Project/Area Number |
23K05781
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44020:Developmental biology-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森本 裕子 京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (90540097)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 精子幹細胞 / 銅代謝 |
Outline of Research at the Start |
最近我々は酸素濃度がNOX1の活性に影響を与える事を見出し、酸素制御に関わる金属と精子幹細胞活性の検証実験過程で銅が選択的に精子幹細胞に蓄積している事を明らかにした。銅欠乏は精子形成を阻害し過剰量も悪影響を与えるが、幹細胞の自己複製との関わりは知られておらず、幹細胞に特異的に金属が集積している例はない。本研究では銅が精子幹細胞に及ぼす役割を明らかにする事を目的とする。銅はROS代謝に関わりが深い分子である事から、銅がROSに及ぼす影響に特に着目して精子幹細胞に及ぼす影響を調べる。さらに銅の作用する直接の標的遺伝子を同定し、幹細胞と分化細胞に与える銅代謝の違いを明らかにし、幹細胞の特性に迫る。
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Outline of Annual Research Achievements |
以前、我々は酸素レベルが精子幹細胞におけるNOX1の活性に影響する事を見出した (Genes Dev 2021;35:250)。通常の酸素レベルではNOX1を欠損しても培養精子幹細胞であるgermline stem (GS)細胞の増殖に影響がないが、低酸素ではNOX1欠損GS細胞の増殖が抑えられる事から、NOX1の活性が発揮される為には低酸素である事、酸素レベルとROSには相関関係がある事が分かった。低酸素応答にはHIF1分子が必須である為、この論文を発表後にHIF1遺伝子の制御に関わる金属に注目して研究を行ってきた。これまでにコバルトを等の金属はHIF1を活性化するのに必要な事が知られている為、本年度は幹細胞の活性と関わりがある金属について調べた。 精子形成においてはセレニウムや亜鉛などいくつかの金属が必要である。ROS産生に関わるものとしてはNOX1は鉄と結合し、銅はミトコンドリアに多い為、我々は幹細胞に鉄が濃縮されていると当初予想した。そこでGS細胞を用いて鉄および銅の量と幹細胞活性の相関関係についてセル・ソーターを用いて解析を行った。細胞内の鉄・銅の量が多い細胞と少ない細胞を回収し、不妊マウスの精細管内へと移植したところ、予想とは逆に細胞内の銅の量が多い細胞に強く精子幹細胞の活性が認められた(未発表)。一方、同じ解析を鉄や亜鉛についても行ったが、鉄・亜鉛の分布と幹細胞活性には相関関係が認められなかった。これらの結果は銅の代謝制御が幹細胞においてより重要な役割を果たすことが示唆された。 また、様々な金属(銅、鉄、マンガン、ニッケル、セレニウム、コバルト、亜鉛)を培地に添加して幹細胞の増殖への影響を検討した。その結果、銅、セレニウム、ニッケルの候補が得られた。これらの事から、今後は銅と同様にセレニウム、ニッケルについても幹細胞活性に与える影響を検討して行く。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、銅の代謝制御が幹細胞においてより重要な役割を果たすことが分かった。しかし銅応答で制御される遺伝子の特定には至っていない。本年度はさらに様々な金属(銅、鉄、マンガン、ニッケル、セレニウム、コバルト、亜鉛)を用いて幹細胞の増殖への影響を調べた。その結果、銅以外でもセレン、ニッケル等が幹細胞の増殖に影響を及ぼす可能性がある事が分かった。 今後はこれらの候補金属についても、銅と同様に幹細胞活性についての検討を行って実験を進めて行く。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)銅応答で制御される標的遺伝子の同定 : 銅の欠乏はROS以外の遺伝子にも影響を及ぼしている可能性がある。銅が細胞に与える影響に関与する遺伝子を特定するため、0-20uMの銅が存在する環境で培養されたGS細胞からmRNAを回収し、RNAシークエンス解析による網羅的な遺伝子発現解析を行う。同定した候補遺伝子についてはReal-time PCRにより確認を行う。 (2) 精子幹細胞の自己複製に対する銅の影響の解析 : 銅の量と幹細胞活性が相関する場合、銅がどのようなメカニズムで自己複製に影響を与えたのかを明らかにする必要がある。GS細胞の自己複製を制御する転写遺伝子には自己複製に関わるサイトカインにより誘導される転写因子と非依存性のものがあるので、いずれの転写因子が銅の影響を受けるのか、またこの遺伝子群が銅の動態や感知にも影響を及ぼすのかを明らかにする。この実験では野生型GS細胞に加え、Nox1 , Top1mt欠損細胞を用い、銅の過剰と欠乏条件において既知の精子幹細胞の自己複製に関わる転写因子の変動に注目して解析を行う。更に見つかった候補遺伝子の過剰発現及び機能抑制を行い、GS細胞の増殖に及ぼす影響を解析する。 (3)銅がROSに与える影響の解明 : 以前に作成した野生型、Nox1欠損、Top1mt欠損GS細胞へSod1変異を導入した二重変異体GS細胞の増殖およびROSレベルを解析する。これによりSOD1がNOX1もしくはミトコンドリア由来のROS産生と関連するのかを明らかにする。申請者はSOD1が主にミトコンドリアに存在するためにNOX1由来のROSには影響しないのではないかと予想している。 (4)その他の金属の検討 : セレン、ニッケルについても、欠損培地で培養された細胞を不妊マウスの精巣内に移植することで精子幹細胞活性の機能的解析を行う。
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