Project/Area Number |
23K05154
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 38060:Applied molecular and cellular biology-related
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
高澤 涼子 東京理科大学, 薬学部薬学科, 准教授 (10398828)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | Glyoxalase I / がん / NF-E2-related factor 2 / xCT |
Outline of Research at the Start |
毒性代謝産物消去酵素Glyoxalase I (GLO I)は,種々のがん細胞で高発現しており,その阻害ががん細胞にアポトーシスを誘導することから,新規制がん剤開発の有望な分子標的とされている.本研究では,GLO I阻害によるアポトーシスに影響を与える可能性のある因子として転写因子Nrf2とシスチン・グルタミン酸トランスポーターxCTに着目し,これらとGLO Iの阻害剤の併用効果を検証することで,「がん細胞においてGLO I阻害が引き起こす代謝リプログラミング」と,「それを抑制してGLO I阻害誘導アポトーシスを増強し,効率的にがん細胞を死滅させることができる併用薬ターゲット」を明らかにする.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,解糖系におけるジカルボニルストレス消去の律速酵素であり,がん細胞で高発現がみられるGlyoxalase I (GLO I)に着目し,がん細胞の生存・増殖におけるGLO Iの活性制御機構の解明を目的とする.GLO I高発現がん細胞において,GLO I活性阻害がアポトーシスを誘導することから,GLO Iは,新規制がん剤開発の有望な分子標的として注目されている.2023年度は,がん細胞においてGLO I阻害で誘導されるアポトーシスに影響を与える可能性のある因子として,生体防御遺伝子群の発現を制御する転写因子NF-E2-related factor 2 (Nrf2)に焦点を絞り,その特異的阻害剤とGLO I阻害剤の併用がアポトーシス誘導にどのような影響を与えるかを検証した.まず,GLO I発現へのNrf2の影響について,GLO I高依存性培養がん細胞を2種類用いて,Nrf2阻害剤ML385処理によるGLO Iタンパク質量の変化を解析したところ,ML385処理濃度依存的にGLO Iタンパク質量が減少したことから,Nrf2阻害によってGLO Iの発現が低下することが明らかとなった.さらに,Nrf2阻害剤,Nrf2活性化剤併用がGLO I阻害によるアポトーシスに与える影響について,Nrf2阻害剤ML385,Nrf2活性化剤sulforaphaneとGLO I阻害剤TLSC702を用いて検討した.その結果,Nrf2阻害剤の併用によってGLO I 阻害剤誘導アポトーシスが増強されること,Nrf2活性化剤の併用によってGLO I 阻害剤誘導アポトーシスが抑制されることを明らかにした.本研究で得られた知見は,がん特異的代謝をターゲットとした制がん機構を考える上で大変意義深いものであり,GLO I高発現悪性腫瘍に対する治療法を提案し,がん治療の選択肢拡大につながることが期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の課題として,GLO I発現へのNrf2の影響の検証と,Nrf2阻害剤,Nrf2活性化剤の併用がGLO I阻害によるアポトーシスに与える影響の検証を予定していた.前者について,GLO I高依存性培養がん細胞2種を用い,Nrf2阻害剤ML385処理によるGLO Iタンパク質量の変化をウエスタンブロット法で解析することにより,Nrf2阻害がGLO I発現を低下させることを明らかにした.後者のうち,Nrf2阻害の影響については,上述の細胞を用いてNrf2阻害剤ML385とGLO I阻害剤TLSC702の併用実験を行い,Trypan blue染色による細胞数カウントで,単剤と比べて2剤併用処理で死細胞率の増加と生細胞数の減少が相乗的にみられることを確認した.さらに,2剤併用処理で誘導される細胞死へのアポトーシスの関与について,アポトーシスの生化学的指標であるPARP限定分解をウエスタンブロット法で解析したところ,2剤併用処理でPARP限定分解が強くみられたことから,2剤併用によってアポトーシスが増強されることが示唆された.また,Nrf2活性化の影響について,Nrf2活性化剤sulforaphaneとGLO I阻害剤TLSC702の併用実験を行った.まず,sulforaphane処理によるGLO Iタンパク質量の変化をウエスタンブロット法で解析したところ,GLO I発現の増加が確認された.さらに,sulforaphaneの併用がTLSC702処理で誘導される細胞死を顕著に抑制することがTrypan blue染色による細胞数カウントで明らかとなった.以上から,Nrf2阻害によってGLO I発現を低下させることで,GLO I阻害剤による細胞死誘導を促進することができるという仮説を強く裏付ける結果を得られたといえる.したがって,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の研究から,GLO I高依存性がん細胞において,Nrf2阻害によってGLO I発現を低下させることで,GLO I阻害によるアポトーシスを促進することができるという仮説を強く裏付ける結果を得ることができた.Nrf2とGLO Iの相互関係について明らかにするために,2024年度は,Nrf2阻害によるがん細胞の増殖抑制へのGLO I発現低下の寄与について検証する.また,GLO Iは,がん細胞の増殖だけでなく,上皮間葉転換(EMT)による転移・浸潤能の獲得にも寄与することが報告されている.そこで,GLO I高依存性がん細胞において,GLO I阻害によってがん細胞の転移・浸潤が抑制できるか否かを調べ,さらにその抑制作用をNrf2阻害によって増強できるか否かを検証していく. 本研究では,がん細胞においてGLO I阻害によるアポトーシスに影響を与える可能性のある因子として,シスチンの取り込みを担うアミノ酸トランスポーターであるxCTにも着目している.xCTは多くのがん細胞において高発現しており,シスチンの取り込みを増やすことでグルタチオン(GSH)レベルを高く維持し,酸化ストレスの回避に寄与すると考えられている.また,GSHは,GLO Iの基質(MG-GSH)の一部であり,MGの解毒に必要である.本研究では,xCT阻害によって細胞内GSHを減少させることでGLO Ⅰ阻害剤による細胞死誘導を促進することができるという仮説を立て,GLO I阻害剤TLSC702とxCT阻害剤sulfasalazine, erastinの併用が培養がん細胞の生存・増殖へ与える効果について,細胞解析実験を行う.Nrf2, xCT, GLO Iの三者には,その発現制御および活性制御において密接な関係があることが予測される.2024年度の研究を,Nrf2-xCT-GLO Iの相互関係の解明につなげていく.
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