Project/Area Number |
23K05314
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40010:Forest science-related
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
荒瀬 輝夫 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (10362104)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2027: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2026: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 陸生スゲ類 / 耐陰性 / 低木林 / 遷移 / 発芽 / 緑化 / 崩壊地 / 植生遷移 / 光環境 |
Outline of Research at the Start |
わが国では近年、台風や集中豪雨による災害が頻発し、防災・減災対策や崩壊地の復旧対策が実施されている。現在、在来の生態系や生物多様性の保全の観点から、外来牧草類による緑化が問題視され、在来植物への転換が求められているものの、在来植物の緑化利用についての知見の蓄積は遅れている。申請者は陸生スゲ類に着目し、これまでに数種を用いて緑化・植生管理試験を重ねてきた。その結果、崩壊地に自生するスゲ類は陽地では群落形成するものの陰地では生育不良で、植生遷移が進むと衰退することが判明した。そこで本研究では、様々な光環境や植生遷移段階に応じた陸生スゲ類を探索し、永続的な崩壊地緑化技術の基礎を確立する。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度には、耐陰性に優れた陸生スゲ類のスクリーニングを行うため、2005年に陸生スゲ類5種を用いて造成した緑化試験地(令和5年で植栽18年目であり、上層に低木林が発達して下層は半陰地となっている)において群落調査とスゲ類の分布の追跡調査を実施した。その結果、当初の植栽種5種のうち,ミヤマカンスゲのみが残存しており,元々のミヤマカンスゲ植栽区から約3mの距離まで生育範囲を拡大していた。また,オオイトスゲとエナシヒゴクサが新たに試験地に侵入しパッチを形成した。以上のことから、ミヤマカンスゲは造成直後の切土のり面の開陽地から陰地に分布できる種であり,オオイトスゲとエナシヒゴクサは低木林化後の陰地に生育する種と考えられ,遷移にともなう陸生スゲ属植物相の変化の1例がとらえられ、これら3種(とくにミヤマカンスゲ)が緑化に有望な種として抽出された。この研究成果は、全国誌(日本緑化工学会誌)に原著論文として投稿し、令和6年5月現在、審査中(修正第2稿の段階)である。 また、種子の保存条件と発芽条件について、開陽地の分布種のヒメスゲとアブラシバ(緑化試験で優占群落の形成に成功したものの、耐陰性の乏しい陸生スゲ類)についての発芽実験をインキュベーターを用いて実施した。しかしながら、当年産の種子を用いたところ、光条件、温度条件、低温処理の有無を組み合わせた実験で、発芽率が極めて低調で(とくにアブラシバの発芽率はほぼ0%)、発芽後の生育も非常に悪いという結果が得られた。最適な発芽条件の把握には至らなかったものの、スゲ属植物の種子の後熟の可能性が示唆されたため、種子の保存期間を変えた発芽実験での検証が新たに必要となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
耐陰性に優れた陸生スゲ類として、有望な種(とくにミヤマカンスゲ)を抽出することができたことは、緑化当初の計画通りであり、永続的な緑化技術の確立に向けて大きな前進であると期待できる。 種子の発芽については、残念ながら最適条件を把握することができず、令和6年度に再実験を行う必要が生じたため、計画にやや遅れが生じた。しかし、発芽に必要と推測される条件について有益な知見が得られた。そのため、令和6年度以降に行う予定の発芽実験(耐陰性の陸生スゲ類)においてもこの知見を活かして、より効率的に発芽条件を明らかにできる可能性が高まっており、生態学的な解釈にもつながることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策に大きな変更はなく、令和6年度~7年度には、有望な陸生スゲ類の種子の採集と保存を進め、種子の発芽条件の検討を行う。シャーレとインキュベーターを用い、種子の保存期間、温度条件、光条件、低温処理の有無を組み合わせた発芽実験を実施する予定である。 また、土質と日照を組み合わせた緑化試験地造成を行い(令和5年度に抽出されたミヤマカンスゲとオオイトスゲなどを予定)、土質ごとに寒冷紗を用いた数段階の照度の試験区を設定し、自生の株の移植によって実験個体群の優先群落化を試み、生育のモニタリングを開始する。試験場所としては、前助成期間に続いて、信州大学農学部附属演習林(急傾斜のマサ土地帯)、および附属農場(平地の黒色土地帯)を計画している。 さらに令和8年度~9年度には、導入後の成長・繁殖・生態学的特性の解明を行う。それまでに得られた知見を重ね合わせ、陸生スゲ類の有望な種についての成長・繁殖・生態的特性の知見を着実に蓄積し、緑化導入の技術の基礎を確立するまでを目指す。
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