Project/Area Number |
23K05219
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 39030:Horticultural science-related
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
実山 豊 北海道大学, 農学研究院, 講師 (90322841)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | 植物培養細胞 / 遺伝資源保存 / 乾燥保存 / ガラス化転移温度 / 遺伝資源 / 常温ガラス化転移 / 適合溶質 |
Outline of Research at the Start |
本応募は、植物由来の培養細胞を用い、細胞内の常温ガラス化を誘導する最適環境を明らかにすることで、従前の「超低温保存」に代わる「乾燥保存」の可能性を見出すことを目的とする。常温ガラス化転移の機序は、一部の微生物や極限環境生物を除き未だ不明な点が多い。応募者はこれまで、植物の超低温保存技術に関する研究に携わってきたが、最近、生細胞の常温ガラス化転移温度定量を可能とする機会を得た。本応募課題では、既存の超低温保存技術に、常温ガラス化転移過程を組み入れ、実用に耐える植物遺伝資源の乾燥保存を探索するものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
既存の凍結保存例や乾燥細菌の既報を参考とし、スクロース及びグリセロール溶液を用いた乾燥前処理をアスパラガスのEmbryogenicカルスに施したところ、乾燥(1日)後に保存すると、保存3日以内に茶色に変色し、生存したものを見出すことができず、DT50(Dry Treatment for 50% of survival:供試したカルスの50%が生き残る保存日数)の延長が、前培養および乾燥処理で誘導されることを見出せなかった。 今後は、本年度に供試できていない物質へも使用範囲を広げ、また、乾燥保存する温度も冷温域に幅を広げ、保存日数が延長できる乾燥前処理の模索を続ける。 乾燥前処理の至適条件を評価するために、乾燥カルスをTRA(Thermal Rheological Analysis)及びDSC(Differential Scanning Calorimetry)に用いたところ、乾燥前処理せずに10日間乾燥させたカルスのガラス化転移温度(Tg)が40-45℃付近と定量できたものの、他の条件で処理したカルスのTgは、カルスの物性上の問題で正常に定量し得なかった。つまり、カルスのTRAまたはDSC定量条件は、前処理に影響を受けることが判明したため、更に精査する必要があると推察された。 今後の実験の進め方については、以下のように変更する。まずDT50を少しでも延長すべく前処理の探索を行った後に、至適乾燥前処理後サンプルのTRAまたはDSCへの定量条件を精査してからTg推定を行い、これにより乾燥保存の成立メカニズムについて考察する。また供試材料には、既報にて乾燥保存後の再生率が高いことが判明しているカンキツ珠心胚(Sugawara et al., 2013, Cryobiology, 67: 436)の使用についても模索する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究より、供試材料のアスパラガスのEmbryogenicカルスは凍結保存が可能とされており、本研究トピックにおいても乾燥耐性が容易に高まるものと推定していたが、既報に記載の乾燥前処理後にも、乾燥後再生率が向上し得なかったのは想定外であった。そのため2年目も乾燥保存前処理の模索について続けることになった。 また、TRA(Thermal Rheological Analysis)及びDSC(Differential Scanning Calorimetry)を用いたガラス化転移温度の推定についても、細菌類で成功事例のあることから、細かく粉砕した乾燥カルスであれば定量可能と考えていたが、乾燥状態の程度(すなわち含水率)が定量可能幅に影響することが新たに判明し、定量を実施する期日の湿度も含めて精査する必要が生じた。よって、ガラス化転移温度の推定は、至適な乾燥前処理の同定後にサンプル種別を絞ってから行うことが必要と考えた。 次年度はまず、アスパラガスのEmbryogenicカルスについて、乾燥後再生率を向上させる前処理の探索幅を拡充し、加え、保存環境の低温化(冷温域)まで広げ、少しでも「乾燥保存」が可能な技術の開発に焦点を当てる。
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Strategy for Future Research Activity |
改訂すべく点が3点ある。まず、本年度に供試できていない物質、例えばラフィノース、トレハロース、適合溶質(グリシンベタイン、プロリン)などにも、乾燥前処理に使用する物質の範囲を広げる。また、乾燥保存する温度を冷温域に幅を広げることで長期間保存できたイネ培養細胞の事例もあり(Yamaguchi et al., 2013, 低温生物工学会誌, 59 (2):83-93)、その先行事例を参考として保存温度も再考し、乾燥保存日数が延長できる乾燥前処理の模索を続ける。 次に、TRA及びDSCでのサンプル定量条件について、サンプル含水率が大きく影響することが判明したため、ガラス化転移温度の推定と至適乾燥前処理条件の同定の順番を入れ替える。これにより、乾燥前処理条件の探索幅について時間をかけて広げなければならないが、サンプルの状態を絞ってからそのガラス化転移温度を推定する方が効率的に定量できると考えた。乾燥処理が成立する要因の解明に、推定したガラス化転移温度に用いることを考えている。 最後に、アスパラガスのEmbryogenicカルスよりも乾燥耐性に長けた材料を用いる可能性を模索する。本カルスは凍結保存系が既に示されているが、乾燥耐性については不明であるため、既報で示されているより乾燥耐性の高い材料を追試することも、本研究の達成に寄与すると考えた。現在培養方法または培養細胞入手方法について既報著者にインタビューを行っている。
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