関与する物質の磁性解析ソフトウェアを公開する。これにより,関連化合物を扱うすべての研究者が磁性解析を正しく実施できるようになり,関連研究の飛躍的な発展が期待できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
まず、弱磁場非極低温条件において、種々の多核金属錯体の磁気解析を実施し、従来の諸近似方法が有効であることを再確認した。[ここで、従来の諸近似方法には、磁場の級数展開近似と、弱磁場でのみ有効な線形近似が含まれる。] またその中で、スピン四重項T項を基底状態とする正八面体型コバルト(II)錯体の一次元鎖状錯体の磁気解析などを実施し[New J. Chem., 2023, 47, 20426-20434]、単独では安定でないカルボキシラト二架橋錯体が配位高分子中で安定化された一連の化合物(金属=コバルト(II)、ニッケル(II)、マンガン(II))について、構造磁気相関(二面角と相互作用の関係)を解明した[CrystEngComm, 2023, 25, 6777-6785など]。 その一方で、強磁場極低温条件にも適用できる磁気解析法を構築するため、従来の諸近似を用いない磁性理論式を導出し、磁気異方性の角度依存性を検討した。 もっとも象徴的な業績は、スピン三重項状態の零磁場分裂による磁気異方性を諸近似を用いることなく代数的に表現したことである。[ここで、従来の諸近似方法を用いないことで極低温での磁気挙動や高磁場での磁気挙動を取り扱うことができるようになる。]導出した理論式を用いることで、磁化の角度依存性をシミュレーションし、磁化の異方性を三次元的に表現することが可能となった[Magnetochemistry, 2024, 10(5), 32]。このような諸近似を使わず磁気異方性を表現する取り組みは、近年の磁性理論の守備範囲増加(極低温測定ならびに高磁場測定)に対応するものであり、当初の計画に先行して実施する必要があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における最重要課題は、従来型の磁性理論における不足を補うことであった。[従来型の磁気解析法では、磁場の級数展開近似と、弱磁場条件での線形近似により、弱磁場非極低温条件でしか、十分な磁気解析を実施することができなかった。] そこで本研究では、まず従来型の諸近似を用いることなく磁化率の温度変化と磁化の磁場変化をシミュレーションすることとし、磁気異方性の角度変化をも表現できることを目指した。達成し論文発表に至ったのは、スピン三重項状態の零磁場分裂の場合であり、磁気異方性の角度変化を代数的に表現することができた。これにより、磁化の粉末平均はもちろんのこと、磁化の異方性を三次元的に表現することが制約なしで可能となった。さらに、代数表現が可能になったことで、微積分も代数的に可能となり、コンピュータプログラムによる高速処理が可能となった。また、公開には至っていないが、本系の磁気解析プログラムをスタンオアローンアプリとして開発し、磁気解析に利用できるようになった。 一方、高スピンコバルト(II)イオンに対する理論拡張に関する進展は、まだ公表できる段階にはない。予測されていたことではあるが、行列サイズが大きくなるほど取り扱いが困難になることが確認できた。 その他、プログラミングの環境構築などは、予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
合成やプログラミング環境構築などについては、計画どおり進めていく。理論展開については、(1)弱磁場非極低温条件のみの場合と(2)強磁場極低温条件にも適用できる場合をはっきりと区別し、特に後者に目標を定めて理論を展開する。 初年度は、スピン三重項状態の零磁場分裂について、従来型の諸近似を用いることなく磁化の角度依存性を代数式で表現できたことから、次年度は、スピン多重度を増やした系について取り組み、磁気解析と、磁気異方性の三次元的表現ができることを目指す。 基底状態が軌道角運動量を持つ場合については、不対電子数が小さい方から順に取り組んでいくこととする。特に、これまで取り組まれてこなかった磁化の角度依存性の問題についても展開していく。
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Report
(1 results)
Research Products
(18 results)