慢性腎臓病患者を対象とした栄養補助食品(低リン食品)の新規開発に向けた基礎的研究
Project/Area Number |
23K05138
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 38050:Food sciences-related
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
木戸 慎介 近畿大学, 農学部, 准教授 (30437652)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 慢性腎臓病 / リン管理 / 食事療法 / リン制限 / たんぱく質制限 |
Outline of Research at the Start |
食品に含有するリンはその多くが腸管より吸収され、余分なリンを腎臓から排泄することで血中リン濃度を維持している。腎機能が破綻した透析患者では余分なリンが体内に蓄積することで種々の合併症をきたすことから、その予防にはリンを多く含む食肉などを制限することが推奨されるが、たんぱく制限を中心とした既存の食事療法は、その献立作成並びに調理法の複雑さから満足度の高い食事を提供することが難しく、治療の継続ができずにドロップアウトする患者も少なくない。本研究では、肉類を中心とした食材に含まれるリン量を低減した新たな透析患者向け食事療法の実現に向けた調理学的工夫を見出すことにより、透析患者の食のQOL向上を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
食品に含有するリン(P)はその多くが腸管より吸収され、余分なリンを腎臓から尿として体外に排泄することで血中リン濃度を維持している。腎機能が破綻した透析患者では余分なリンが体内に蓄積することで血管異所性石灰化などの合併症を招く要因となることから、その予防にはリンを多く含む食肉などを制限することが推奨されている。一方で、タンパク制限を中心とした既存の食事療法(主に慢性腎臓病患者向け)は、その献立作成並びに調理法の複雑さから満足度の高い食事を提供することが難しく、治療が継続できずに治療を中断(ドロップアウト)する患者も少なくない。本研究では、肉類を中心とした食材に含まれるリン含有量を低減した新たな透析患者向け食事療法の実現に向けた調理学的工夫を見出すことにより。透析患者の食のQOL向上を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画(実施方法)に一部変更が生じたものの、概ね順調である。鳥獣肉(今年度はこれまで検討に用いてきた鶏肉を使用)における調理学的工夫によるリン低減方法として、減圧調理器の導入を予定していたが、購入予定の機器が販売中止となったため、今年度の購入を断念し、これまで使用していた真空調理器での検討を継続することにした。食肉軟化剤として汎用される市販タンパク分解酵素を用いた検討では、酵素処理を行った鶏肉で、処理前後のリンの量に大きな差異は見られなかったが、真空条件下で酵素処理を行う(真空処理後に常圧に戻す際に酵素液が肉内部まで浸透する事を期待)ことで、未処理と比較して最大30%程度のリン低減効果が確認できた。現在、真空処理の最適条件を検討中である。 また酵素処理条件の検討については、これまで検討を進めてきたタンパク分解酵素に加えて、組換DNA技術を基盤にOYC-GM1株を利用して生産された酸性フォスファターゼを用いた検討を加えた。本酵素は酸性領域に至適pHをもつリン酸エルテル分解酵素であり、脂肪族・芳香族のリン酸エステルを加水分解し、リン酸基を遊離させる作用を有する。そこでまずはこの酸性フォスファターゼによる処理により、鶏肉中のリン含量が変化するか否かについて検討を試みた。酵素処理条件は前述のタンパク分解酵素と同じとし、酵素処理あるいは真空条件下での酵素処理により鶏肉に含まれるリン含量に変化が見られるか検討を行った。その結果、先程のタンパク分解酵素と同様、酵素処理単独では明らかなリン低減作用を認めないものの、真空処理と組み合わせることで20%程度のリン低減効果を認めた。酵素処理条件の詳細については現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
市販のタンパク分解酵素及び酸性フォスファターゼについては、引き続きその至適条件(酵素濃度、反応温度など)を検討するとともに、同性質を有する他の製品についてもいくつか購入し、検討を加える。酸性フォスファターゼは古くから畜肉中にも一定量存在することが知られており、畜肉加工目的で添加された5'-IMPあるいは5'-GMPなどのヌクレオチド(調味料)が最終製品中には残存しにくいことからも、その存在が推測されるが、その酵素活性を含めた内在性酵素の諸性質については報告が乏しい。そこで本研究では、鶏肉が有する酸性フォスファターゼの諸性質を調査することを目的に、5'-IMPを基質とした際の酵素活性を指標に、酵素活性に影響を及ぼす条件として、各種金属イオン(Mg2+、Ca2+、Zn2+、Mn2+、Ni2+、Co2+など)やその反応温度・pHに着目し、検討を行うことで、内在性の酸性フォスファターゼを活用した新たなリン低減化の可能性について調べる予定である。また、これら酵素処理による効果を高める反応条件として、真空調理器の活用についても引き続き検討を進める。 また、リンは植物性食品にも多く含まれることが知られている。植物性食品に含まれるリンの体内吸収率は動物性食品由来のものに比べると低いが、米などの穀類においては総供給熱量の50~60%を占める「主食」であることを鑑みると、無視できない存在である。そこで本研究では、植物体中に存在するリン(例えば穀類や種実類ではフィチン酸として存在することが知られている)の存在様式に合わせた各種加工処理により、植物性食品においても動物性食品と同様にリン低減化ができるのかについて検討を加える。本研究では、フィチン酸を加水分解可能なフィターゼに着目し、植物性食品におけるリン低減化方法の早期実用化を目指す。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)