Project/Area Number |
23K04843
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 35010:Polymer chemistry-related
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
小林 元康 工学院大学, 先進工学部, 教授 (50323176)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | 高分子電解質 / 水和構造 / ヒ素 / 海洋生物 / アルセノベタイン |
Outline of Research at the Start |
人工臓器や人工心肺には、血液と接触しても血栓ができず拒絶反応を示さない生体適合性材料が必要である。その一つとして最近、双性イオンポリマーが注目されている。水がこの材料に接触すると、水分子が特異な構造を持つことが知られており、これが生体適合性に寄与していると考えられている。本研究では、海洋生物がもつヒ素含有双性イオンポリマーに着目し、その水和構造を解析することによって生体親和性との関わりを明らかにする。さらに、今後の医用材料の設計に活用することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
無機化合物のヒ素は非常に毒性の高い物質であるが、アルセノコリンをはじめとする有機ヒ素化合物は極めて毒性は低く、海藻や海洋生物の細胞内に存在している。本研究では有機ヒ素カチオンを側鎖に有するメタクリル酸エステル(AsMA)をトリメルアルシンとメタクリル酸ハロアルキルを用いて合成した。得られたAsMAを臭化銅(I)ビピリジル錯体を触媒とし、トリフルオロエタノール中60Cで反応させると原子移動ラジカル重合(ATRP)が進行し、ポリマーが得られることを見出した。アンモニウム塩型モノマーに比べAsMAの重合速度は数倍程度遅いことが確認された。得られたポリマーの水和構造をDSCにより分析し、不凍水、中間水、自由水の割合を定量した。ポリマーの繰り返し単位あたり5分子程度の不凍水が存在し、中間水はほとんど存在しないことが明らかとなった。これは、従来のアンモニウム塩型ポリマーとほぼ同じ水和水量であった。また、表面開始ATRPによりアルセノコリンを有するポリマーブラシも調製した。乾燥状態で膜厚26 nmのポリマーブラシは水中に浸漬すると194 nmまで膨潤する様子を原子間力顕微鏡で観察した。これは側鎖ヒ素カチオン間にはたらく静電反発相互作用がブラシ鎖の伸長させたと考えられる。さらに、NaClなど塩水溶液中に浸漬すると156 nm程度まで収縮する挙動も観察され、添加塩効果が認められた。得られた成果は学会にて発表した。2023年5月24日(水)第72回高分子学会年次大会(Gメッセ群馬)、2023年7月19日(水)The 13th SPSJ International polymer Conference (IPC 2023) (札幌コンベンションセンター)、2023年11月27日(月)繊維学会秋季研究会(京都テルサ)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AsMAの表面開始ATRPを行い、乾燥状態で膜厚10nm~80 nmのポリマーブラシをシリコン基板上に合成した。このブラシ薄膜が水中にて膨潤し、膜厚が7-8倍変化する様子を原子間力顕微鏡の形状像およびフォースカーブ測定から明らかにした。また、重水との界面においても同様にブラシ鎖が膨潤している様子を中性子反射率測定により確認された。また、Cl-やBr-、SCN-などの陰イオンを含む塩水溶液中においてポリマーブラシのコンフォメーション変化に伴い膨潤膜厚が増大または減少することを見いだした。いずれも計画通りの進捗であり、論文投稿を準備している。一方、アルセノベタイン型モノマーの合成が達成できていない。アルキルヒ素の求核性が低いために反応が進まないことが要因である。現在、反応条件を検討し、合成を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
アルセノベタイン型モノマーの合成を目指し、反応条件の検討を進める。モノマーが得られた後、表面開始ATRPによりアルセノベタインン型ポリマーブラシを合成し、水中における膨潤挙動、ならびに塩濃度依存性について検討する。添加塩については陰イオンの影響がブラシ鎖の膨潤挙動に現れる傾向にあるため、ホフマイスター系列に沿った種類と、1価、2価などの価数の異なるアニオンを系統的に検討する。また、ポリマーの水和構造をDSCにより調べ、ポリマーブラシの膨潤挙動や表面ぬれ性との相関について検討する。アルセノベタインは海洋生物の細胞内で浸透圧調整剤として機能しているが、その理由について塩との相互作用や水和構造の視点から考察する。
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