Project/Area Number |
23K05182
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 39020:Crop production science-related
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
柏木 孝幸 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (40595203)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | 低登熟化 / 稲発酵粗飼料 / 実肥 / QTL集積 / 低登熟 / 炭水化物蓄積 / 発酵粗飼料用イネ |
Outline of Research at the Start |
発酵粗飼料 (WCS) 用のイネでは優れた発酵性や消化性のため短穂化が重要な形質となっているが、籾数の低下は採種効率を著しく低下させる。一方で低登熟化は籾への炭水化物転流を抑えて茎部を高糖化することが可能であり、さらに実肥での登熟歩合向上が可能な場合は種子生産性向上も期待できるが、WCS用イネとしての適性は不明である。本研究では低登熟性遺伝子座「LPW4」を用い、低登熟化のメカニズム、茎内炭水化物蓄積特性への影響及び実肥が低登熟性に与える影響を明らかにする。さらに、茎部の高糖化に関与する耐倒伏性QTLとの集積系統を用いてさらなる高糖化を検証し、新たなWCS用イネのデザインを構築する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度の計画に基づき、低登熟性遺伝子座LPW4を有する同質遺伝子系統(NIL-LPW4)について、穂の登熟性及び稲発酵粗飼料の関連形質を解析した。穂あたりの一次枝梗数及び二次枝梗数においてコシヒカリとNIL-LPW4の間で有意な差は確認されなかったが、各一次枝梗に着生する空籾数ではNIL-LPW4が2.1-10.6倍多かった。1株あたりの穂数は同等であったが、1穂粒数が13%増加し、登熟歩合と粒重がそれぞれ29%、4%低下し、最終的に穂あたりの収量が33%、株あたりの収量が22%低下した。次に、LPW4が茎内非構造性炭水化物(NSC)蓄積に与える影響を解析した結果、完熟期にスターチを主としてNSC蓄積量が約1.5倍となった。LPW4の低登熟に対する実肥による登熟回復性評価を行った結果、実肥はNIL-LPW4の登熟歩合及び粒重をそれぞれ19%、5%程度回復させ、穂あたりの収量及び株あたりの収量がそれぞれ37%、22%増加し、慣行栽培のコシヒカリと同等の収量を得ることができた。一方でコシヒカリとNIL-LPW4は両者とも実肥による茎内NSC蓄積の変化は確認されなかった。以上のことから、LPW4は穂の構造を変えることなく空籾の着生数を増加させ、登熟歩合及び穂重を低下させていた。さらにこの低登熟性によりNSCの穂への転流が抑制され、茎内NSC蓄積が増加することが示された。また、このLPW4の低登熟効果は実肥によって抑えることができることが確認された。LPW4と茎内NSC蓄積性QTLであるprl5及びPRL4の集積系統育成のために交配したF1系統について遺伝子型解析による集積の確認とホモ個体選抜のための採種を行った。集積系統はそれぞれ対象となるQTL領域を含む領域に親品種由来の染色体断片が含まれていることをDNAマーカにより確認し、選抜用の種子をそれぞれ1000粒程採種した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はLPW4による低登熟の特徴を解析し、これによる茎内NSC蓄積への影響を明らかにした。加えて、LPW4とprl5及びPRL4の集積系統育成のためにそれぞれのNILを交配し、F1系統の種子を採種した。その結果として、LPW4は穂構造位おける枝梗数には影響しないが、穂先から基部まで空籾を着生させ、登熟歩合を6割程度に抑えており、この低登熟性が茎内NSC蓄積の増加に寄与していることが示された。さらに、LPW4による低登熟性に対する実肥の効果を確認したところ、登熟性が回復し、採種効率の向上が確認された。本年度の結果からLPW4による低登熟性の付与は発酵粗飼料用イネに適した機能になり得ることが示唆された。研究成果の公開として学会発表を実施できなかったが、研究内容自体は当初の計画通り進んでおり、順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は本年度実施したLPW4 による低登熟化メカニズムの解明(穂の構造及び収量特性)、LPW4 による低登熟性が茎内NSC蓄積に与える影響、LPW4 の低登熟に対する実肥による登熟回復性の評価について再度解析し、本年度の結果について確認を行う。加えて、育成したF2集団からLPW4とprl5及びPRL4とのホモ化した集積系統の選抜についてDNAマーカーを用いて実施し、選抜した系統の低登熟性及び茎内NSC蓄積性を解析し、実肥による登熟回復性の評価を行う。
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