Project/Area Number |
23K04845
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 35010:Polymer chemistry-related
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
中村 泰之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 高分子・バイオ材料研究センター, 主任研究員 (30456826)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | 架橋ポリマー / 動的共有結合 / ジスルフィド / 粘弾性 / 接着 / 配列制御ポリマー / リポ酸 / エポキシ / 架橋高分子 / 動的結合 / 精密重合 / ダイナミクス |
Outline of Research at the Start |
化学結合の組み換えが内部で起こる動的結合ポリマーは特異な粘弾性や、再加工性・再利用性を有するなど興味深い高分子材料である。ポリマー鎖中での動的結合の配置やポリマー鎖のダイナミクス変化の効果により動的結合ポリマーの粘弾性を操作できる可能性が近年見出されている。動的結合の配置はポリマー骨格や動的結合化学種と組み合わせることで、動的結合ポリマーの構造および物性設計を拡大することができる。本研究課題では、動的結合ポリマーの粘弾性に対する動的結合の配置効果について、高分子合成を基盤とする基礎研究により明らかにし、これら高分子材料の粘弾性を操作する分子化学的手法の開発を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
ポリマー鎖の組み替え部位となる動的結合部位としてジスルフィド結合を可逆的に生成するジチオラン基を有するポリマーの合成、およびその物性について研究を行った。ジチオラン基が配置制御されて導入されたポリマーの分子設計を行うとともに、ジチオラン基のサステナブルな原料として天然化合物であるリポ酸を用いる合成方法の開発を行った。パセリニ3成分重合をリポ酸に適用することにより、事前修飾を必要とすることなくリポ酸の直接的な重合反応により、リポ酸由来のジチオラン基を有するポリアミドを効率的にかつ実験的容易に合成する方法を見出した。本重合反応では用いる3種のモノマーの配列が完全に制御されるため、ジチオラン基をポリマー鎖中に周期的(配列制御的)に導入することに成功した。 得られたポリアミドはジチオラン基の開環反応により架橋ポリマーを与え、この架橋ポリマーは動的なジスルフィド結合を架橋部位としているため加熱により動的架橋ポリマーとしての性質である、加熱成型性や粘弾性変化や自己修復性を示した。さらに触媒的に架橋部位のジスルフィド基をジチオラン基に変換することで、任意に架橋前のポリマーに再生できることや、接着力および繰り返し利用性に優れた接着性能を有することを明らかにした。 ポリマーの主鎖構造はリポ酸以外の原料により選択が可能で、鎖のジチオラン基の導入個数も共重合反応によりコントロールが可能だった。さらに、共重合反応でリポ酸以外のカルボン酸を原料に用いると、その構造にしたがって粘弾性など材料物性も大きく変化することがわかり、本重合法およびポリマーが多彩な可能性を有することが見いだされた。 また、これらのほかにエポキシ材料について分子構造を研究する過程において、エポキシ中での水の動的挙動や、水の接着性への影響を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①ポリマー鎖における動的結合配置の粘弾性への効果について:動的共有結合部位として、結合の丈夫さや熱や光への応答性に優れるジスルフィドに着目して研究を行った。とくに、開環反応によりモノマー形態とポリマー形態を可逆的に変化させることのできるジチオラン基を用いたポリマーの開発を行った。ジチオランを組み込んだポリマーは想定通り開環重合によるジスルフィド結合架橋部位の形成と、加熱による架橋の組み替えが可能であった。今年度はジチオランが周期的(配列制御的)に側鎖へ導入されたポリマーの合成反応の開発と得られたポリマーの基礎および応用物性を明らかにした。合成においては共重合反応を用いることで、ポリマーの構造および官能基の導入量を柔軟に変化させることが可能であった。ジスルフィド結合架橋部位の組み替えまたはジチオランへの可逆的反応に由来する粘弾性の変化をレオメーターにより分析し、動的架橋ポリマーに特有の粘弾性や加熱溶融性(成形性)を持つことを確認した。これら性質は共重合反応によりポリマー構造やジチオラン基の数を変化させることで、コントロールも可能だった。また粘弾性は共重合反応を用いてポリマー鎖中のジチオラン基の数を変化させることで柔軟にコントロールできることを明らかにした。 ②応用性検討について:ジチオラン含有ポリマーの合成実験および粘弾性測定を通して、本ポリマーが優れた接着性を持つことを見出した。架橋構造が動的である効果が発現することを期待し、金属基材への接着→回収→再接着の繰り返し接着サイクル実験を実施した。その結果、繰り返し利用可能なホットメルト型接着剤として優れた性能を有することを明らかにした。粘弾性と同様に接着性も、重合反応においてポリマー鎖へ導入したジチオラン基の量や共重合モノマーの構造により変化させることができることも見いだされた。
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Strategy for Future Research Activity |
ジチオラン基およびこれにより形成されるジスルフィド架橋ポリマーは、種々の高分子物性を発現させる優れた官能基である。これまでに検討した周期的(配列制御的)ジチオラン基導入に加え、今後は鎖末端やブロックコポリマーへの導入など鎖の構造との組み合わせによる粘弾性および物性への効果を検討する。併せて、同様の構造を持つ16族元素化合物(セレン化合物、テルル化合物)についても検討範囲に含める。これら化合物ではより鋭敏な熱や光への応答が予想される。 パセリニ重合を用いたリポ酸を原料に用いたジチオラン含有ポリマーの一段階合成は汎用性が高い重合法である。ライブラリが多様なカルボン酸を共重合原料として用いることで、種々の特性をもつ動的架橋ポリマーを合成することができるため、本重合法を基盤とした高分子材料創成に取り組む。
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