アスガルド古細菌から理解する細胞膜ダイナミクスの普遍的メカニズム
Project/Area Number |
23K05718
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 43040:Biophysics-related
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
千住 洋介 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 研究准教授 (90536848)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 生体膜 / 真核生物起源 / 分子進化 / 構造生物学 / 細胞骨格 |
Outline of Research at the Start |
真核生物は、古細菌が細胞膜をダイナミックに変形させることでバクテリアを貪食し、ミトコンドリアとして共生させることで誕生したとされている。しかし、古細菌にはファゴサイトーシスのような細胞膜の形態形成を制御するタンパク質はこれまで発見されてこなかった。ところが最近、真核生物に近い系統と考えられるアスガルドと命名された新規古細菌から、真核生物に相同性を持つタンパク質をコードする遺伝子が発見された。本研究では、アスガルド古細菌の遺伝子から、(1) 細胞膜ダイナミクスを定義する分子基盤を同定し、(2) 構造・機能発現を解明することで、分子進化から真核生物誕生の鍵を握る細胞膜ダイナミクスの起源を解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的 真核生物が原核細胞からどのように生じたのかは今のところよく分かっていない。真核生物と原核細胞に共通するタンパク質の分子進化から、アスガルドアーキアが真核生物と同様の細胞機能をすでに獲得していたことを証明すれば、真核生物と原核生物が共通の祖先を持つことを示すことができ、真核生物と原核生物のミッシングリンクを埋めることができる。しかし、アスガルドアーキアにおける細胞膜の形態形成に関しては、DNAレベルではともかくタンパク質レベルではこれまで研究されていない。そこで本研究の目的は、原核生物から真核生物に保存された細胞膜ダイナミクスの普遍的メカニズムを解明する鍵となる、アスガルドアーキアに見出された新規タンパク質の機能を解明する。そして、細胞膜の形態変化を起点とするシグナル伝達機構が、真核生物進化の過程でどのように必要とされ獲得されてきたのかを明らかにすることで、真核生物の起源に迫る。
研究の成果 アスガルドアーキアに見出されたタンパク質とイノシトールリン脂質の相互作用解析と生理機能の解明 イノシトールリン脂質は、アーキアを含む原核生物から哺乳類にいたるまで広く存在するリン脂質で、タンパク質の局在や活性を制御し、シグナル伝達や細胞骨格制御をはじめとする多様な細胞の機能発現を制御している。そこで、イノシトールリン脂質との結合に必要なアミノ酸残基に変異を導入したタンパク質を精製し、リポソームを用いてイノシトールリン脂質との結合部位を同定した。脂質結合部位に進化的保存性があれば、アスガルドアーキアから真核生物への進化の過程で、そのアミノ酸残基が生理的に重要であったことを意味し、真核生物進化の起源をアスガルドアーキアにつなげることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アスガルドアーキアに見出されたタンパク質などとイノシトールリン脂質の相互作用解析と生理機能の解明 イノシトールリン脂質は、アーキアを含む原核生物から哺乳類にいたるまで広く存在するリン脂質で、タンパク質の局在や活性を制御し、シグナル伝達や細胞骨格制御をはじめとする多様な細胞の機能発現を制御している。そこで、イノシトールリン脂質との結合に必要なアミノ酸残基に変異を導入したタンパク質を精製し、リポソームを用いてイノシトールリン脂質との結合部位を同定した。脂質結合部位に進化的保存性があれば、アスガルドアーキアから真核生物への進化の過程で、そのアミノ酸残基が生理的に重要であったことを意味し、真核生物進化の起源をアスガルドアーキアにつなげることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
[Step1] タンパク質が脂質膜の流動性、ドメイン形成などの脂質膜物性を制御するか明らかにするために、リポソームに蛍光色素であるDPHを加えて、蛍光異方性を分光蛍光光度計で測定する。DPHは強い偏光特性をもつため、脂質二重層に取り込まれたときの蛍光偏光解消から、シグナリングプラットフォームとなり得る膜の動的構造 (流動性) がわかる (Senju et el., Methods Mol Biol. 2021)。 以上の実験により、脂質膜との結合の強さや結合様式などを解明する。
[Step2] 緑色蛍光タンパク質 (GFP) などを融合したタンパク質をヒト培養細胞で発現させ、全反射照明蛍光顕微鏡 (TIRF) や超解像顕微鏡を用いて (Senju et al., Methods Mol Biol. 2020) 細胞膜を変形するか調べるとともに、どのような細胞内構造に局在するか高時空間分解能で明らかにする。また、同定したイノシトールリン脂質の結合部位の変異体を発現させ、野生型との局在の違いを明らかにする。 以上の研究によって、アスガルドアーキアの新規タンパク質の分子進化を解明し、真核生物の起源をアスガルドアーキアに見出す。
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Report
(1 results)
Research Products
(9 results)