Project/Area Number |
23K05777
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44020:Developmental biology-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
林 良樹 九州大学, 理学研究院, 講師 (30508817)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 始原生殖細胞 / キイロショウジョウバエ / 解糖系 / エピジェネティクス / ヒストン修飾 / ヒストンアセチル化 / 細胞内代謝 |
Outline of Research at the Start |
始原生殖細胞(PGC)は生殖系列の前駆細胞であり、未分化性の高い幹細胞様の細胞である。PGCの未分化性を制御する仕組みは、PGC特異的に発現する遺伝子の働きを中心に研究されてきたが未だ解明されていない。本研究では、解糖系がPGCの未分化性を維持する仕組みについて、予備的結果に基づき、解糖系がヒストンアセチル化の制御を介してPGCの未分化性を維持するという仮説を検証する。本研究の成果は、PGCの未分化性制御の理解に新たな視点をもたらすのみならず、解糖系が重要な働きをもつ多能性幹細胞の維持やがんの悪性化の理解など、幅広い研究分野に重要な知見を供出する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究はショウジョウバエ始原生殖細胞(PGC)の分化過程において、申請者が独自に見出した解糖系の動的変動(未分化PGCにおいて高い解糖系活性が分化に伴い低下する現象)について、PGCの分化過程における意義を明らかにすることを目的とする。このために、事前研究により見出した仮説‘高い解糖系活性がPGCにおいてヒストンアセチル化修飾制御を介して未PGC分化性に関与する遺伝子発現を制御する“を中心に検証する。 令和5年度においては、主に解糖系を遺伝学的に亢進したPGCにおいて生じる発生的変化の観察および遺伝子発現の変動について解析を行った。その結果、解糖系を高活性PGCに見られる分化阻害は、従前において知られる未分化性制御の仕組み(BMPシグナルの活性化)とは異なること、また解糖系高活性PGCが細胞死や分裂阻害を起こしていることでは無い点などを見出した。以上の結果は、解糖系はPGCの未分化性維持において、従前知られる経路とは異なる仕組みを制御することを強く示唆している。そこで、この仕組みを明らかにするために、解糖系高活性PGCにおける発現変動遺伝子をRNA-Seqによる網羅的遺伝子発現解析により特定することを試みた。その結果、解糖系高活性PGCにおいて発現変動する遺伝子の中に、生殖幹細胞の分化を阻害する可能性があるnon-coding RNAを見出した。この結果に基づき、現在、解糖系の下流でこのnon-coding RNAが発現することでPGCの未分化性維持が行われているか検証を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の様に本研究の目的は、解糖系依存的に生じるPGCの分化過程における分化阻害の仕組みの解明を通じて、PGCの未分化性維持の仕組みの一端を明らかにすることにある。令和4年度までの事前研究により、遺伝学的に解糖系を活性化したPGCにおいては、幼虫期までに生じる分化PGC(Bamタンパク質陽性)が観察されないことを見出していた。そこで令和5年度においては、まず解糖系が活性化したPGCにおいて見られる分化阻害要因について、組織学的な解析を行った。 解糖系を活性化したPGCにおいて分化が阻害される要因として、まずそのようなPGCが組織内から排除される可能性(細胞死の誘導および分裂の停止)について検証した。該当する現象の対象となるマーカーを用いた観察を行った結果、この可能性は低いことが明らかとなった。そこで解糖系が従前知られる未分化性維持の仕組み(BMPシグナルによる未分化性維持)を制御する可能性を検証した。その結果、解糖系がBMPシグナルを介してPGCの未分化性維持を司る可能性は低いことが示唆された。以上の結果は、解糖系は従前知られる仕組みとは異なる機構によりPGCの未分化性維持を司っていることを強く示唆している。そこでこの方法を明らかにする第一歩として、解糖系高活性PGCにおいて発現変動する遺伝子の網羅的特定を試みた。このために解糖系が低下する後期胚より、コントロールおよび解糖系高活性PGCをセルソーターにより分取し、SMART法によるRNA-Seqを行い変動遺伝子の特定を行った。その結果、発現が上昇する遺伝子群の中に、生殖幹細胞の分化を阻害する可能性があるnon-coding RNAがあることを見出した。このことは、解糖系の下流でこのnon-coding RNAが機能することにより、PGCの未分化性が維持される可能性を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように令和5年度までの研究により、解糖系が既知の仕組みとは独立にPGCの未分化性を維持すること、さらに解糖系による制御の候補遺伝子として、PGCと同様に未分化であることが知られる生殖幹細胞の分化を阻害するnon-coding RNAがあることを見出している。そこで令和6年度以降においては、実際にこのnon-coding RNAがPGCの分化過程において機能するのか、さらに解糖系依存的なPGCの未分化性維持に関与するのかを遺伝学的・組織学的研究により解明する。また解糖系が当該遺伝子を制御する仕組みの解明を行っていく。現在の仮説において、解糖系はアセチルCoA産生を介してヒストンアセチル化修飾制御を行い、PGCの未分化性維持に関与する遺伝子制御を司ると考えている。そこで、このようなエピジェネティックな制御を解析する実験系(ATAC-Seq法やCut&Tag法)をPGCに対して行うことも考えている。現在までにセルソーターにより分取したPGCを対象に上述の方法を用いた予備的解析を実施しており、特にATAC-Seqに関してはNGSシーケンスまでを完了し良好な結果を得ているので、この様な方法を実際に解糖系高活性PGCを対象に行い、上述の発現変動遺伝子群との関係を明らかにしていくことで、解糖系によるPGCの未分化性維持の仕組みの解明に迫っていきたい。また同様の解析経験をCut&Tag法にも用いることで、本機構の詳細に迫りたいと考えている。
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