Evaluation of trace-metal sequestration potential by understanding the elementary steps of cycling processes in forest ecosystem
Project/Area Number |
23K04821
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 34030:Green sustainable chemistry and environmental chemistry-related
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
山下 多聞 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (30263510)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 重金属循環 / 非鉱山サイトと鉱山跡サイト / 落葉広葉樹と常緑広葉樹 / 生態系収支 / 重金属隔離 / 土壌有機物 / 森林生態系 |
Outline of Research at the Start |
森林への降水による負荷と渓流水への流出を測定し重金属の外部循環をモニタリングするとともに,森林土壌での重金属の垂直分布と存在様式,土壌水の浸透にともなう重金属の垂直移動および樹木への重金属取り込み量を把握し重金属の内部循環過程を明らかにする。この研究により森林生態系のエコロジカルサービスの一つに数えられる水質浄化機能を発揮させるために重要な知見を提供する。森林の水質浄化機能は下流域の都市住民に清澄な淡水資源を持続的に供給するために必要な機能であり,森林の水質浄化機能の維持管理は持続可能な社会の構築に貢献するものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
山陰地方の鉱山跡を含むいくつかの森林において,森林生態系における重金属保持機能を明らかにしようと研究に取り組んでいる。研究初年度には重金属循環プロセスの把握を試みた。まず,森林生態系外からの降水による重金属負荷と渓流水への重金属流出を測定し収支を明らかにすること,そして森林生態系構成要素としての樹木の重金属蓄積を明らかにすることができた。 母岩や土壌鉱物の風化によって供給される重金属にくわえ,遠く離れた場所から大気循環により輸送されてくる低濃度であるが長期にわたる重金属負荷は湿性および乾性沈着による森林生態系への収入源として把握すべき項目である。冬季も含めた通年観測の可能な島根大学三瓶演習林で調査した。年間の重金属負荷は銅,鉄,亜鉛の順で多かった。クロムや銅,亜鉛などは渓流への流出量と比較した場合,湿性と乾性沈着によってもたらされる量の方が流出量よりも多いことから森林生態系の植物体と土壌に少しずつであるが蓄積していることが示唆された。 樹木器官ごとの重金属量を測定し樹木が吸収した重金属の生体内での分布を明らかにすることで,重金属の回転率の推定が可能になる。より長寿命の幹や枝に分布する重金属はより長い期間植物体にとどまる可能性が高く,より寿命の短い葉や細根に分布する重金属は吸収後比較的早い段階で土壌に還元されることが予想される。また同じ土壌環境に生育する複数種の樹木を対象に重金属分布を測定することで,樹種ごとの重金属嗜好性を把握することができる。落葉広葉樹であるムラサキシキブとヤマアジサイ,常緑広葉樹であるシロダモの3種で比較したところ,落葉広葉樹ではより多くの重金属が地下部に配分され,常緑広葉樹では地上部に配分されていた。また,ヤマアジサイはアルミニウムと多くの重金属の濃度が他の樹種に比べかなり高く土壌中の金属を吸収しやすいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
森林生態系における物質循環素過程を把握する作業は順調に進んでいる。島根大学三瓶演習林において,降水および渓流水による重金属収支の把握に加え,森林内での再循環過程を把握するために林内雨と樹幹流による水を通した還元およびリターフォールによる有機物を通した還元を観測継続中である。樹木の個体内配分に関する調査とさまざまな樹種の葉の重金属含有量調査も予定通り実施できた。土壌中の重金属可給性も表層土については鉱山跡として大東モリブデン鉱山跡と若松クロム鉱山跡の2ヶ所,非鉱山跡として松江試験地と三瓶演習林と匹見演習林の島根大学演習林3ヶ所において試料採取ができており,うち4ヶ所の表層土に関して分析まで終了した。 さらに森林の林分単位での重金属蓄積を把握するために,若齢スギ人工林に調査サイトを設定し,伐倒調査を実施した。スギ個体の地上部の層別刈り取り調査およびリター層を含めた土壌蓄積量調査を行い,試料の分析に取り組んでいる。 森林生態系の土壌と植物の関係に加え,鉱山跡という環境に興味を持った学生が土壌重金属と土壌動物の関連について調査に取り組み,土壌動物の重金属含有量および土壌動物群集について明らかにすることができた。 初年度の成果として,重金属収支に関する研究と樹木の重金属配分に関する研究で日本森林学会大会で2件の,土壌動物の重金属含有量に関する研究と鉱山跡地の土壌動物群集に関する研究で日本生態学会大会で2件の合計4件の学会発表を行うことができた。 これらのことから進捗状況は,当初予定していた以上に進められている状態であると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主要課題は森林生態系における重金属隔離機能の評価にある。森林生態系の重金属シンクは樹木など植物バイオマスと土壌有機物と考え,研究期間初年度は植物バイオマス中の重金属ストックと再循環に焦点をあてて野外調査と室内実験をおこなってきた。2年目は植物バイオマスと生態系内での再循環プロセスの把握につとめ未分析試料の重金属含有量測定をすすめるとともに,土壌有機物と重金属の関係をあきらかにするための野外調査を開始する。 バイオマス中の重金属については,破壊的調査の可能な若齢スギ人工林を対象にスギ単木の地上部の器官別重金属蓄積から林分単位での地上部蓄積量を推定する。地下部についても細根をはじめ根株の試料をできるだけ採取し,推定精度を高めたい。また再循環プロセスとしてのリターフォールの重金属分析を進め,バイオマスとリターフォールの比較により樹冠部の有機物ターンオーバーおよび重金属ターンオーバーを明らかにする。破壊的調査の困難な広葉樹二次林を対象に,再循環プロセスの解明にターゲットを絞り調査に取り組む。具体的には。リターフォール,樹幹流,林内雨を継続観測し,リターフォールと樹幹流については代表的な樹種をえらんで個別に調査する。 土壌有機物と重金属の関係はこれまでも研究がすすめられ,抽出法もいくつか提案されている。本研究では,とくに団粒構造に注目する。団粒サイズや団粒に含まれる有機物の分解段階ごとに重金属濃度を測定し土壌のどの画分に多く含まれるのかを明らかにする。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)