Project/Area Number |
23K05376
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40030:Aquatic bioproduction science-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
中井 静子 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (40582317)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 外来種 / アクアリウム / 貝類 / 淡水生無脊椎動物 / 水草 |
Outline of Research at the Start |
国内河川に侵入した外来巻貝の多くは移入ルートが不明である。家庭のアクアリウムからの移入が疑われることがあるが、家庭のアクアリウムにおける外来貝類の実態を調べた例は少なく、不明な点が多い。そこで、先行研究では、家庭やペットショップのアクアリウムにおける外来貝類の国内の現状を調査した。その結果、多くの外来巻貝が家庭やペットショップのアクアリウムから見つかり、貝類以外にもさまざまな無脊椎動物がアクアリウムを介し移動していること、生物の移動には水草が強く関わっていることが明らかになった。本研究では、外来種が国内のアクアリウムにどのようなルートで移入しているのか、そのより詳しい経路や背景を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、国内の野外河川への外来無脊椎動物の侵入源として、家庭のアクアリウムのリスクを検討している。本研究及び過去の関連研究から、家庭では魚や水草といった飼育対象生物とは別に、非意図的に巻貝などの無脊椎動物が混入し、時に爆発的に増殖、駆除されていることがわかった。これらの生物の家庭への侵入源は、苔取り用の貝の購入、アクアリウム用や野外のメダカ鉢用の水草の購入、水耕栽培(ハイドロカルチャー)の植物の購入などと関連が強く、水草や植物の葉や根に巻貝の稚貝や卵、微小な無脊椎動物が付着し家庭に持ち込まれている。このように侵入源が多岐にわたることは当初想定しておらず、本研究の調査対象は当初、いわゆる金魚やメダカ、熱帯魚の室内飼育水槽(アクアリウム)としていた。しかし、本研究の調査を進めるにつれ、家庭の中には室内のアクアリウム以外にも生物が生息可能な水環境が存在することがわかり、それらは主に夏季に屋外の園芸店で販売されるメダカ用の水草やスイレンと関連が深かった。 これら複数の侵入源では、見つかる生物の種類に違いがみられた。一方、どの侵入源も在来種と外来種が混在していた。最も多く見つかっている生物は、貝類では外来種のサカマキガイでその他の無脊椎動物では貝形虫である。 本年は、DNA解析を用い、これまで形態による種判別では困難であった種同定や在来種、外来種の判別を実施している。サカマキガイは形態から外来種であることは明らかであるが、DNA解析の結果、本研究で採集したペットショップのアクアリウムから得られたサカマキガイは、小笠原の母島やカナダの外来サカマキガイと遺伝的に一致した。また、サカマキガイと形態的に似ているモノアラガイも本研究で採集されており、形態的に在来種のモノアラガイと判断していたが、DNA解析の結果、外来種のハブタエモノアラガイやヨソカラモノアラガイと遺伝的に一致率が高かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の本年度は、ペットショップや家庭のアクアリウムからの貝類や無脊椎動物のサンプル収集、販売されている水草における生物付着の有無や種類の調査、購入した水草の飼育実験を行った。得られた生物は、写真で外部形態を記録し、DNA解析用に冷凍保存した。 これらのサンプルを用い、DNA解析による種同定を試みたが、種類によりDNA解析の進歩状況が異なっている。比較的大型のサカマキガイ、モノアラガイ、ヒラマキミズマイマイはDNA解析の結果が出ているが、小型のヒラマキミズマイマイやカワコザラガイはDNA抽出が当初上手くいかず、水槽内で大きく育ててから解析に用いるなど試行錯誤を重ねている。また、淡水ミミズや水生昆虫、プラナリア、ヒドラなど様々な無脊椎動物のDNA解析を行っているが、本研究で扱う生物の分類群が多岐にわたるため、DNAの抽出や増幅で失敗することがたびたびみられている。 一方、無脊椎動物で最も発見数の多い貝形虫に関しては、共同研究者の協力で種同定が進んでおり、外来種や新種の外来種と思われる貝形虫が確認されている。本研究で得られる貝形虫は1㎜未満の小さなサイズであるため、アクアリウムの飼育水や水草の飼育水の移動に伴い微小な外来種が移動している可能性が示唆される。 また、ペットショップや園芸店の生物や水草の仕入れルートについて、調査を実施している。室内アクアリウム用の水草については、ペットショップの店頭では外来種も在来種も同じ水槽に入れられていることが普通である。水草の種類毎に一株ずつ袋に分けて販売している形式もよくみられるが、販売時に小分けにしているため、その前の段階で他の水草の付着生物が移動するリスクが高かった。分類群によってDNA解析の進歩状況が異なり、一部の解析に試行錯誤していること、水草の流通経路についての調査が本格的に進んでいないことから、進歩状況をやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
DNA解析を進め、形態による種判別が困難な生物の種同定とペットショップのアクアリウムや家庭のアクアリウムにおける侵入生物のリスト作成を継続して行う。いくつかの種については、北海道と沖縄など国内の遠く離れた店舗や水槽でサンプルが得られている。これらの種について同種内の遺伝的多様性を詳しく調べ、国内にまん延している個体群が同一なのか複数あるのかを考察する。 また、本研究で得られたサンプルとNCBIやDDBJに登録された世界中の遺伝情報を比較し、国内への移入ルートの推定や世界規模での分布状況を推定する。巻貝については、現時点では比較的国内、海外の遺伝情報との比較が実施でき、種同定や国内の野外への侵入歴が明らかになる例が多い。一方、貝類以外の無脊椎動物については、国内の在来種の遺伝的情報の登録数が少なく、海外で登録された個体との一致しかみられない場合や、近縁種のデータしか得られない例が散見されている。研究例が少ない生物については、形態による種判別にもとづく文献を今後丁寧に検索し、可能な限り種同定を実施する必要がある。貝類以外の無脊椎動物については、貝類程はサンプルを得られていない。その原因は、貝類よりもサイズが小さいことや、貝類ほど大増殖しないことにあると予想している。貝類以外の無脊椎動物の多くは、じっくりと丁寧に観察をしないとい発見が難しいため、顕微鏡観察を併用しながらサンプル採集に努めたい。 さらに、魚や水草の国内の移動ルートや海外から国内への輸入については、店員やペットショップ関連への聞き取り、輸入データの検索等を進めていく計画である。得られた研究成果は、学会や論文にて公表を行う。
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