Project/Area Number |
23K05756
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44010:Cell biology-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
明松 隆彦 日本大学, 文理学部, 助教 (90906637)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | テトラヒメナ / 核 / オートファジー / オートファジー受容体 / Atg8 / 繊毛虫類 |
Outline of Research at the Start |
繊毛虫類の有性生殖では、同一の細胞内に「次世代へ遺伝する核」と「一世代限りの核」が混在する時期があり、後者が特異的に分解されることで世代交代が行われる。この現象は「プログラム核死」と呼ばれ、繊毛虫類に固有なオートファジーとして知られる一方、特定の核が標的となる仕組みは未解明なままである。本研究では、プログラム核死の選択性を担保する分子基盤を明らかにするため、基質の目印として寄与する受容体を探索する。これにより、繊毛虫類の生命を支える特殊な細胞システムの一端を解明すると共に、モデル生物のオートファジーとの共通性と異質性を見出し、多様な真核生物における多彩な自己分解系と生理的意義の理解に貢献する。
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Outline of Annual Research Achievements |
テトラヒメナの細胞内には、栄養核である大核と、生殖核である小核という二種類の核が存在する。有性生殖では、同一の細胞内に「次世代へ受け継がれる核」と「一世代限りの核」が混在する時期があり、後者に分解系が作用することで世代交代が行われる。この現象はプログラム核死(PND)と呼ばれ、繊毛虫類に特有なオートファジーとして知られる一方、特定の核だけが標的となる仕組みは未解明なままである。本研究の目的は、PNDの選択性に寄与する目印分子(オートファジー受容体)を特定し、PNDの分子基盤解明を飛躍的に進展させることである。2023年度は、他生物のオートファジーにおいてオートファジー受容体の認識に働くことが知られているAtg8のホモログ(Atg8.2)に着目し、その機能的保存性について調べた。 今回、Atg8.2の各種アミノ酸残基の重要性を検証するため、Atg8.2遺伝子をノックアウトしたPND不全株を作製し、これに部位特異的変異を導入したAtg8.2発現コンストラクトを組込むレスキュー実験を行った。主要な成果として、脂質化に必要な翻訳後切断の有無を確認するため、C末端領域に保存されているグリシン残基(G124)に変異導入したコンストラクトを組込んだところ、G124Δの発現はレスキュー効果を示さないことが分かった。ウエスタンブロットの結果、対照実験である野生型Atg8.2では切断型だけが検出されたのに対して、グリシン欠損(G124Δ)では非切断型だけが検出された。また、標的認識の中心的役割を果たすとされる中央部のリジン残基(K53)の重要性を検証するため、これをアラニン置換したK53Aコンストラクトを組込んだところ、K53Aの発現はレスキュー効果を示さないことが分かった。これらから、PNDにおけるオートファジー受容体の実体はタンパク質であり、脂質化Atg8.2と相互作用することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の研究から、テトラヒメナのオートファジーにおけるAtg8.2アミノ酸残基の機能的保存性が初めて明らかになった。Atg8.2のC末端領域における翻訳後切断および脂質化は、PNDに隔離膜形成のコアメカニズムが共通して使われていることを示している。また、一次構造上の中央部分に位置するリジン残基(K53)の関与が示されたことは、Atg8.2とオートファジー受容体間での静電相互作用の存在を強く示唆するものである。現在、メジャーなモデル生物のマイトファジーやERファジーにおいて解明されているオートファジー受容体は、基質の種類によって様々なタンパク質が使われているだけでなく、同じ生物分類群の中でも一次配列上の類似性を示さないタンパク質が等価な機能を果たすことが多いと知られている。本年度の成果は、Atg8.2と物理化学的に相互作用するオートファジー受容体を探索するうえで重要な足掛かりとなるだけでなく、将来における基質や生物分類群を跨いだオートファジー受容体の構造的・機能的な共通性、並びに進化の過程で多様化している部分の理解にも繋がるものである。 なお、本研究ではN末端およびC末端にEGFPやHA等のエピトープタグを融合したAtg8.2を使用したが、これらはPND不全株に対するレスキュー効果を阻害することはなく、機能的なAtg8.2の局在解析や免疫沈降に利用可能であることも分かった。Atg8.2と相互作用するタンパク質複合体を精製するための条件が整いつつある進捗状況から、本研究は概ね順調に進展していると区分できる。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル生物のオートファジー受容体の多くは、Atg8一次配列の中央部分に保存されたリジン残基と静電相互作用することで親和性の増強に働くことが知られている。テトラヒメナのAtg8.2変異導入(K53A)がレスキュー効果を示さないことは、隔離膜の基質認識能力が低下していることを示唆している。そこで2024年度以降は、エピトープタグ標識した野生型の Atg8.2 と変異型の Atg8.2 を用いて共免疫沈降を行い、質量分析によって同定したタンパク質群の差分解析を行う。野生型 Atg8.2 に結合し、変異型 Atg8.2 に結合しないタンパク質群をオートファジー受容体の候補とする。テトラヒメナの有性生殖が高率かつ同調的に誘導可能である利点を活かして、様々な PND について同様の解析を行い、それら全てに共通して使われる受容体と、いずれかに特徴的な受容体の候補を見出す。 候補タンパク質のスクリーニングには、先ず、蛍光タグ標識した候補タンパク質の網羅的な細胞内局在解析を行う。次に、分解対象核への局在が確認されたタンパク質について、co-Del と呼ばれるテトラヒメナ用のゲノム編集技術を用いたノックアウトを行い、PND の進行に影響を及ぼすタンパク質を更に絞り込む。最終的にオートファジー受容体を見出すには、これまでに確立されている蛍光指示薬やバイオマーカーを用いた PND 不全の評価法に基づく解析を行い、隔離膜のリクルートに必須な遺伝子を基質選択性に関わる責任遺伝子と判断する。また、既知のオートファジー受容体の一次配列との比較から AIM(Atg8-family Interacting Motif)を予測し、変異導入による機能解析も併せて行う。
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