Project/Area Number |
23K04822
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 34030:Green sustainable chemistry and environmental chemistry-related
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中谷 久之 長崎大学, 工学研究科, 教授 (70242568)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | ポリオレフィン / 珪藻 / 油分 / マイクロプラスチック / アップサイクル |
Outline of Research at the Start |
珪藻の油脂貯蔵機構を用いて、劣化したPOから、多種多様な化学品原料となるC30程度の鎖状炭化水素(油分)を回収する新規アップグレードリサイクルシステムの開発を行う。劣化したPO片を珪藻含有の海水に入れる。そして可溶性のSi成分を加えて珪藻にPO劣化部の捕食・貯蔵を行わせる。1)適宜、PO片を取り出し、表面に取り付いた珪藻の成長を光学・レーザー顕微鏡を用いて測定する。2)表面全体を覆う様に珪藻が成長したPO片を回収する。3)油分回収率を算出し、その向上のために、POの最適な劣化条件、最適な珪藻種の策定及び添加する可溶性Si成分の最適添加量の模索を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
海水中での生分解を達成するためには、ポリオレフィン(PO)の低分子化メカニズムの開発が不可欠である。本研究では、まずポリプロピレン(PP)/ポリ乳酸ブレンド試料に光分解前処理を施し、純水中では発生した酸がPPの分解(自動酸化)を促進するのに対し、アルカリ性海水中では中和反応により促進が抑制されることを確認した。また、アルカリ性海水中でのPOの自動酸化では、Clイオンが阻害剤となった。しかし、pHを下げ、ClOHの解離を利用すること(ブリスター分解)で、海水中であっても自動酸化を開始できることを見出した。ブリスター分解機構は、珪藻が透明なエキソポリマー粒子(TEP)を分泌し、POの表層とアルカリ性海水との直接接触を防ぐ能力を利用することで、海水中であっても自動酸化を可能にした。珪藻を用いた海水中でのブリスター分解をバイオブリスター分解と名付け、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)/デンプン試料を用いて、SEM、IR、DSC、GPC分析によりその発現を確認した。以上の結果はSci. Rep.誌に投稿掲載された[Sci. Rep.14(1), 3902(1-11) (2024)]。 さらに、バイオブリスター分解により、分解・低分子量化したPOが珪藻内部に蓄積されていることをSEM/EDX観察により確認した。藻類培養液を用いて大量培養した珪藻からPP由来の炭化水素の存在をPy-GC/MS分析により、PPユニットのマーカーユニットである1-Nonene, 4,6,8-trimethylのピークをマススペクトルで捉えることに成功・確認した。以上により、回収方法の開発の糸口をつかむことにも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
珪藻は体内に油分を蓄積する特性を持ち、次世代バイオ燃料生産の原料として注目されている。長崎近海から回収したプラスチック(PO)サンプルのSEMからサンプル表面上を珪藻が侵食していることが明らかとなった。さらに、PO/デンプン系フィルムを水族館の水槽にて海水に暴露した結果、劣化や穴が開くなどのフィルムの分解挙動が見られた。以上までの結果は、既に論文にして投稿・掲載済みである[Sci. Rep.14(1), 3902(1-11) (2024)参照]。 上記の結果から珪藻がPOを分解・蓄積する可能性を得ている。そこで、現在、POを石油に戻して再利用する「アップサイクル」を行っている。具体的には、ペルオキソ二硫酸カリウム溶液による自動酸化反応で劣化させたPPフィルムを使い、長崎-五島間で採取した海水に栄養素を加えたものを用いて、20℃に保持した光源付きインキュベーター内で暴露試験を行った。一つ目は、珪藻の養分となるケイ酸水を20 ml加え、4ヶ月実施した。二つ目は、ケイ酸水を200 mlに増量し、4ヶ月間実施した。最後は藻類培養液とケイ酸栄養資材を加えて28日間実施した。暴露試験後、IR測定による作製したサンプルに由来するスペクトルの吸収ピークの分析、SEMによるフィルム表面の細部の観察、Py-GC/MSによる珪藻の含有物質分析を行った。培養液を加えた海水には沈殿物が生成しており、SEM観察よりそれらは珪藻であることが判明した。そこで、その珪藻を乾燥後、Py-GC/MS分析を行った。その結果、PPユニットのマーカーユニットである1-Nonene, 4,6,8-trimethylのピークをマススペクトルで捉えた。以上により、劣化分解したPPが珪藻内に蓄積していることを確認した。現在、珪藻に貯えられているPP由来の油分量の定量法の開発を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度で行った予備的な検討として、最適な珪藻を含む海水については、長崎港(三重漁港)近傍の海面下50mで採水(S1-Dと呼称)した海水が適していることが分かった。そこで本年度ではS1-Dの海水を使って珪藻による油分の回収を検討する。POの分解速度向上には、表面積が重要な因子であることが同じく2023年度の検討で明らかとなったので、海水中での選択的な分解により多孔質化するPO/デンプン系フィルムを用いて検討する。また事前に酸化劣化させた劣化PPフィルムも使用する。POとしては上記2種類の試料としてPP系を用いて行う予定である。理由としては、2023年度に行った研究から、PE系よりもPP系の方が分解しやすく、さらにメチル側鎖を持つことから、Py-GC/MSによる油分の組成分析がより容易であることが分かったからである。PP由来の油分をオイルボディとしてため込んだ珪藻は、一定以上成長すると培養ビーカーの底に凝集して沈むので回収するのは比較的容易である。 以上より、1)底に沈んだ珪藻を回収、2)乾燥後、乳鉢で破砕、3)エーテル等で油分を抽出、4)Py-GC/MSを使い、油分の定性・定量化 1)~ 4)の過程を詳細に検討し、珪藻中のPP由来の油分の含有量の測定方法を確立する。続いて、藻類培養液とケイ酸栄養資材を海水に加える量を変え、珪藻中の油分含有量の変化を調べ、添加量の最適化を行う。 以上を2024年度の研究として推進する。
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