Project/Area Number |
23K05106
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 38050:Food sciences-related
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Research Institution | Research Institute of Environment, Agriculture and Fisheries, Osaka Prefecture |
Principal Investigator |
新名 世実 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), 食と農の研究部, 研究員 (20909981)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園田 素啓 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 准教授 (90314400)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | アントシアニン / 会合 / 亜臨界水 / 色素芳香成分・機能性成分 / 溶媒・固相抽出 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、高温高圧下で色素を安定化させる機序の解明と、ユニークな着色制御技術の基盤構築を目的とする。天然色素の有力な新規抽出手段と期待される亜臨界水処理は、短時間、水中にて高温高圧処理を行う方法である。驚くべきことに、通常不安定とされる中性・高温・高圧条件下にも関わらず、①亜臨界水処理で抽出された天然色素(アントシアニン)は、分解を受けずに立体構造を維持していた。加えて、②抽出後に経時変化で退色した抽出液が低温暴露によって再び元の色を呈する現象を申請者は見出した。そこで、①②の現象を超分子構造、すなわち会合で合理的に説明できないかと着想し本研究で解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、退色しやすいアントシアニンが亜臨界水処理という高温高圧下で安定して抽出できる機構の解明と温度による発色制御技術の開発を目的とし、アントシアニンの一種であるナスニンを対象に、安定化と発色に寄与していると考えられる会合体の形成を検証する。一般的に、アントシアニンは酸性条件でカチオンとなり構造が安定化するが、会合体は形成されにくいと考えられている。そこで、ナスニンについて、核磁気共鳴(NMR)測定に適した中性の重溶媒について検討を行ったところ、重メタノールを溶媒として用いた場合はごく短時間で退色したために十分な感度のNMRスペクトルを得られなかったが、重水を溶媒として用いることでNMRスペクトルを得ることができた。次に、会合形成を示唆するNMRスペクトルにおける化学シフトの変化を観測する目的で、ナスニンの濃度を10-5 M、10-4 M、10-3 Mと高くしてNMR測定をを試みたが、10-3 M以上の高濃度ではシグナル線幅が広がったため、正確な化学シフトの変化を観測できなかった。なお、高濃度におけるシグナル線幅の広がりは会合形成が影響している可能性がある。そこで令和6年度はシグナル線幅の広がりが軽減されると見込まれる低温NMR測定の実施を予定している。これにより会合形成に寄与する分子構造が推定できるものと考えている。さらに、NMR測定のデータ数を増やすことで会合定数を算出し、会合形成時における立体構造の推定を予定している。 また、5×10-4 Mのナスニン水溶液について、23℃におけるCD測定の結果と5℃におけるCD測定の結果を比較したところ、23℃では確認されなかったコットン効果が5℃では確認された。この結果から、室温で発色が減衰した亜臨界水抽出液を冷凍すると発色が回復する現象(温度依存性)についても会合形成で説明できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
会合の形成によるものと考えられる、高濃度におけるNMR測定でのシグナル線幅の広がりと低温のCD測定でのコットン効果を確認することができ、会合定数の算出にも着手しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度のNMR測定では、会合形成によるものと考えられるシグナル線幅の広がりが確認された。シグナルを帰属し、会合に寄与する分子構造を明らかにするため、低温測定によりシグナル形状の改善を目指す。 また、会合する際の詳細な立体構造について、アシル基をもつアントシアニンは、芳香環をアシル基で挟み込むサンドイッチ構造(後藤俊夫, 他, 化学と生物, 22, 827-832(1984))もとり得るとされており、ナスニンについても3位の側鎖のクマル酸と芳香環部分でサンドイッチ構造を形成している可能性を確認するべきである。今後は、分子間の相互作用の強さを表す会合定数の計算や理論化学計算により求めた化学量論に基づいて設定したドッキングシミュレーションなどを継続して行う予定である。
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