Project/Area Number |
23K04862
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 35020:Polymer materials-related
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 治樹 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 助教 (00608169)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
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Keywords | 高強度繊維 / アラミド繊維 / 疲労 / 力学的性質 |
Outline of Research at the Start |
本研究は,有機系高強度繊維のひとつであるアラミド繊維の耐疲労性の向上を目的とする.疲労現象とは,応力やひずみを繰返し受けることで強度低下や破壊を生じる不可逆的な変化のことである.本研究では,熱処理によって様々な引張弾性率を有するアラミド繊維を調製し,それら対して繰返し応力負荷による疲労試験と構造解析を実施することで,繊維内部の構造と耐疲労性の関係を明らかにする.また,アラミド繊維の疲労現象において見られる複数の破壊機構について,比較的初期に破壊を示す機構の発生を抑制するための繊維内部の構造についても検討する.それらの結果から,アラミド繊維の耐疲労性の向上についての知見を得る.
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Outline of Annual Research Achievements |
アラミド繊維の一種であるポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維について,引張試験から得られる引張強度ならびに引張弾性率と,繰返し応力を負荷する疲労試験から得られる耐疲労性の関係を調査した.その結果,引張強度と耐疲労性には相関は見なかったが,一方で,引張弾性率と耐疲労性には相関が見られ,引張弾性率の大きい試料ほど,より高い耐疲労性が得られることがわかった.また,この実験で用いたPPTA繊維においては,引張強度と引張弾性率に相関は見られず,必ずしも引張強度の増加が耐疲労性向上に寄与するわけではないことがわかった. また,PPTA繊維の引張弾性率とアミド基による分子間の水素結合との関係について調査を行い,高い引張弾性率を有する試料ほど,分子間の水素結合の形成量が多いという結果が得られた.このことから,PPTA繊維において,分子間の水素結合の形成が耐疲労性に影響を与えていることが推察された.このことの検証として,分子構造的に分子間に水素結合を形成しにくい,もしくは分子間に水素結合を形成できない分子からなる有機系高強度繊維について引張弾性率と耐疲労性の関係を調査し,PPTA繊維との比較を行った.その結果,分子間に水素結合を形成しにくい,もしくは分子間に水素結合を形成できない分子からなる有機系高強度繊維おいては,PPTA繊維において見られたような引張弾性率と耐疲労性の強い相関は観察されなかった.有機系高強度繊維において,引張弾性率と耐疲労性に相関が見られない場合もあることから,PPTA繊維の耐疲労性において分子間の結合の形成が耐疲労性に寄与している可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PPTAに異種の分子を共重合させたポリパラフェニレンオキシジフェニレンテレフタルアミド(PPODTA)繊維と,アミド基を持たない有機系高強度繊維の一つであるポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維について,PPTA繊維と疲労挙動の比較を行った.PPTA繊維においては引張弾性率と耐疲労性に正の相関が見られたのに対して,PPODTA繊維とPBO繊維においては,PPTA繊維のような相関は見られなかった.PPTA繊維,PPODTA繊維,PBO繊維ともに,引張弾性率は,分子配向や結晶化度等に大きく影響されるが,PPTA繊維においては,それらの上昇に伴い,分子間の水素結合量が増加する.一方で,PPODTA繊維はランダム共重合体であるため,子間の水素結合はPPTA繊維と比べて形成しにくい構造となっている.また,PBO繊維については,分子内に水素結合を形成する構造が存在しない.このため,PPODTA繊維とPBO繊維は分子配向や結晶化度が増加しても,分子間の水素結合量に変化はない.これらのことから,高分子からなる高強度繊維の耐疲労性には分子間の結合が重要である可能性が示唆された. PPTA繊維に対して,張力下で熱処理を適切な条件下で行うことで,引張弾性率が上昇した.また,それらの試料について赤外分光法で水素結合量を調べると,引張弾性率の増加とともに分子間の水素結合量も上昇していることが確認できた.そして,種々の張力で熱処理を施し,種々の引張弾性率のPPTA繊維試料を作製し,各々疲労試験を行うと,引張弾性率と水素結合量の増加に伴い,耐疲労性が増加することがわかった.これらのことから,アラミド繊維において,分子間の水素結合量の増加が耐疲労性向上に寄与することがわかった. 以上のことから,当初の研究計画と比較して,おおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,PPTA繊維における分子間の水素結合量と耐疲労性に相関について解明してきたが,今後は,分子間の水素結合によって耐疲労性が向上するメカニズムを解明していきたいと考えている. PPTA繊維において,引張強度と耐疲労性には,引張弾性率と耐疲労性の関係のような相関が見られないことから,PPTA繊維の破壊の起点となる欠陥の内,引張破壊の起点となるものと,疲労破壊の起点となるものは異なる可能性が考えられる.まずは,疲労破壊と引張破壊の起点について検討していこうと考えている.次に,疲労破壊における,起点からのクラックの伝播について,破断面の観察などから検討を行うことを考えている.こられの結果から,PPTA繊維の疲労現象に対して,分子間の水素結合がどのように寄与しているのか解明したいと考えている. さらにその先の計画として,2025年度からは,これらの知見を基に,疲労破壊につながる欠陥の生成の抑制と,疲労破壊過程のクラックの伝播の抑制について,取り得る方法を検討していきたいと考えている.
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