正孔/電子輸送性有機材料の積層ダイオード特性解析による簡便なキャリア移動度測定
Project/Area Number |
23K04884
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 35030:Organic functional materials-related
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
安田 剛 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 高分子・バイオ材料研究センター, 主幹研究員 (30380710)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | 有機EL / ダイオード / 有機半導体 / キャリア移動度 |
Outline of Research at the Start |
有機材料の積層ダイオードを代表する有機ELは、透明陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極のように様々な機能を有する多層膜で構成されている。その動作過程を完全に理解せずとも電圧を印加すれば、高発光が得られ、現在においては実用化に至っている。一方、材料開発においては、今後の発展が期待される熱活性化遅延蛍光材料、青色燐光材料を始め、最新の発光材料に対応可能な高性能正孔、電子輸送材料の開発が現在においても盛んに行われている。本研究では近年のデータ駆動型材料設計にも対応できるように、有機EL材料のキャリア移動度を簡便に測定できる手法を提案する。
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Outline of Annual Research Achievements |
有機材料の積層ダイオードである有機ELは現在実用化されているが、今後の発展が期待される熱活性化遅延蛍光材料、純青色燐光材料を始め、最新の発光材料に対応可能な、高性能正孔、電子輸送材料の開発が現在においても盛んに行われており、近年のデータ駆動型材料設計にも対応できるように、有機EL材料の基礎物性データを簡便に測定できる手法が求められている。 しかしながら、実際の有機EL薄膜内における基礎物性のキャリア移動度でさえ、以下に記載するように簡便には測定出来ない。有機ELの各層は数十nmの超薄膜においてもピンホールを形成しないアモルファス薄膜が用いられる。アモルファスではあるが、平面性の高い分子あるいは棒状の分子であると、製膜条件や膜厚に依存して配向し、キャリア輸送特性が大きく変わることが知られている。この為、キャリア移動度を求める従来手法のTime-of-Flight(TOF)法で必要となる厚い膜(3~10 um程度)と、実際の有機ELで用いられる超薄膜内のキャリア移動度が異なるという報告もある。実際の有機EL構造を用いて、キャリア移動度を評価する方法は、インピーダンス分光(IS)やパルス電圧印加から発光までの時間を計測する方法があるが、いずれも有機EL評価以外の装置や注意深いデータの解析が必要となる。 上記背景から、本研究では、高性能な(=電極からのキャリア注入障壁の無い)有機材料を用いて、有機ELを作製し、電流密度-電圧(J-V)特性のモデル式解析により、有機EL薄膜内での実際のキャリア移動度を簡便に求めることを目的とした。初年度は様々な正孔輸送層/電子輸送層の組み合わせの2積層有機ELにおいて、そのJ-V特性がモデル式に合致する系を見出し、キャリア移動度の導出を行い、その妥当性を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ITO/PEDOT:PSS電極にオーミック接触が可能なイオン化ポテンシャルの低いm-MTDATAを真空蒸着し、40 nm薄膜の正孔輸送層(HTL)を形成した。その後、BPhenを真空蒸着し、40 nm薄膜を電子輸送層として形成し、LiF/Al電極を真空蒸着で作製した。出来上がった有機ELのJ-V測定を行ったところ、モデル式であるJ=B(V-Vbi)^2(V > Vbi、BとVbiは定数)で実測のJ-V特性が表せることが分かった。またそのELスペクトルは、m-MTDATA、BPhenそれぞれの発光スペクトルとは異なり、長波長シフトしたエキサイプレックス発光であることが分かった。モデル式が成立するには、陽極とHTLはオーミック接触、陰極とETLもオーミック接触、正孔と電子はHTL/ETL界面で再結合することが条件であるため、このm-MTDATA/BPhen系は上記の条件を満たしていることが分かった。次にITO/PEDOT:PSS/m-MTDATA(40 nm)/HAT-CN/Agの正孔オンリーデバイスでの空間電荷制限電流より求めたm-MTDATAの正孔移動度とモデル式のB値を用いて、有機ELに実際に用いている40 nmのBPhen薄膜の電子移動度を導出した。その電子移動度はTOF法で報告されている値よりも低い移動度であったが、BPhenの電子移動度は膜厚が薄くなるとその移動度も数桁低くなるという報告もあり、モデル式から求めた電子移動度の妥当性を裏付けている。 上記の実験結果は2023年秋の応用物理学会で発表、2023年11月に出版した有機ELの教科書である「有機ELのデバイス物理」の3章に記載した。またBPhen以外の幾つかのETLでもモデル式が成立することを見出しており、当初の計画通り研究が進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、HTLとして材料をm-MTDATAに固定し、市販されている様々な電子輸送材料をETLとして積層し、モデル式の妥当性を検証してきた。その際、モデル式のJ-V特性に合わない電子輸送材料もあった。この原因として電子輸送材料(ETL)と陰極とのオーミック接触が得られていないことが推測される。陰極とオーミック接触するか否かは電子輸送材料のLUMO準位(電子親和力)が重要なパラメータであるが、LUMO準位の簡便で正確な測定が困難であるため、電子輸送材料を変化させた2積層有機ELでは、モデル式に合わないJ-V特性の場合の原因解明は困難であった。一方、HTLに用いる正孔輸送材料と陽極のオーミック接触には、正孔輸送材料のHOMO準位(イオン化ポテンシャル)が重要なパラメータであり、HOMO準位に関しては、簡便で正確な測定が可能である。そこで、次年度は、ETLに用いる材料を固定し、HTLに用いる材料を変化させた2積層有機ELの作製・測定も行い、モデル式及びモデル式から求めたキャリア移動度の妥当性をさらに検証する。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)