Project/Area Number |
23K05057
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 38040:Bioorganic chemistry-related
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
手林 慎一 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (70325405)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
|
Keywords | 植物ホルモン様物質 / 生長促進活性 / アカバナ科 / 植物生長促進物質 / イネ / 植物ホルモン |
Outline of Research at the Start |
植物ホルモンは植物の生長や環境応答などの生命現象に係わる因子であり、その重要性から生理学的な研究が精力的になされている。そのような研究においては植物ホルモンのアゴニストやアンタゴニスト、特に植物ホルモンと構造が大きく異なるアゴニストは未知の生理作用を示すことがあるため、重要なケミカルツールとなる。申請者は偶然ではあるが高知県産野生植物の地上部から植物ホルモン様活性の検出に成功した。新奇構造の可能性もあるこの植物ホルモン様物質を単離・同定し、その生理活性の特性を解明する。さらに、植物における一般性を調べ該当物質の植物ホルモンとしての可能性も探る。
|
Outline of Annual Research Achievements |
植物ホルモンは植物の生長や環境応答などの生命現象に係わる因子であり、その重要性から理学的な研究が精力的になされている。これらの研究には植物ホルモンのアゴニストやアンタゴニストが必要とされ、特に植物ホルモンと構造が大きく異なるアゴニストは未知の生理作用を示すことがあるため、様々な研究で重要なケミカルツールとなる。そのため新奇な植物ホルモン様物質の発見が常に課題となっているが、意外にも植物自体から新奇な構造をもつ植物ホルモン様活性物質が報告された例はほとんどない。そのような中、偶然ではあるが、申請者はアカバナ科植物の地上部抽出物から植物ホルモン様活性の検出に成功した。すなわち、植物地上部位のメタノール抽出物およびこれを液-液分配分画した各画分にはイネ根に対する生長抑制活性が観察されるが、液-液分配分画における水層をODSカラムにて精製すると5%メタノール-水画分(5%M/H)には生長促進活性が確認された。さらに、この生長促進活性は該当画分に含まれる微量な植物ホルモン類(サリチル酸配糖体、イソペンテニルアデニン、ジベレリン(GA1およびGA4))の活性ではないことや一定の濃度域でのみ濃度依存的な伸長活性を示すことから、ホルモン様物質の存在を予想した。そこで、新奇構造の可能性もあるこの植物ホルモン様物質を単離・同定し、その生理活性の特性解明を目指している。現時点では、大量に採集した植物地上部からの抽出物を既に確立した方法で精製すると4回のODSカラム精製にて分取HPLC精製が可能な状態に至ることが判明した。この画分の主成分(ウリジン)には成長促進活性は無いことから、活性成分は少なくとも30ppmで植物生長促進活性を示すことが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、高知大学物部キャンパスにて野生栽培したアカバナ科植物地上部2.3kgを採集し、90%MeOHで滲出抽出することで抽出物を得た。これを予備試験と同様に液-液分配分画でHexane層、Et2O層、EtOAc層、H2O層に分画し、H2O層をODSカラムクロマトグラフィーで分画しイネ生長促進試験に供試した。すなわち濾紙に試料を塗布して乾燥させたものをシャーレに設置し、催芽処理を終えたイネ種子を播種し27℃の人工気象器内で5日間栽培した。播種後1~5日間の根の長さを測定し生長阻害及び生長促進率を求めた。しかし予想に反していずれの画分にも生長促進活性は確認されなかった。生長促進物質と生長阻害物質の未分離が予想されたためさらに2回のODSカラムでの精製を行った。即ち、2回目のODSカラムにてMeOH/H2O(M/H)系の溶媒にて精製した5%M/H画分をさらに3回目のODSカラムにてMeCN/H2O(A/H)系の溶媒で精製すると5%A/H画分に初めて生長促進活性が確認された。この画分を再度ODSカラムにてMeCN/H2O(A/H)系の溶媒で精密に分画することで活性画分を精製した。これをUV検出器を設備したHPLCで分析するとほぼ単一のピークを与え、最大ピークはLCMSの分析結果と標準物質との比較からウリジンであると同定した。しかし、ウリジン標準物質を用いた生物試験ではウリジンの含有範囲では生長促進活性は確認されず、目指す活性本体はウリジン以外の極微量成分であることが判明した。実際に4回目のODS分画における活性画分をODSカラムを用いた分取HPLCで精製すると、ウリジン以外の画分に活性が確認された。現在、この画分の大量調整を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究ではアカバナ科植物地上部からイネ根伸長促進活性を指標としてユウゲショウ地上部から「(A)活性物質の同定」を行ったうえで、「(B)活性物質の特性解析」を行うことで、植物生理学上の新たなケミカルツールの創造を目指し、さらに同定物質の植物界での存在や応答の「(C)一般性解析」を行うことで、植物ホルモンとしての可能性を探る予定である。 現在は「(A)活性物質の同定」を実施中であり、本項目が以降の試験を左右するため引き続き最優先で実施する。昨年は植物体2.3kg程度からの単離を目指したが不足が予想されるため本年度は10kg以上の採集を行う予定である。得られた試料は既に確立しているスキームをもとに精製し活性促進活性の単離を目指す。精製の最終段階においては昨年度導入した示差屈折率検出器が精密なHPLC分取に効果を発揮すると考えている。単離した生長促進物質は質量分析や核磁気共鳴分析等のスペクトルに基づき構造を決定する。必要に応じて誘導体化や合成的手法を用いて推定構造の確認も行う。 本年度の採集量においても試料不足である場合を想定し農場圃場へのアカバナ科植物の播種・栽培を計画しており、これに必要な種子の採集現在行っている。また未同定であっても活性物質が単離できた場合は単離物質を用いて試験B, Cを遂行する予定である。 研究成果は植物ホルモン様物質の単離・同定については天然物化学領域の国際誌へ、活性物質の特性解析の詳細については植物関連領域の国際誌に投稿予定である。もし、同定物質が植物ホルモンである可能性が示された場合にはトップジャーナルへの投稿も計画する。また活性物質に高い新規性あるいは進歩性が認められた場合には特許取得も視野に入れている。
|