Project/Area Number |
23K04886
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 36010:Inorganic compounds and inorganic materials chemistry-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
栗林 貴弘 東北大学, 理学研究科, 准教授 (20302086)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | カルコゲナイド / 放射光X線異常散乱法 / 構造多様性 / Pb-Bi席選択性 |
Outline of Research at the Start |
カルコゲナイドは,現代のハイテク産業に欠かせない稀有な特性をもつ重要な天然鉱物資源の一つである。申請者は近年,新鉱物日立鉱 [Pb5Bi2Te2S6] を発見し,関連するテトラディマイト型構造をもつカルコゲナイドとの構造的な関係を新たに示した。しかし,提案した構造的関係には対論があり,この一連の鉱物グループにおける構造多様性を制約する規則は何か?について議論が続いている。本研究では,放射光単結晶X線異常散乱法によって,構造中のPbとBiの占有様式を明らかにすることで,PbS-Bi2Te2S線上に存在する一連の鉱物の構造多様性がどのような制約の中で生じるのか?という問いに対する解を探求する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,放射光単結晶X線異常散乱法によって構造中のPbとBiの占有様式を明らかにすることで,アレクス鉱系列の一連の鉱物の構造多様性がどのような制約の中で生じるのか?という問いに対する解を探求することを目指している。研究初年度は,本研究に必要不可欠な異常散乱法による放射光単結晶X線回折実験がラボではできないため,高エネルギー加速器研究機構Photon Factory, BL-10Aで行えるように実験システムを整備した。ビームラインでは,本研究内容に関する実験はルーチン化されていないため、本研究専用のシステム整備に際し、実験および解析上の問題点の把握、実験精度の確認等を行いながら,慎重にシステムを整えた。クルプカ鉱 (@Pb LIII線近傍)や四面銅鉱 (@Cu KおよびZn K線近傍)に対する異常散乱回折実験を行い,実験システムから得られたデータを評価した。四面銅鉱に関しては,関連する学会である「結晶学会」ならびに「PFシンポジウム/量子ビームサイエンスフェスタ」で成果報告した。クルプカ鉱に関しては解析を進めている。 実験システムの構築と同時進行で,本題である天然Pb-Bi-Te-S系鉱物の実験用試料の準備を進めた。対象とする天然鉱物は極微小な結晶で,その存在量も限定的なため,FIB法を活用した実験用試料の調達および調整方法を試みた。本試料に対して,FIB法が試料選択や切り出しに対して有効であることが確認でき,作業の確実性と効率化が図れた。対象鉱物の取得にも成功し,計画通り,対象鉱物の異常散乱回折実験(Pb LIII吸収端を活用)を初年度に行うことができた。その実験結果の解析を慎重に進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は,本研究の要となる異常散乱法による単結晶X線回折実験のシステム化や取得実験データの各種検討を慎重に行うとともに,目的実験試料の効率的な調達・整形方法を確立することができた。異常散乱法による単結晶X線回折実験を放射光共同利用施設(PF, BL-10A)で行い,測定の効率化や取得データの解析のルーチン化などを行った。新システムであるため,取得データの評価を、四面銅鉱 (Cu/Zn分布の評価)やクルプカ鉱 (Pb/Bi/Cuの評価)といった天然試料で行って,実験精度の確認,実験データ取得上や解析上の問題点等を整理し,その対応と改善を進めている。また,元素の席占有の定量性の議論で解析処理上の問題点が見えてきており,この対応を検討している。特に構造中のPb/Biの評価では,結晶自身による吸収の影響が強く,これまでの解析以上に吸収補正の手法に関して対応する必要があることがわかってきた。なお,四面銅鉱中のCu/Zn分布の直接的な観察は,これまでに報告例がなく,本研究から元素を区別した席占有の様子を新たに明らかにすることができた。その結果を関連する学会で報告した。 これと並行して,目的天然試料の異常散乱法による単結晶回折実験のための調達方法を検討し、取得に成功した。目的天然試料は新鉱物として発見されたもので、極小かつ入手できる存在量が限られている。そのため、ハンドリングの確実性を高める対策が必要である。最も重要な試料取出しにはFIB法が有効であることがわかった。試行錯誤の上,現状で最も結晶性の良いターゲット試料の切り出し(0.05 mm x 0.03 mm x 0.03 mm)に成功した。形状のコントロールも可能なため吸収補正対策にも有効である。取り出した結晶に対するPbLIII吸収端近傍での異常散乱法による単結晶X線回折実験を行い,現在,その解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られたデータの解析を進めるとともに,解析上の問題点として考えられる定量性について,どの程度の定量性の議論が可能か?や処理上の問題点などを検討し改善を行う。定量性に最も影響を与える吸収補正が解析成功の重要なカギの一つである。結晶の取り出しに使用するFIB法は,結晶の形状の整形にも適用できるため,その機能を活用して形状を整えた良質な結晶の取得を目指し,吸収補正の適用度を上げる。また,化学組成がわずかに異なる領域が存在するので,その領域から結晶取り出すことで,その組成差の意味と構造多様性について検討を進める。良質な結晶による異常散乱回折実験を行い,解析結果の精度を高め,信頼度の高い議論を行うことを目指す。
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