Project/Area Number |
23K05355
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40030:Aquatic bioproduction science-related
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山口 健一 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (90363473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑野 和可 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (60301363)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | アマノリ / イノシン酸生成酵素 / 抽出条件 / 焙焼条件 / スサビノリ / 乾熱耐性 |
Outline of Research at the Start |
海苔のうま味成分の鍵因子であるイノシン酸は、原藻のアマノリに含まれる酵素の触媒機能によって海苔を食べている最中に生じる。この酵素は、温水中で容易に触媒機能を失うが、乾燥した藻体中では強い熱耐性をもち、180~250℃で焙焼する焼海苔の製造工程においても安定に保たれる。本研究では、本酵素の乾熱耐性の分子機構解明の一端に資することを目的として、焼海苔から本酵素の効率のよい抽出・単離条件を検討し、精製酵素の諸性質と化学構造、乾熱耐性への糖鎖の寄与を調べる。得られた知見は、酵素活性や酵素含有量を指標とした海苔の客観的品質評価法の開発のほか、タンパク質性製剤の常温乾燥保管技術開発への応用が期待できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
アマノリのイノシン酸生成酵素は, 海苔のうま味発現の鍵酵素として食品科学的な観点から研究がなされてきた背景があるが, その植物生理学的な存在意義や焙焼耐性に関する生化学・タンパク質化学的な知見は極めて乏しい。本研究では, 紅藻アマノリ由来イノシン酸生成酵素の焙焼耐性の分子機構を解明する研究と一環として, イノシン酸生成酵素の収率の良い材料, 抽出緩衝液の塩濃度, および焙焼条件について検討した。試料として, 潮上帯生育種(対馬産マルバアマノリ乾海苔製品, 平戸産イチマツノリ, 二見浦産マルバアマノリ), 潮間帯生育種(京丹後産ウップルイノリ乾海苔製品, 桑名産アサクサノリ乾海苔製品, 有明産スサビノリ乾海苔製品), 漸深帯生育種(山口湾産カイガラアマノリ, 余市産アマノリ未同定種)の計8検体を用いた。潮上帯生育種は, 潮間帯生育種および漸深帯生育種よりもイノシン酸生成酵素の活性収率が高い傾向を示した。対馬産マルバアマノリ乾海苔製品および有明産スサビノリ乾海苔製品を用いて抽出効率の良いNaCl濃度と焙焼後の残存酵素活性(すなわち、アデノシン一リン酸を基質として焙焼前の海苔抽出液に含まれる酵素の触媒作用によりイノシン酸に変化させる活性を100%としたときの相対残存活性)を調べた結果, いずれの検体においても1000 mM以上の高塩濃度で活性収率が最大となること, 1分までの焙焼(180℃)では約70%の活性が残存することが分かった。また, 0.5分間~1分間の焙焼により, 酵素の分離・精製を阻害するフィコビリタンパク質とルビスコが効果的に除去(熱変性による不溶化)されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アマノリ由来イノシン酸生成酵素について, 生海苔(スサビノリ)を出発材料として, 抽出,分離・精製, 部分アミノ酸配列の決定および遺伝子クローニングがなされた報告(Minami et al., 2011)があるが, 焼海苔を材料とした抽出・分離条件の検討や酵素の化学構造解析による同定はこれまでなされていなかった。また, Minami et al.(2011)の精製法では, 酵素の分離・精製を阻害する粘質酸性多糖とフィコビリタンパク質の除去を目的とした水性二層分離のステップで約80%の酵素活性をロスするため, 精製効率(活性収率)を高める抽出・分離条件の改善の余地があると思われた。そこで, アマノリ属数種を検体として, 抽出・分離条件, 焙焼条件を検討した。その結果、出発材料として潮上帯生育種(マルバアマノリやイチマツノリなどのイワノリ類)が比較的多量の酵素を含む点で優れており, 1000 mM以上の高塩濃度で活性収率が最大となること, 1分までの焙焼(180℃)では約70%の活性が残存することが分かった。また, 0.5分間~1分間の焙焼により, 酵素の分離・精製を阻害するフィコビリタンパク質とルビスコが効果的に除去されることが分かった。すなわち, 焼海苔由来のイノシン酸生成酵素を単離・同定するための新規かつ効果的な実験条件を見出した。このことによって, 今後の酵素の単離・同定および酵素学的な諸性質の解明が進展すると期待されることから, おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
AMPD活性を指標としたイノシン酸生成酵素の抽出および効果的な粗酵素の分離方法を確立できたことから、今後は養殖ノリ(スサビノリ)と潮上帯生育種のアマノリ(いわゆるイワノリ類)を出発材料として、イノシン酸生成酵素の単離と化学構造解析による同定を進めていく。イワノリ類は、イノシン酸生成酵素研究の好適な出発材料となることから, 2024年1月から2024年4月にかけて平戸にてイワノリのサンプリングを行ったが, 原因不明の磯焼けが進行しており, 生化学実験に適用可能な量(湿重量で数100グラムオーダー)の摘菜は困難であった。2024年度は, イワノリ類の確保と分析法の微量化も検討したい。
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