Project/Area Number |
23K05830
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 44040:Morphology and anatomical structure-related
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
徳元 俊伸 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (30273163)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | ステロイド膜受容体 / 卵成熟 / 排卵 / ゲノム編集 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、これまでに研究代表者らが主に魚類を材料に進めてきた卵成熟・排卵の誘導機構に関する研究を発展させる。特にステロイドホルモンの新規受容体であるステロイド膜受容体群について、グルココルチコイド膜受容体(mGCR)の新規同定を目指す他、これまでに同定されている膜受容体についてそれらの機能をノックアウトゼブラフィッシュ系統群を作出することで明確にする。さらに新規膜受容体リガンドのアッセイ法を開発し、天然ホルモン活性物質の同定に応用する。 一方でゼブラフィッシュ生体アッセイ法を使って選択した排卵誘導遺伝子候補群についても遺伝子の同定を行い、排卵誘導機構の解明に貢献する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第一の目的は細胞膜表面のステロイド膜受容体mPRを介したノンゲノミックなシグナル伝達経路の生理学的意味を示すことである。さらに、これまでのmPRの研究実績を生かして未同定となっているコルチコイドの膜受容体(mGCR)の新規発見も目指す。一方で研究代表者らはサンゴ礁海水中にmPR反応性の天然ホルモン活性物質が存在することを発見し、海藻が分泌している成分を特定している。本研究では人工合成に成功(特許技術)しているmPR分子を用いたmPR反応性物質の新規アッセイ法により、さらなる天然ホルモン活性物質の発見を目指す。一方、研究代表者らが開発した新規卵成熟・排卵誘導法を用いて選択した排卵誘導遺伝子群を同定する。この手法は卵成熟誘導反応経路と排卵誘導経路を明確に区別できる初めての方法であり、世界的にも非常に特色のある研究になると思われる。排卵誘導機構が解明されれば排卵障害による不妊の問題への対処法のヒントを与えることも期待される。これまでにゼブラフィッシュmPRの7遺伝子についての遺伝子のノックアウトゼブラフィッシュ(KO)系統及び排卵誘導遺伝子候補の8遺伝子のKO系統の確立に成功した。グラフェンQドットナノ粒子とmPR分子を結合させた分子を用いたハイスループットなmPR反応性分子のアッセイ法も確立できた。この方法により海藻由来のmPR反応性天然ホルモン活性物質の精製に成功した。さらにこの天然化合物の活性成分の構造決定に成功した(特許出願、論文準備中)。排卵誘導遺伝子候補については興味深い異常を示すprss59.1遺伝子ノックアウト系統が新たに確立できた。表現型解析の結果、Prss59.1タンパク質は突起構造に存在し、卵膜の形成に関わっていることが明らかになった(論文発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新規ステロイド膜受容体mPRの5種類、計7個のmPR 遺伝子のノックアウトゼブラフィッシュ(KO)系統をCRISPR/Cas9システムにより樹立できた。一部の変異系統で発生異常を示すものが得られた。mPRγ(paqr5b)遺伝子KO系統では頭部の形態異常が観察された。細胞レベルでの観察の結果、臭覚組織中の神経細胞が欠失していることが分かり、この遺伝子が臭神経細胞の分化に必須な役割をしていることを発見した(論文投稿中)。 mPR反応性物質の新規アッセイ法についてはヒトのmPRαとグラフェンQドットナノ粒子にmPRを結合させたナノ粒子(mPRα-GQD)を用いたアッセイ法の開発に続き、キンギョのmPRα分子についても同様の方法の確立に成功した(論文発表)。さらにmPRαと核受容体Pgrとの反応性の比較のため、ゼブラフィッシュのnPRを用いたPgr-GQDアッセイ法の確立にも成功した(論文発表)。海藻ウミウチワの分泌する天然ホルモン活性物質について、NMR解析の結果、2-ヒドロキシペンタン酸(2-HPA)を主成分とすることが明らかとなった。卵細胞を用いたアッセイやゼブラフィッシュを用いたin vivoでの卵成熟、排卵実験においても卵成熟阻害活性を有することが示された(論文投稿中)。 排卵誘導遺伝子候補については興味深い異常を示すprss59.1遺伝子KO系統について、この遺伝子が卵膜形成に必須であることを示す論文が発表できた。この他、sik1遺伝子のKO系統においても産卵数や発生率の減少などの異常が見られており、今後の表現型解析においてその機構解明が期待される。以上のように研究は予定以上の進展をみせている。
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Strategy for Future Research Activity |
系統樹立したmPR KO系統の内、異常を示した系統については異常の原因解明のため、今後、詳細な表現型解析を進める。特に臭神経細胞の分化に必須な役割をしていることを発見したmPRγ(paqr5b)KO系統については、個体成長後も再生する神経細胞として特異な性質を示す神経細胞の分化の鍵遺伝子の発見として、重要な発見となることから論文には多くのコメントが寄せられることが予想される。粘り強く対応し、発表を実現したい。一方で最初に発見され、生殖機能への関与が示唆されているmPRαとmPRβについては引き続き3重変異体の作出を目指す。 新たな方法として確立できた受容体-GQD複合体を用いた新規アッセイ法については、この手法を他の膜受容体、特にエストロゲンの膜受容体mERについても応用を目指すとともに新規医薬品のスクリーニング法として製薬企業などに広報する。海藻由来の天然ホルモン活性物質をヒントに発見した2-HPAの卵成熟・排卵阻害効果については医療応用に向け、哺乳類における活性の検証を進める。多くの新しい機能の発見が期待される排卵関連遺伝子KO系統については残りの5遺伝子についても表現型を注意深く観察し、機能解明を継続して進めていく。 極めて新規性の高いmGCRの新規同定に向けた試みも継続して取り組む。つい最近発表されたmPRの立体構造とプロゲステロンの結合サイトの予測から、ステロイド膜受容体の保存配列を推定し、これらの配列からmGCRの候補を推定した。これらの候補について酵母を用いたタンパク質合成を進める。合成後、コルチコイド結合活性を持つ新規受容体の同定を進める。
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