Project/Area Number |
23K05720
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 43040:Biophysics-related
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
小沼 剛 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 助教 (10631682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浴本 亨 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 助教 (90829821)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | COVID-19 / SARS-CoV-2 / Eタンパク質 / BRD4 / ETドメイン / ブロモドメイン / 阻害剤 / NMR / エンベロープタンパク質 |
Outline of Research at the Start |
新型コロナウイルスSARS-CoV-2の全ゲノム配列が解明され、29種類の遺伝子が同定された。申請者は、そのうちエンベロープタンパク質(Eタンパク質)が転写調節因子BRD4のETドメインに直接結合すること、そしてこの相互作用による複合体形成がインターロイキン6(IL-6)を含む複数の炎症性サイトカインの転写増加に繋がることを見出した。本研究では、Eタンパク質とETドメインの結合を効果的に阻害する化合物の開発を行う。また、Eタンパク質を介した炎症反応を促進する機序を解明するとともに、COVID-19の治療薬開発における構造基盤の構築を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルスSARS-CoV-2の世界的な大流行により、これまでに世界中で感染者が約7億人、死亡者が約700万人に至った。SARS-CoV-2の感染による気道感染症COVID-19は重篤化すると急性呼吸不全をもたらす一方で、現存する治療薬の効果は限定的である。ワクチンが効かない変異型ウイルスが今後流行する可能性もあり、COVID-19を発症してしまった患者に対する有効な治療薬が求められている。 申請者らは世界に先駆けて、SARS-CoV-2の宿主細胞においてEタンパク質がヒトの転写調節因子BRD4に結合し、IL-6を含む複数の炎症性サイトカインの転写が活性化されることを見出し、サイトカインストームが生じる機構を解明した。そこで、重篤化の起因であるEタンパク質とBRD4との相互作用を防ぐことを目的とした構造学的研究を行った。BRD4は2つのブロモドメイン(BrD)とETドメイン(ETD)という3つの構造ドメインを有している。申請者はこれまでに、ETDがEタンパク質と直接結合し、BrDは結合しないことを明らかにした。本研究では、このETDとEタンパク質の結合を効果的に阻害する化合物の開発を行うことを目的としている。 申請者は、ETDに対して約10,000種類の低分子化合物をNMRによってスクリーニングを行い、数個のヒット化合物を見出している。また低分子化合物が結合したETD複合体のNMR構造を得ることにも成功している。これらの化合物の類縁体をさらにスクリーニングすることで、細胞実験で効果のある化合物の発見に至った。本年度は、更なる化合物スクリーニングを行うこと、そしてその化合物とETDが結合した複合体構造を解き、原子レベルでの結合様式の解明を行う。さらに低分子化合物だけでなく、より活性の高い化合物開発を目指し、ペプチドを利用した中分子化合物の阻害剤開発も実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Eタンパク質とETDの相互作用を可視化するため、NMRを用いてEタンパク質のペプチド断片が結合したETD複合体の立体構造をNMRによって解析した。この複合体構造に基づき、相互作用に重要なETDのアミノ酸残基(E651、E653、F656、E657)をアラニンに置換した変異体を作成し、Eタンパク質との相互作用解析を行ったところ、結合力の減弱もしくは全く結合しない結果が得られた。さらにEタンパク質側のアミノ酸残基についても同解析を行ったところ、同様の結果が得られた。つまりこれらのアミノ酸残基がETDとEタンパク質との相互作用に重要であること、そして解析したNMR構造が正しいことを指示している。 Eタンパク質とETDの相互作用を阻害する化合物を開発するため、申請者はこれまでにETDに対して低分子化合物のスクリーニングを行ってきた。その中で、ETDに最も強く結合する低分子化合物(MS776)の結合様式を解明するため、その化合物とETD複合体のモデル構造について分子動力学(MD)シミュレーションを行った。まず申請者が解析したETDのNMR構造に対してMS776をドッキングさせたモデル構造を得た。その結果、MS776はETDの疎水性残基と親水性残基に囲まれていることが分かった。次に、そのモデル構造を初期構造として1μsの全原子MDシミュレーションを行ったところ、MS776の結合様式は動的に変化したが、α2-helixと長いループとの結合は維持された。このMDシミュレーションから同定された相互作用に重要なアミノ酸残基は、NMRを用いて実験的に観察された大きな化学シフト変化を示すアミノ酸残基と一致したことから、NMR結果を説明するモデル構造として妥当であり、この複合体が溶液中で安定であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果からEタンパク質はETDの比較的大きなループ領域と結合することが分かっている。また、これまでに開発したETD阻害剤は分子量が約400程度の低分子化合物であり、これらの化合物がETDの活性部位を物理的に阻害する領域は限定的である。そこで、より広範囲にわたってETDと相互作用することが可能な中分子ペプチド阻害剤を開発する。 申請者は過去にETDについて、複数種類のペプチドとETD複合体のNMR構造を解析している。そして、これらのペプチドのETD結合部位はEタンパク質のそれとほぼ一致していた。これらの結果にもとづき、ペプチドの長さやアミノ酸配列を変えた化合物を複数種類合成し、ETDへの親和性の評価をNMRおよびITCで行う。この中から、より阻害効果の高い中分子化合物を探索し、新規阻害剤の候補とする。さらに候補化合物が結合したETDに対しMDシミュレーションを行うことで、構造揺らぎも含めた結合様式や重要な相互作用部位を原子レベルで同定し、候補化合物の更なる改良を実施する。 一方で、低分子化合物についても新たな候補化合物を見出すため、約670万化合物ライブラリからインシリコスクリーニングを行う。
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