Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
我が国は、国際的に保護が叫ばれる絶滅危惧種のタイマイ、アカウミガメ、アオウミガメの3種が産卵を行う為、その資源回復の重責を担っている。しかし、一般に実施されている卵管理の方法は改善の余地が多い。これらは異なる産卵深度を選好するが、上層ほど平均温度は高く、日内変動の振幅は大きく、各種で孵卵温度への感受性が異なる可能性がある。本研究の目的は、各種で孵卵温度に伴う表現型の違いを調べ、これに関わる生理学的機構の一端を解明し、各種に最適な孵卵条件を究明する事である。その結果に基づき、従来の保護活動を見直して新しい指針を作り、日本産ウミガメ3種の資源回復に貢献する。
日本は、国際的に保護が叫ばれる絶滅危惧種のタイマイ、アカウミガメ、アオウミガメの3種が産卵を行う砂浜海岸を有し、その資源回復の重責を担っている。近年、ウミガメ産卵地では環境劣化が著しく、地域の保護団体が卵を孵化場に移植して管理を行うケースが多い。自然回復が見込めない現状では自然下での孵卵成功が危ぶまれる為、人工環境下での卵管理も有効な手段の一つとして技術の発展をはかる必要があるが、一般に実施されている卵管理の方法は改善の余地が多い。例えば、環境省が提示する「ウミガメ保護ハンドブック」の現場実践ガイド欄では、孵卵温度は26~32℃と大まかな記述にとどまり、また、種ごとの詳細な指針も無い。この3種は同一砂浜内でも異なる産卵深度を選好するが、砂中の上層ほど温度は高く、かつ日内変動の振幅は大きく、各種で温度への感受性が異なる可能性がある。孵化直後のウミガメは,フレンジーと呼ばれる著しく運動活性の高い状態を呈する。幼体が脱出直後に泳ぎ続けるフレンジーは,捕食者の多い沿岸から速やかに離れ,成育場に到達するのに役立つが、この性質は孵卵温度で変化する事が知られる。孵卵温度により誘発される孵化幼体の表現型の違い(体サイズ・形、運動能力等)は、適応度の違いをもたらし、生存率とは個体群存続に重要な役割を果たすと考えられる。ウミガメの場合、各地の研究者・団体によって卵管理や人工繁殖の活動が行われているものの、各種の初期生態には未だ不明な点が多く,各種に最適な孵卵・管理条件の確立には至っていない。本研究の目的は、各種で孵卵温度に伴う表現型の違いを調べ、これに関わる生理学的機構の一端を解明し、各種に最適な孵卵条件を究明する事である。これまで各種に好適な平均温度帯及びその変動条件を調べてきた。その結果に基づき、従来の保護活動を見直して新しい指針を作り、日本産ウミガメ3種の資源回復に貢献する。
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
2024年度に高知海岸での上陸産卵痕跡調査によってアカウミガメの産卵巣5巣を得た。これらをいずれも24時間以内に高知大学の実験施設へ輸送後、各巣の卵を3分割し、それぞれ孵卵温度を①一日中温度変動のないC区(29℃);②一日に2℃変動するF1区(29 ± 1℃);③一日に4℃変動するF2区(29 ± 2℃)に設定した孵卵器に分けて管理した。孵化を確認した日の4日後に、幼体の甲長、甲幅、体重、鱗式、血中グルコース濃度、未孵化卵の卵径、卵重を測った後、死亡した胚のステージを分類した。また、死亡胚を調べ、孵化直前の後期胚の卵黄収納率(全卵黄中の腹甲表面よりも内側に入った卵黄の割合)、卵黄重、初期胚および後期胚の割合を調べた。その結果、C区では血中グルコース濃度と死亡胚の卵黄収納率が低くなり、また、死亡胚の卵黄重が大きく、後期胚の割合が高くなった。このことから、孵卵時に温度変動が全く無い場合、卵黄吸収、収納が円滑に進行しないと考えられる。孵化幼体の血中グルコース濃度の低さと未孵化卵の後期胚での死亡率の高さはその帰結であり、結果、孵化率が低下したと考えられる。F2区では孵化幼体の体サイズ、死亡胚の卵黄重および後期胚の卵重が小さかったことから、体組織に移行せずに代謝で消費された卵黄が多かった可能性が考えられる。さらに、F2区の死亡胚は他の実験区よりも初期胚の割合が高く、激しい温度変動が原因で胚が初期段階で死亡している可能性があり、その結果、孵化率が低下したと考えられた。今回の実験ではF1区で卵黄収納率、および孵化率が最も高い傾向にあり、かつ鱗式変異率も低く、奇形個体も見られなかった。よって、アカウミガメ卵を管理するうえで孵卵温度に適度な(2℃ほど)日内変動を設定することで正の効果が得られると考えられる。
ウミガメが産卵を行う砂浜の内部では、日射により日内の温度変動が発生する。アカウミガメでは、孵卵温度に適度な(2℃ほど)日内変動を設定することで正の効果が得られるがこれを結論づけるにはまだ観察事例が十分とは言えない。ついで、アオウミガメとタイマイで平均孵卵温度に日内変動を施した場合について研究事例を増やしていきたいと考えている。タイマイの生息数は大変少なく、例年、国内では沖縄本島以南の島嶼の海岸で年間10回程度しか産卵が確認されていないため、自然卵からの試料となる卵の十分な確保は到底、見込めない。研究分担者の所属する沖縄美ら海水族館ではアオウミガメに加えてタイマイも人工環境下での繁殖に成功しており、本研究では、人工環境下で繁殖に成功した本種の卵を研究に利用する事に合意を得た。しかし、令和6年度の研究ではアオウミガメの人工繁殖卵を1巣、タイマイの人工繁殖卵を2巣確保できたものの、いずれの産卵巣も孵化率が低く、実験に供試できた孵化幼体が少なかった。ただ、やはりアカウミガメと同様に、適度な日内温度変動があると孵化率が高い傾向があった。同館では、その後、産卵が期待される親個体の栄養状態が十分であったかについて検討を行っており、令和7年度以降はその点について改善を試みてアオウミガメとタイマイの研究事例数を集積していく予定である。また、孵卵温度に誘発されるウミガメ孵化幼体の運動能力の違いは、筋内の様々な筋線維タイプの頻度と分布の違いによる可能性があるため、ウミガメの生鮮な筋繊維サンプルを得られる機会があれば、これについても調べたいと考えている。
All 2025 2024 2023 Other
All Journal Article (3 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 3 results, Open Access: 3 results) Presentation (28 results) (of which Int'l Joint Research: 8 results, Invited: 2 results) Remarks (3 results)
Frontiers in Marine Science
Volume: 11 Pages: 1513162-1513162
10.3389/fmars.2024.1513162
Current Herpetology
Volume: 44 Issue: 1 Pages: 37-48
10.5358/hsj.44.37
Journal of Herpetology
Volume: 57(3) Issue: 3 Pages: 334-339
10.1670/22-088
https://researchers.kochi-u.ac.jp/DET01_G01/DET01_G01View/2206
https://tosashimizu-geo.jp/aosabalabo/cat5/d8e750212244bf7ce5c20e2b55541985b20c2e39.html
https://www.kochinews.co.jp/article/detail/673661