Development of the high-performance silk materials by controlling the higher-order structure of silk proteins in aqueous solutions
Project/Area Number |
23K04859
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 35020:Polymer materials-related
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
鈴木 悠 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (90600263)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | シルクフィブロイン / 水溶液 / 液状絹 / 階層構造 / 構造転移 / シルク / 高次構造 |
Outline of Research at the Start |
カイコが生産するシルク繊維はシルクフィブロイン(SF)からなり、機械的特性・生体適合性に優れ、医用材料や生分解性材料として期待が高い。申請者は、環境に優しいシルク材料の開発を目指し、有機溶媒ではなく水を溶媒とする再生SF水溶液を用いたシルク材料開発に取り組んできたが、成形体の強度が低いという課題がある。この課題を克服するため、本研究では水溶液中のSF分子の高次構造に着目する。シルク繊維の原料である天然SF水溶液の高次構造を模倣した再生SF水溶液を作製し、シルク材料の高強度化を目指す。本研究の達成により、シルク繊維がもつ高い機械的特性と環境調和性を最大限に生かしたシルク材料開発の展望が開ける。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、天然シルクフィブロイン(SF)の階層構造とその形成条件を理解し、繭を溶解して調製した再生SFで再現することで天然SFの優れた特性を保持した再生SF材料を開発することを最終目標としている。このような目的のもと、2023年度は、以下の2点について研究を実施した。 ①金属イオン種・濃度が液状絹の高次構造に与える影響の解明:天然SF水溶液(液状絹)は、カイコ体内で絹糸腺内で生産・貯蔵される。絹糸腺は後部から前部にかけてpH、金属イオン種・濃度、SF濃度が変化し、特に金属イオンはSFの階層構造形成や構造転移に重要であると予想されている。本年度は、絹糸腺中部前区・中区・後区の各部位ごとに液状絹水溶液を調製し、CaCl2もしくはKClを添加し、イオン種及び濃度がSF分子に与える影響を溶液NMR法および動的光散乱法を用いて評価した。その結果、SF分子当たりのCa2+濃度15~20 mg/gを境に液状絹水溶液の1H NMRスペクトルに顕著な変化が見られた。特に、Ala HβおよびVal Hγと帰属された各々2つのピークについて、そのピーク強度比に変化が観測された。この結果から、Ca2+がSF鎖間で架橋を形成し、SF分子の運動性が低下しピーク強度の変化が生じたと考察できた。 ②液状絹の構造変化解析:液状絹の階層構造を理解するために、液状絹の繊維化における構造転移メカニズムを明らかにすることは重要である。そこで、固体NMR法を用いて液状絹の構造変化をリアルタイムでモニタリングする方法を提案した。固体NMR法のマジックアングルスピニング(MAS)により試料に掛かる圧力を利用し、液状絹に圧力を掛けながら測定を行うことで、構造転移を経時的に評価することに成功した。本研究成果については、論文発表、および国際学会を含む複数の学会にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示した①「金属イオン種・濃度が液状絹の高次構造に与える影響の解明」について、液状絹に対するCa2+の影響をAla HβおよびVal Hγという原子レベルで突き止めることができた。次年度以降、Ala HβおよびVal Hγの与える2つのピークが各々どのような化学環境(高次構造)由来であるかを明らかにできれば、Ca2+とSF分子との相互作用の詳細な解明につながる。一方、動的光散乱法により液状絹水溶液の粒子径測定を実施したものの、データのばらつきや再現性が低いなどの問題があり、考察を進めることが困難であった。次年度以降、装置や測定法の再検討を行い粒子径測定を実施したいと考えている。 研究実績の概要で示した②「液状絹の構造変化解析」については、論文発表および国際学会での発表等を実施することができ、順調に進展した。液状絹を固体NMR測定の試料管につめて高速回転させることで液状絹に圧力がかかり、ある時点から急激に構造転移することが示された。液状絹の構造転移は、Silk Iから構造が変化しないラグフェーズと、Silk IからSilk IIへの構造転移フェーズからなることを明らかにした。さらに、回転速度を上げる、すなわち圧力を大きくすることで、ラグフェーズが短くなることを発見した。これにより、液状絹の構造転移は圧力の大きさに依存することが示された。また、運動性の高いSilk IIの存在が確認され、結晶構造形成のシードとして働くのではないかと考えられた。この点についての詳細は、次年度以降の検討課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で示した①「金属イオン種・濃度が液状絹の高次構造に与える影響の解明」について、Ca2+濃度変化により強度変化が観測されたAla HβおよびVal Hγの2つのピークが各々どのような化学環境(高次構造)由来であるかを調べ、Ca2+とSF分子との相互作用について詳細に検討する。また、pHによる液状絹水溶液の構造変化についても評価する。次に、再生SF水溶液に対してCa2+濃度変化およびpH変化を適用し、液状絹水溶液と再生SF水溶液の挙動の相違を明らかにする。 研究実績の概要で示した②「液状絹の構造変化解析」について、固体NMRのMASにより圧力を与えられた液状絹について、SEM等によるマクロな構造状態の評価、含水率、フィブロイン濃度等を行い、液状絹の構造転移中の状態を、固体NMR測定による二次構造だけでなく、他のパラメータも用いて評価する。また、今年度の解析により提案された運動性の高いSilk II成分について、より詳細な高次構造や結晶構造形成のシードとしての役割等について評価する。さらに、①で調製した再生SF水溶液に対してもMASによる構造転移を適用し、液状絹との挙動の相違(構造転移するのか、転移後の構造、転移速度)を評価する。
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Report
(1 results)
Research Products
(8 results)