Project/Area Number |
23K05343
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40020:Wood science-related
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
宮藤 久士 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (00293928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細谷 隆史 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (40779477)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | リグニン / リグノセルロース / ケミカル生産 / バニリン / 反応機構 / 有機カチオン / 酸化 |
Outline of Research at the Start |
木質の主要構成成分の一つであるリグニンを、無毒なO2により酸化分解することで低分子化合物を生産する自動酸化法は、有望なリグニン低分子化法である。しかしながら本法には、過酷な反応条件や低い目的物収率などの改善すべき点が多く存在し、それにも関わらず、改善への手掛かりとなるべき分子論的知見が不足しているのが現状である。本研究は、自動酸化法における分子機構を深く追求するものである。また、得られた機構論的知見の有効利用を通して、自動酸化プロセスを系統的に改善する研究開発を実施する。以上の学術研究と応用研究を両軸とし、新たなリグニン低分子化法の提案を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
木質の主要構成成分の一つであるリグニンは、化石資源に替わる低分子芳香族化合物の供給源として注目されている。リグニンを無毒な分子状酸素(O2)により酸化分解することで低分子化する方法(自動酸化法)は、パルプ廃液からのバニリン生産法としてすでに工業化されているなど、有望なリグニン低分子化法である。本研究では、これまでに応募者らが世界に先駆けて提案している、アルカリ条件における自動酸化法における分子機構をさらに深く追求することを目的としている。具体的には、自動酸化における最終段階で進行するリグニンの非フェノール性末端にbeta-O-4結合したバニリン残基(バニリン末端)から、アルカリの作用によりバニリンが脱離する際のメカニズムを解明することを計画している。 本年度は、バニリン末端を見立てたモデル化合物(4-[2-(3-ethoxy-4-methoxy-phenyl)-2-hydroxy-1-(hydroxymethyl)ethoxy]-3-methoxy-benzaldehyde)を合成しそこからのアルカリ条件におけるバニリンの脱離機構を検討した。その結果、モデル化合物はバニリンを生成する反応経路の他に、バニリン生成能を有さない重合物を副生成物として与えることが判明した。また、この副反応経路はモデル化合物のバニリン残基の有するアルデヒド基の存在と深く関わっていることが明らかにされた。さらに、モデル化合物の速度論解析によりバニリン生成経路と、副反応経路の反応次数、反応速度、活性障壁が明らかにされた。バニリン生成経路の活性障壁を、実験を量子化学計算により比較した結果、本反応はSNiCB機構と呼ばれる反応機構で進行していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の1年目の研究計画は、バニリン末端を見たてたモデル化合物を化学合成し、そこからのバニリン生成機構について詳細な検討を行うことであった。本年度の研究では、この目的をおおむね達成することができ、本研究は順調に進展していると判断した。具体的な成果は以下のとおりである。 まずモデル化合物の合成研究を行い、成功裏に目的のモデル化合物を合成できた。さらに、モデル化合物のアルカリ条件での反応速度解析を行った結果、モデル化合物はバニリン以外にも比較的高分子量の化合物を副生成物として与え、バニリンと副生成物の生成割合はおおむね1:1であることが判明した。本結果は、第68回リグニン討論会にて発表した。また、モデル化合物の分解反応の速度論解析により、バニリン生成反応が擬1次近似に従うことが判明した。またアレニウスプロットの傾きより、本反応の活性障壁は約18 kcal/molであることが明らかにされた。さらに、DFT(M06-2X)レベルでの量子化学計算により、バニリン脱離反応のメカニズムについて検討した結果、本反応はバニリン残基に隣接するOH基の関与により進行するSNiCBといわれるメカニズムで進行することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果より、モデル化合物はバニリンと同時に高分子化合物を生成することが判明した。この副生成物たる高分子化合物の生成を抑制することが、リグニンからバニリンを高効率で生成する鍵となると考えられる。よって今後は、高分子化合物の化学構造の解析と、その生成メカニズムを調べることを計画している。 このメカニズム解析と並行して、実施者の研究室で開発されているクラウンエーテル等によるバニリン生成反応の制御方法をモデル系にも適用し、その制御操作がモデル化合物の分解挙動に与える影響を調査する。これにより、メカニズムの解明が促進されるだけでなく、実際のリグニンからのバニリン生産法も開発も同時に行うことが可能である。
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